スペシャルスロウライフ・５

カテゴリ追加しました。
現在、最短予測で9回。でも多分増える。
オリキャラ出ます。ついで言うと、ゲリラも。
これ、ご来場の皆様としてはどっちが重要情報なんだろう？
（追記：ゲリラ、出ただけで終わっちゃった）


オリキャラに名前を付ける時って思いつきで付けるばかりですが、強いて言うなら霧島はカ行、サ行、タ行あたりを好む傾向があるので、そこを避ける方向で付けます。
今日はどうするか？　結果は見てのお楽しみ。


チャットで遊んで下さったなゆた様、モトコ様、かき様、どうもありがとうございました。楽しかったです。
失礼なオチ方ですみません……。

結果として、飼い主候補はハズレだった。
「運命の人」では有り得ない。

「よお。村上だ」
「あ、どうも……田口です」

田口が挨拶しているのは、医学部の男だった。
この時点で、彼は論外である。
幾つかの授業が重なっていて、教室でスレ違ったことも何度かあるので、多分同期だ。医学部定員は百二十人だが、たかが百二十、されど百二十。名前を知らない同期などまだまだいるものである。

「これなんだけど」
「うん……違う、ウチのじゃない」
「そっか」

田口が持ち上げたバケツの中を見て、村上はそう言った。
その答えに、田口は少しばかり気の毒そうな声音でぽつりと呟いた。

（…………れ？）

速水の脳裏に何か引っかかる。
拍子抜け、したのかもしれなかった。
普通、自分のペットかどうか確認する時はもっとしげしげ観察するものではないだろうか。まして、ハッキリした模様があるわけではないカメである。
少なくとも速水なら、一瞥しただけで個体の区別など付かないだろう。
ああでも、明らかにサイズが違ったのかもしれないな、と速水は一応の理由を見つけて納得しようとした。

「速水」

村上の口から速水の名前が飛び出してきたのは、速水が脳内の違和感を説明づけようとしていた時だ。
首を伸ばして速水は村上の表情を窺おうとしたが、バケツの中からは村上の顎が見えるばかりだった。

「何処にいるか知らないか？」
「速水？　……そういや最近見てないな」

村上に問われた田口は少し考えた後にそう答えた。

（ここにいるんだよ。てか行灯、お前気付いてなかったのかっ）

田口の薄情なセリフに抗議すべくバケツの水をぱちゃんと叩いたが、当然ながら田口は気付かない。

「速水がどうかしたのか？」
「…………訊きたいことがあんだよ。お前なら知ってるかと思ったんだけど」
「ふぅん？」

田口は怪訝そうな声ながら、それ以上は突っ込んだことを尋ねなかった。
相手が言いたくないことは尋ねない、田口らしい。

（何だ？）

速水もバケツの中で首を傾げる。
ほぼ初対面に近い村上が、速水に何を訊こうと言うのか。
心当たりが全くない。

（行灯、聞き出せよ）

念じてみても田口が口を開くことはなかった。
決まりの悪い沈黙が漂ってしまう。
そしてまた村上から口を開いた。

「田口から見て、速水ってどう？」
「どう、って？」
「ダチだろ？　あんなのと付き合ってて、いろいろ迷惑してんじゃないかと思ってさ」

（何だ、コイツ…………）

村上の言葉に、速水はバケツの底で顔を顰めた。
カメだから、大して表情は動かないだろうが。
やっかまれる事が多いのは自覚していた。気にも留めずにいたが、こうも直截に言うヤツを目の当たりにしたのは初めてだ。
当然ながら、気分のいいものではない。

「いいヤツだよ。確かに、ちょっと困ったところもあるけどさ」

田口の表情は見えないが、笑みを含んだ田口の声に揺らぎは無かった。
先程、薄情だと思ったことを、速水は内心撤回する。
ここからどう話が収束するかを見守っていると、

「あれぇ？　田口先輩、どしたんですか、こんな早い時間に」

覚えのある声がノンキなまでに響き渡った。