さりげに緑本ネタバレ注意報発令中
夜勤明けでした。仮眠など取れずほとんど徹夜で、帰宅時の運転はハラハラものでした。実は以前に「ヒヤリ、ハッと」運転の経験があります。
で、今日はウトウト防止の為、窓を開けて運転しました。
ええ、そうです。電子猟犬さまに倣いました。
おかげで無事故でヒヤヒヤする場面もなく帰宅できました。
感謝をこめて、行灯先生と電子猟犬さま、ついでに火喰い鳥です。
夜勤明けでした。仮眠など取れずほとんど徹夜で、帰宅時の運転はハラハラものでした。実は以前に「ヒヤリ、ハッと」運転の経験があります。
で、今日はウトウト防止の為、窓を開けて運転しました。
ええ、そうです。電子猟犬さまに倣いました。
おかげで無事故でヒヤヒヤする場面もなく帰宅できました。
感謝をこめて、行灯先生と電子猟犬さま、ついでに火喰い鳥です。
二回目の加納警視正の強襲を、田口は溜息とともに出迎えた。
予想通りだ。
予想通りのことが、どうしてこんなに気を塞ぐのか。
世界は理不尽である。
「おい、タマ何処行った」
「玉村警部補なら、つい今しがたお帰りになりました」
田口や白鳥には目をくれずに家探しする加納の神経を逆撫でしないよう、なるべく穏やかな声を作って田口は告げた。
しかし、田口の努力は無駄に終わったようだ。
如月翔子が企業舎弟と判断した鋭い目で、加納はぎろっと田口を睨みつけた。
「さてはあんた、タマを逃がしたな?」
「そんなことは」
「決まってるじゃない」
口先だけでも否定しようとした田口だったが、白鳥に先を越される。
ソファにどっかり腰を据え、気取った……しかしちっとも上品には映らない……仕草でコーヒーを啜りながら、白鳥はしれっと言い放った。
「加納にイジメられるって解ってるのに、タマちゃんを引き留めておくわけないだろ。僕たちって優しいなぁ」
あんたは優しくないだろ、絶対。
田口は心の中で呟いた。
余計なことを言ったのは白鳥なのに、加納に睨まれるのはやっぱり田口だ。
まったく、白鳥に関わるとロクなことがない。
田口は長々と溜息を吐いた。
「取り敢えず、コーヒーでもいかがですか? 徹夜の上に長距離運転でお疲れでしょう」
タイミングよく藤原看護師がコーヒーを運んできてくれる。
田口が勧めると、加納も剣呑な目つきを引っ込めて、白鳥の隣にどっかり腰を下ろした。
「藤原さんのコーヒーは美味しいぞ、加納」
だから豆は俺の自腹だって。
この心の声は一体何度目になるのやら。
廊下とんびが訪れるくらいならまだしも、千客万来の近頃はコーヒー豆の消費も激しい。いっそ金を取ってやろうかと思わないでもない。
「へえ」
加納は口へ運ぶ前に手を止め、香りを楽しむような仕草をした。
白鳥と違ってこちらは絵になる景色だ。ベースが上等なせいだろう。
「美味いな」
「有り難うございます」
簡潔ながら最上級の褒め言葉に、田口も微笑で応じる。
しばらく穏やかな空気が流れていたが、ふと見ると、加納の身体がずるずるとソファから落ち始めていた。
「加納さん?」
「ねむ…………」
コーヒーカップを机に戻すのはかろうじて間に合った。
ソファの肘掛を抱えるようにして加納は眠りに落ちてしまう。
「流石の猟犬も、座ったら疲労がどっときちゃったんだねえ」
白鳥が苦笑とともに言った。
今度ばかりは、白鳥の声にも小馬鹿にした調子はない。
田口も苦笑を浮かべてしまう。
「カフェインも効きませんか」
「逆効果だったみたいだね。でも、僕も眠いな。視聴覚室借りるか」
「うわ…………」
勝手極まりない思いつきを口にして、白鳥もコーヒーカップをテーブルに戻した。
そのまま、慣れた足取りで不定愁訴外来を出ていってしまう。
最後には寝息を立てる加納と、田口、藤原看護師が残された。
「どうします?」
「しばらくそっとしておきましょう。加納さんには昨日から随分お世話になってますから」
「そうですか。それにしても、ハンサムさんは寝顔も絵になりますねえ」
「藤原さん、ミーハーですね」
冗談めかした藤原の言葉に田口もそっと笑った。
曇りガラスを透過した柔らかい光の温かさに、田口も小さく欠伸を零した。
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