6回か7回くらいになりそうです。
本格的に5回以上だと確信したら、またカテゴリを立てます。
霧島はカメを飼ったことはありません。例によって大ウソ三昧です。
一応、図書館で小学生向けのカメの飼い方の本を借りましたが。
つーか……カメの視点とか本能とか、解るかいっ?!
本格的に5回以上だと確信したら、またカテゴリを立てます。
霧島はカメを飼ったことはありません。例によって大ウソ三昧です。
一応、図書館で小学生向けのカメの飼い方の本を借りましたが。
つーか……カメの視点とか本能とか、解るかいっ?!
(ちょ、待て! 元に戻せよっ!)
やはりカメに声は出せないらしい。
パクパクと口を動かして速水は訴えたが、音にならなかった。
だが、そこは魔女なのだろう、女性は笑って速水に答えた。
「元に戻すための魔法は有りませんよ」
(何だとおっ?!)
「だって呪いを解く方法なんて、昔から決まっているもの。頑張って、自分で呪いを解きなさいな」
(なっ?! 待てってっ!)
鮮やかに一つ笑うと、女性は踵を返して去って行こうとした。
速水は慌ててその背中を追う。
当然ながらカメの歩みだ。身体が重くてちっとも前に進まない。
(どうすりゃいいんだよっ?!)
精一杯怒鳴った声は、やはりただの空気の流れで終わってしまう。
女性は一度だけ振り返った。
「運命の人との真実の愛のキスよ、決まっているでしょう」
そう告げた声は楽しそうで、少女のように華やかだった。
そしてもう振り返ることはなかった。
一人……いや一匹、アスファルトの上に取り残された速水は茫然とするばかりだ。暫くその場に突っ立って、動くことも出来なかった。
(…………冗談だろう?)
そう思いたいところだが、ちっとも自由に動かない身体は冗談では済まなかった。
とにかく前にも横にも進まない。見える範囲が狭い。
視界が低いせいだろう、目に映るものは道路と雑草の頭ばかりだ。
きき――っ、と音がして、反射的に速水は首と手足を引っ込めた。
引っ込んでしまったことが驚きだ。
ブレーキが軋んだ自転車は、速水のちょっと横を通り過ぎていった。
周囲の気配を探って、大丈夫だと確信してから、速水はのそのそと手足を出した。
意識はともかく、動物の本能で身体が動くようだった。
(まずは移動しないと危ないな……)
考えて、速水は道から外れる方へと歩き出した。
実に進まない。
長身の速水ならものの数秒で突っ切れる道が、果てしなく遠かった。
目に映るものが限られているので、尚更進んでいる気がしない。
やっとのことで歩道まで辿り着いた時には、太陽の角度が変わっていた。
高くなった太陽がアスファルトを焼いている。
すると今度はどんどん身体が熱くなる。
(カメって変温動物だっけよ……?)
大学に入って以来すっかり縁遠くなった動物学の知識を、速水は脳裏から引っ張り出してきた。
まあ知識で覚えておく間でもなく、カメが恒温動物だとは考え難いが。
問題は、カメが変温動物か恒温動物かではない。
このままでは速水は路上で干乾びかねないということだ。
(あンの、くそババあ…………っ)
心の中で歯軋りしながら……カメに歯は無いので、実際には歯軋り出来ない……速水はえっちらおっちら日蔭へと向かった。
長い長い時間をかけ、ようやっと木蔭へ辿り着くことが出来た。
直土の上なので、腹の下にも熱が溜まらなくて助かっている。
しかし、今後どうすればいいのやら、だ。
(運命の人と、真実の愛のキスだぁ?)
年齢不詳の魔女の癖に、どうしてそこだけ乙女思考なんだ。
八つ当たりめいたことを思ってしまうのは仕方のないところだった。
(運命の人って誰だよ?)
先ほど別れたカノジョではなさそうなのは確かだが、今まで速水が付き合った女の子たちの中に、運命を感じるほどの相手がいたかといえば、それも否である。
それなら、これからその「運命の人」を探さなくてはならないワケか?
(…………マジで?)
将来のビジョンがたちまち真っ暗になった。
そして、ビジョンだけではなく、実際視界が暗くなる。
首を動かすと、三人の女性がしゃがみ込んで速水を見下ろしていた。
スカートの中が見えたのは不可抗力だ。
「カメだぁ」
「何でこんなトコにいるの?」
「どっかに池ってあったっけ?」
盛んに囃し立てながら、女性たちは速水の甲羅や頭を突く。
視界を塞ぐように手を伸ばされる度、カメの本能が速水の首を縮めた。
「あ、引っ込んだ」
「おもしろ――いっ」
速水の反応に気をよくして、女性陣は盛んに速水の頭を突こうとする。
(いい加減にしろよ……カタツムリじゃねえぞっ!)
遊ばれているのに腹が立つが、幾ら抗議しても声にならなければ意味が無い。
散々好き勝手速水を突っついて、満足した女性陣はきゃらきゃら笑いながら立ち去ってしまった。
引っ込めた手足をのそのそと出して、速水は溜息を吐いた。
まったくもって前途多難である。
夕刻になると、今度は身体が冷えてきた。そうすると動きにくくなってくる。
元々のっそりしか動けなかったが、更に動作が緩慢になってきた。
変温動物に日々の気温の変化はキツイものがある。
(てか、生存の危機?)
自然は実に厳しい。
のそのそと動き出した速水の上に、何度目かの影が落ちた。
散々からかわれたので、最初から甲羅に潜ってやり過ごす術を速水は覚えた。
頭を引っ込めて、気配を窺う。
「あ、れ?」
聞き覚えのある声。
速水は急いで手足を甲羅から出して、精一杯首を伸ばした。
「なあ、島津、カメがいる」
「カメだあ? 水辺でもねえのに?」
間違い無い。田口の声だ。
田口の一歩後ろの島津が立っている。
屈みこんで速水を見ていた田口と、速水の目が合った。
やはりカメに声は出せないらしい。
パクパクと口を動かして速水は訴えたが、音にならなかった。
だが、そこは魔女なのだろう、女性は笑って速水に答えた。
「元に戻すための魔法は有りませんよ」
(何だとおっ?!)
「だって呪いを解く方法なんて、昔から決まっているもの。頑張って、自分で呪いを解きなさいな」
(なっ?! 待てってっ!)
鮮やかに一つ笑うと、女性は踵を返して去って行こうとした。
速水は慌ててその背中を追う。
当然ながらカメの歩みだ。身体が重くてちっとも前に進まない。
(どうすりゃいいんだよっ?!)
精一杯怒鳴った声は、やはりただの空気の流れで終わってしまう。
女性は一度だけ振り返った。
「運命の人との真実の愛のキスよ、決まっているでしょう」
そう告げた声は楽しそうで、少女のように華やかだった。
そしてもう振り返ることはなかった。
一人……いや一匹、アスファルトの上に取り残された速水は茫然とするばかりだ。暫くその場に突っ立って、動くことも出来なかった。
(…………冗談だろう?)
そう思いたいところだが、ちっとも自由に動かない身体は冗談では済まなかった。
とにかく前にも横にも進まない。見える範囲が狭い。
視界が低いせいだろう、目に映るものは道路と雑草の頭ばかりだ。
きき――っ、と音がして、反射的に速水は首と手足を引っ込めた。
引っ込んでしまったことが驚きだ。
ブレーキが軋んだ自転車は、速水のちょっと横を通り過ぎていった。
周囲の気配を探って、大丈夫だと確信してから、速水はのそのそと手足を出した。
意識はともかく、動物の本能で身体が動くようだった。
(まずは移動しないと危ないな……)
考えて、速水は道から外れる方へと歩き出した。
実に進まない。
長身の速水ならものの数秒で突っ切れる道が、果てしなく遠かった。
目に映るものが限られているので、尚更進んでいる気がしない。
やっとのことで歩道まで辿り着いた時には、太陽の角度が変わっていた。
高くなった太陽がアスファルトを焼いている。
すると今度はどんどん身体が熱くなる。
(カメって変温動物だっけよ……?)
大学に入って以来すっかり縁遠くなった動物学の知識を、速水は脳裏から引っ張り出してきた。
まあ知識で覚えておく間でもなく、カメが恒温動物だとは考え難いが。
問題は、カメが変温動物か恒温動物かではない。
このままでは速水は路上で干乾びかねないということだ。
(あンの、くそババあ…………っ)
心の中で歯軋りしながら……カメに歯は無いので、実際には歯軋り出来ない……速水はえっちらおっちら日蔭へと向かった。
長い長い時間をかけ、ようやっと木蔭へ辿り着くことが出来た。
直土の上なので、腹の下にも熱が溜まらなくて助かっている。
しかし、今後どうすればいいのやら、だ。
(運命の人と、真実の愛のキスだぁ?)
年齢不詳の魔女の癖に、どうしてそこだけ乙女思考なんだ。
八つ当たりめいたことを思ってしまうのは仕方のないところだった。
(運命の人って誰だよ?)
先ほど別れたカノジョではなさそうなのは確かだが、今まで速水が付き合った女の子たちの中に、運命を感じるほどの相手がいたかといえば、それも否である。
それなら、これからその「運命の人」を探さなくてはならないワケか?
(…………マジで?)
将来のビジョンがたちまち真っ暗になった。
そして、ビジョンだけではなく、実際視界が暗くなる。
首を動かすと、三人の女性がしゃがみ込んで速水を見下ろしていた。
スカートの中が見えたのは不可抗力だ。
「カメだぁ」
「何でこんなトコにいるの?」
「どっかに池ってあったっけ?」
盛んに囃し立てながら、女性たちは速水の甲羅や頭を突く。
視界を塞ぐように手を伸ばされる度、カメの本能が速水の首を縮めた。
「あ、引っ込んだ」
「おもしろ――いっ」
速水の反応に気をよくして、女性陣は盛んに速水の頭を突こうとする。
(いい加減にしろよ……カタツムリじゃねえぞっ!)
遊ばれているのに腹が立つが、幾ら抗議しても声にならなければ意味が無い。
散々好き勝手速水を突っついて、満足した女性陣はきゃらきゃら笑いながら立ち去ってしまった。
引っ込めた手足をのそのそと出して、速水は溜息を吐いた。
まったくもって前途多難である。
夕刻になると、今度は身体が冷えてきた。そうすると動きにくくなってくる。
元々のっそりしか動けなかったが、更に動作が緩慢になってきた。
変温動物に日々の気温の変化はキツイものがある。
(てか、生存の危機?)
自然は実に厳しい。
のそのそと動き出した速水の上に、何度目かの影が落ちた。
散々からかわれたので、最初から甲羅に潜ってやり過ごす術を速水は覚えた。
頭を引っ込めて、気配を窺う。
「あ、れ?」
聞き覚えのある声。
速水は急いで手足を甲羅から出して、精一杯首を伸ばした。
「なあ、島津、カメがいる」
「カメだあ? 水辺でもねえのに?」
間違い無い。田口の声だ。
田口の一歩後ろの島津が立っている。
屈みこんで速水を見ていた田口と、速水の目が合った。
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COMMENT
♪もしもし亀よ
まさかの若将軍の亀変化!いつも霧島さんの想像力の豊かさには驚かされます。そして亀将軍をすんなり受け入れさせる文章力には脱帽です(^o^)
これからの展開が楽しみ~。(しかしNEKOさんは無敵ですね。)
これからの展開が楽しみ~。(しかしNEKOさんは無敵ですね。)
Re:♪もしもし亀よ
いらっしゃいませ。
将軍がカメって面白いかもしれない、ってだけでスタートしました。想像力っていうより妄想の域ですな。しかもちっとも色気の無い方向の……。
世の同人界に獣化小説は多々あれど、フツーは愛らしい犬猫ですよね。カメは霧島も読んだことないデス。川原泉さんのマンガが一つあったけど……。
今回のメルヘン発言で、大体エンディングは想像出来てしまうと思いますが、お付き合い下さると有難いです。
あ、魔女はネコじゃなくて藤さんのつもりだったのですがっ。「年齢不詳」を連呼するあたりが、地雷原。正体不明のつもりだから、いっそオリジナルの全然別人でもよいのですけどね。
将軍がカメって面白いかもしれない、ってだけでスタートしました。想像力っていうより妄想の域ですな。しかもちっとも色気の無い方向の……。
世の同人界に獣化小説は多々あれど、フツーは愛らしい犬猫ですよね。カメは霧島も読んだことないデス。川原泉さんのマンガが一つあったけど……。
今回のメルヘン発言で、大体エンディングは想像出来てしまうと思いますが、お付き合い下さると有難いです。
あ、魔女はネコじゃなくて藤さんのつもりだったのですがっ。「年齢不詳」を連呼するあたりが、地雷原。正体不明のつもりだから、いっそオリジナルの全然別人でもよいのですけどね。