霧島、お気に入りの曲を各種二次創作に使い回す傾向があります。
イル/カの「な/ごり/雪」も霧島的お気に入りの一つです。
ホントは春まで待とうと思ったけど、CD聴いたら書きたくなったので書く。物事はノリと勢いだ。
イル/カの「な/ごり/雪」も霧島的お気に入りの一つです。
ホントは春まで待とうと思ったけど、CD聴いたら書きたくなったので書く。物事はノリと勢いだ。
「……行灯?」
桜並木にぼーっと突っ立っている姿を見つけ、速水は目を眇めた。
どこか浮世離れした様子は、過日、バチスタ・スキャンダルのテレビ画面で記者会見を仕切った姿とは大違いだった。
田口の実像を知る者としては、画面の中の姿の方が嘘っぱちもいいところだが。
「おい、行灯。立ったまま寝てるのか」
「あ、速水…………」
速水が近寄って声をかけると、やっと田口は速水に気付いた。
相変わらずぼんやりした目つきで速水を見る。
半分意識を飛ばしているような風情に、速水は眉を顰めた。
「どうした?」
「どうって…………」
「こんなところで、何をやっている?」
鈍いのは相変わらずだが、今日はそれに輪をかけて反応が鈍い。
速水は質問をより具体化させた。
田口は小さく笑った。
「…………桐生先生を見送ったところだったんだ」
「そう、か」
瞬間、速水は言葉に詰まった。
バチスタ・スキャンダルの詳細については緘口令が敷かれている。速水もチーム内の麻酔医が殺人を犯した、その責めを負って桐生はチームを解散してアメリカへ戻ることになった、そのくらいのことしか知らない。
桐生医師についても大した面識はなかった。
だが事件の、それこそど真ん中にいた田口には、桐生に対しても思うところがあるのだろう。
田口の視線の先にあるものは、速水には一向に計り知れない。
「きっと…………桜を見る度に、思い出すだろうな」
遠い目をして、田口はぽつりと呟いた。
完全な独り言だ。
そんな田口の横顔は、速水が今までみたことのないものだった。
剥き出しになった柔らかさが表情の年齢を下げさせている。
諦め交じりの苦笑はただ優しかった。
こいつはこんな男だっただろうか、と速水は思う。
何もかも霞む春のような、そんな空気を纏っていただろうか。
「…………桜だらけだよ、速水」
苦笑を浮かべて田口は速水に手を伸ばした。
速水の前髪に落ちた花びらを摘まんで、ふっと指を離す。
花びらの行方を目で追う田口を、速水はただ身じろぎも出来ずに見つめていた。
大気に、花に、田口に……何もかもに、酔っていると思った。
「戻ろう」
「あ、ああ…………」
ぽくぽくと、気の抜けた歩調で歩く田口の後ろを、らしくもなくのんびり歩きながら、速水は田口の後頭部を見つめ続けた。
ぼさぼさの田口の髪にも桜の花びらが落ちている。
あれに触れたいと思ったが、ポケットに突っ込んだままの手は動かなかった。
PR
COMMENT
無題
この季節に読むと本当に美しい情景だなと改めて実感しました。なんだか、速水が田口への気持ちを無意識では分かっているのに、気づかないふりをしているような、ぼんやりとした心情なのかなと想像してみたり。長文失礼しました。
Re:無題
古い作品にコメント有難う御座いましたー。しかもお返事を見事に放置しておりました…すみません。今更遅いかな…。
>なんだか、速水が田口への気持ちを無意識では分かっているのに、気づかないふりをしているような、
これはホントに元歌の力ですね。元歌もこう、ビミョーな関係なんですよねぇ…別れがくる時になって初めて大切さに気付くような歌ですので、ネタにするとそんなカンジになります。永遠の、幼馴染萌えソングです。
そして、霧島のチョイスは何時も古い上にちっとも変化しないのが丸解り。
突然暑くなったりしますので、お体にはお気を付け下さいませ。
>なんだか、速水が田口への気持ちを無意識では分かっているのに、気づかないふりをしているような、
これはホントに元歌の力ですね。元歌もこう、ビミョーな関係なんですよねぇ…別れがくる時になって初めて大切さに気付くような歌ですので、ネタにするとそんなカンジになります。永遠の、幼馴染萌えソングです。
そして、霧島のチョイスは何時も古い上にちっとも変化しないのが丸解り。
突然暑くなったりしますので、お体にはお気を付け下さいませ。