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こちらは、愚痴外来シリーズの妄想文を展開するブログです。 行灯先生最愛、将軍独り勝ち傾向です。 どうぞお立ち寄り下さいませ。
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同期が宴会で歌うヤツが止まってるのですが、日付の都合上どーしても書かなきゃいけないヤツが出来たので書きます。
余裕があったら宴会ものも書いてしまいたいが……どうだろ。

後記:何か……予定と違うモノが出来上がった気がするぞ? 何だいこりゃ。




救急救命センター部長室にあるICUのベッドモニターに並んで、一つだけ通常のテレビ画面がある。
ニュース速報をキャッチするために備え付けられているものだが、今日のように平和な日の昼間には余り活用されない。
どろんどろんの三角関係ドラマを見るよりは、無茶苦茶な健康法を喧伝する情報番組を見ている方がまだマシで、速水は半ばボンヤリとテレビ画面を見ていた。
口に咥えたチュッパチャプスの棒が、視界の端で揺れている。

「今日、1月31日は…………」

続く解説と女性を対象にしたインタビューに、速水はほくそ笑んだ。



速水の奇行に、田口は戸惑っていた。
まずアレだ、7時過ぎにかかってきた電話。
「今から行くから」の声に、田口は思い切り焦った。
速水は大概連絡もせずに押しかけてくるので、焦る事実はどちらも同じではある。
だが、そもそも連絡を寄越すのが変だ。
次、速水が手土産を持っていたこと。しかもケーキと小振りな花束。
このチョイスが速水らしくない。速水の手土産なら、酒かつまみと決まっているのに。

「何、これ?」
「嬉しくないか? 好きだろ、甘いの」
「嫌いじゃないけど…………」

嫌いじゃない。寧ろ好きだ。
首を傾げつつも、暖房の効いた室内にケーキを放置できず、まずは冷蔵庫にしまいこんだ。
更に、だ。
二人で夕食を食べていた時のこと。

「うん、美味い。やっぱお前のメシが一番美味いわ」
「は、やみ…………?」
「何だよ?」
「…………いや、いい」

速水が平然としているので、「お前ヘンじゃないか?」とは言いそびれた田口である。
だが、何かおかしい。
普段の速水は食事の感想を滅多に口にしない。「ごっそーさん、美味かった」くらいがせいぜいだ。
まして今日は、速水の好みとは違う焼き魚定食。
「肉なかったのかよ」ぐらいは言ってもいいはずなのに。
その上、食後の後片付けまで買って出た。
ヘンだヘンだと思いながら、コーヒーを淹れてケーキを食べて……いくら速水が不可解だろうが、ケーキは美味かった……アルコール片手にダラダラしていた時だった。

「こーへい」
「え」

名前で呼ばれた。
目を見開いた田口の肩を寄せ、更に速水は囁く。

「愛してるよ、こーへい」

名前で呼ばれることは滅多になかった。
二人の時は大体「なあ」で済む。
他人がいる場合は苗字か、寧ろ有難くない大昔の渾名だ。

「こーへい」

田口の好きな、その低い声で。
耳朶を甘く噛みながら、速水は何度も田口の名を呼ぶ。
しっかりと抱かれた肩がどんどん熱くなってくる。
「愛してる」と「こーへい」のリフレインに、とうとう田口はパニックを起こした。

「速水っ! 一体何なんだっ?!」

強引に身体を離して、田口は声を荒げた。
自分の頬が熱いことは自覚しているが、精一杯表情を固めてみせる。
速水は瞬間きょとんとした顔をしたが、いつものようにタチの悪いニヤリとした笑顔を浮かべてみせた。

「何だ、気に入らなかったのか?」
「そういう問題じゃない。何で、こんなことをやり出したんだ?」

田口の言葉に、速水は肩を竦めてみせた。
意外と早く理由が聞けそうな気配に、田口は少し安堵する。

「今日は何月何日だ?」
「え? 1月……31日か」

曖昧な日付感覚では即答できず、田口はカレンダーを確認してから答えた。
田口の答えに速水は大きく頷く。

「そう、1月31日。世間では『愛妻の日』だそうだ」
「へ?」

1をI(アイ)と読んで、31でサイ。変換して愛妻。
田口が脳内で語呂を合わせていると、速水は更に自分の行動の理由を説明した。

「大方、花屋か菓子屋の陰謀だろうが、便乗するのも面白いと思ってな。昼のテレビで旦那にこんなことをしてほしいってインタビューをやってたから、片っ端から実行してみた」

帰るコールとか? たまには早く帰ってきて欲しいです。
たまには花とか欲しいかも。ケーキでもいいけど(笑)。
黙って食べてないで「美味しい」とか言って欲しい。
名前で呼ぶとか? 愛されてるカンジしません?

今日の速水の行動が全て当てはまる。
納得したはいいが、田口はがっくり肩を落としてしまった。
振り回される方の身にもなってくれ、というヤツだ。

「俺はお前の妻じゃないぞ……」
「ベッドの中じゃ女役だろ」

下劣な冗談を口にする速水の頭を軽く引っ叩き、田口は再度溜息を吐いた。
田口が脱力した隙を逃さず、速水は田口を抱き寄せる。

「愛してるよ、こーへい」
「いいよ、もう」

耳元で囁かれて、田口は首を横に振った。
途端に速水は不満顔になる。

「何で? 折角、常日頃の愛を示そうって日なのに」
「それは、日常的に一緒にいて、愛情表現がおざなりになってませんかって夫婦が考えることだろ? お前は違う」
「違うって?」
「お前の気持ちは、ちゃんと俺に届いてるってことだ」

至近距離で瞳を見上げて、田口は笑った。

「キスしろよ、速水。お前の気持ち全部、俺に解らせるようなヤツ。俺はそれだけでいい」

速水の気持ちなんて、一回のキスで十分伝わるのだ。
頬を撫でる指の優しさ、合わせた瞳に見せる希求。
密着した身体の熱さが男の欲を伝え、抱かれた腕の強さが独占欲を滲ませて、それらの全てが望まれていることを田口に教える。
そんなキスをくれればいい。
電話も手土産も、名前呼びもいらない。

「りょーかい」

にやりと笑って、速水は田口の唇に噛み付いた。
髪を掻き回し腰をきつく抱く腕に張り合うように、田口は速水の首に回した腕に力を込めた。
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愛妻の日
こんばんは、モトコです。
愛妻の日なんてものがあるなんて、知りませんでした!知ったら速攻で行動するジェネラルが凄く男前vしかも「こーへい」です!そして、そんなものよりキスを寄越せという行灯センセが、また素敵v
霧島さんの書かれる2人はカッコいいですv
モトコ 2009/02/01(Sun)00:12:02 編集
Re:愛妻の日
モトコさま、コメント有難う御座います。
初コメントゲットですよーっ。祝祭だ、祝祭。

霧島も30日に「愛妻の日」を知ったクチです。仕事中に。
んで、仕事中に妄想して31日に慌てて書き上げた、と。間に合ってよかった。
ウチの二人をカッコイイと言って下さって嬉しいです。意外に行灯先生が強気かもしれないな、ウチは。
またそちらにも顔出しますねー。お祭りも始まったようですし。
改めてコメント有難う御座いました!
S.Kirishima 2009/02/01 10:50
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