91年の光景・３

時代考証付き第3弾です。
今回は世良と垣谷とサンタフェで。
サンタフェが何かは作中で説明させて頂きますが、世良ちゃんと垣谷先生のキャラ崩壊かもしれない。
先に謝っておこう、ゴメンなさい。
本当の世良ちゃんはもっといい男……だよ、多分。きっと。


サイトを更新しております。「遠方より来たるあり」を再録。
21000は報告ありません。21111も多分無理っぽい。
午前中にキリ番が回る場合はダメかな？

朝のロッカールームで、世良は先輩の垣谷と行き合った。
人の顔を見た途端、垣谷はにやっと笑った。
朝の爽やかさから程遠い、性悪な笑みに世良は眉間に皺を寄せる。
世良の渋面を物ともせず垣谷は世良に近寄ってきて、あまつさえ世良の肩を抱き込んだ。

「せ、んぱい？　お早うございます？」
「…………買っちゃった、『サンタ・フェ』」

世良のしどろもどろな挨拶を流して、垣谷はこっそりと囁いた。
垣谷のセリフに世良は眉間の皺をますます深くして考え込む。

「『サンタ・フェ』って…………っ！　宮沢りえの写真集？！」
「声デカいよっ！」

商品名を思い出して世良は声を上げた。
垣谷は素早く世良の口を塞ぐ。
二人して慌てて周囲を見回すと、幾つかの怪訝そうな視線とかち合ったが、それ以上は別段何ということもなかった。
周りの状況を確認して、世良はコソコソと話し出す。

「マジですか？！　品切れ続出とかってニュースになってませんでした？」
「それがあるトコにはあるモンなんだよ」

開けたロッカーの戸で顔を隠しながら、二人は声を潜めて話を続けた。
「Santa　Fe」は、最近出版された宮沢りえの写真集だ。しかし、ただの写真集なら周囲を憚る必要はない。
「Santa　Fe」はヌード写真集なのである。
知名度のある人気アイドルのヌード写真集に世間は騒然となり、品切れも相次いでいるという状態だった。
そしてここに、例のブツを手に入れた強者が一人いるというわけだ。
世良はネームの角度を直しながら溜息を吐いた。

「凄い盛り上がりですよねぇ。結構な値段するんでしょ？」
「おおよ、びっくり仰天だわ」
「そうまでして見たいかって気はしますけどね」

ウロ覚えの記憶だが、一冊四千円だか五千円だかする品だった筈だ。
世の中の狂態についていけない世良は、一人年寄りじみたことを呟いてみる。
そんな世良に、垣谷は殊更に冷淡な表情を作った。

「そんじゃ世良、見ないの？　貸してやろうと思ったんだけどな」
「いや、見ます」

貸して下さい、と世良は即断即決で言った。
それはそれ、これはこれ、である。ましてタダなら大歓迎。
世良の返答に、垣谷は「やっぱ男だな」と同病相憐れんで笑った。