~ 彦根 ~
「悪い、帰る」
田口先輩は立ち上がってそう言った。
僕に笑いかけるその顔が痛かった。
先輩、自分で気付いてないでしょう?
「どうします? 三人打ちにしますか?」
一応、牌を積みながらお伺いを立ててみる。
だけど、一度壊れた雰囲気は元には戻らなかった。
僕もそれを解っている。
「……止めとくか」
島津先輩はちらっと速水先輩を見て、溜息混じりに言った。
積む意味もなくなった牌を、僕は手持無沙汰で弄る。
速水先輩から投げられる視線は棘だらけだ。
そんなに怒るなら、止めればいいのに。
何もかも。
「今度のカノジョってどんな人ですか、速水先輩?」
「……関係ねえだろ」
「ま、そうですけど。速水先輩のノロケって聞いたことないから、ちょっと興味あるかなー、なんて」
「五月蠅え」
「いいじゃないですか、田口先輩いないんだし」
僕の言葉に、速水先輩の眼が一段とキツくなった。
僕を殺したいのかもしれない、それくらいの憎悪を感じる。
僕は笑ってみせた。
田口先輩みたいに優しくなんて、笑えっこない。
あんなに柔らかく笑う人に、寂しい笑顔なんて似合わないのに。
「酷い人ですよね、速水先輩って」
僕は、速水先輩が彼女と長続きしない理由を知っている。
田口先輩の前で、彼女の話題を出そうとしない理由を知っている。
そんな速水先輩に振り回される田口先輩が痛ましかった。
「お先に失礼します、お休みなさい」
僕は立ち上がって、島津先輩に頭を下げた。
速水先輩には笑顔を一つくれてやる。
極悪人面をしていることだろう。田口先輩のようには笑えない。
速水先輩は相変わらず、僕をぶった斬りたそうな眼をしていた。
「すずめ」の外は冷たい風が吹いている。
襟の隙間をマフラーで埋めながら、見上げた空にはオリオン座が光っていた。
僕の視力でも、ベテルギウスの赤とリゲルの白を区別できる。
それに少し満足した。
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COMMENT
負けました
霧島さんこんばんはv連載は一気読み派だったのに、誘惑に負けて、つい・・・。
うわ~v私の好物な展開です!行灯センセ好きの
くせに、グルグルさせるのが好きな酷い人間
なので、こう・・・くわっ!と喰いつきましたv
彦根ちゃんは行灯センセの見方ですねv
ジェネラルを悶々とさせればいいと思います!
続きも楽しみにしていますv
うわ~v私の好物な展開です!行灯センセ好きの
くせに、グルグルさせるのが好きな酷い人間
なので、こう・・・くわっ!と喰いつきましたv
彦根ちゃんは行灯センセの見方ですねv
ジェネラルを悶々とさせればいいと思います!
続きも楽しみにしていますv
Re:負けました
コメント有難う御座います!
連載一気読み派なんですか? 終了まで待つの? それって辛くない?
霧島は待てない派ですねぇ……根気がないともゆーかもしれない。
彦根ちゃん、初書きかもしれませんね。かなりお気に入りキャラなんです。「緑本」のポテト摘まみ食い描写がツボったですねえ。
学生時代に何気にグッチーといちゃいちゃで、それみて将軍がイラついてるとか、そんな話を書きたかったり。
三回目で行き詰ったとこですが、優しいお言葉を胸に頑張ってきますね~~っ。
連載一気読み派なんですか? 終了まで待つの? それって辛くない?
霧島は待てない派ですねぇ……根気がないともゆーかもしれない。
彦根ちゃん、初書きかもしれませんね。かなりお気に入りキャラなんです。「緑本」のポテト摘まみ食い描写がツボったですねえ。
学生時代に何気にグッチーといちゃいちゃで、それみて将軍がイラついてるとか、そんな話を書きたかったり。
三回目で行き詰ったとこですが、優しいお言葉を胸に頑張ってきますね~~っ。