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こちらは、愚痴外来シリーズの妄想文を展開するブログです。 行灯先生最愛、将軍独り勝ち傾向です。 どうぞお立ち寄り下さいませ。
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来月号の「ダ・ヴィンチ」は海堂先生特集だって!
「~凱旋」の後日談短編もあるってっ!!
うわっほい! マジか? 目の錯覚とか読み違いとかじゃないよね?
2月3月はジェネラル月間だな~~、真っ赤だ。

というノリとは裏腹にどシリアスな続きに参ります。



~ 島津 ~

「酷い人ですよね、速水先輩って」

彦根の視線が速水を刺している。全くもってキツイ男だ。
合気道っつーのは、ああ攻撃的な武道ではなかった気がするが。
彦根の攻撃性を緩和出来るのは、たった一人しかいないのだろう。

「やれやれ」

年寄りくさい独り言が漏れる。
田口も彦根も雀牌を片付けないまま帰りやがった。
俺は黙々と雀牌を箱へ戻す。
一度伏せた牌を今度は全部表向きにして戻すのは……次回使用のことを考えてだ……かなりの手間だ。
機械的に手を動かしながら、他の事を俺は考えていた。
先に行ってしまった田口と彦根、そして未だ憮然とした表情で座り続ける速水のことを。



速水のカノジョについては、俺も噂だけは耳にしていた。
どれもそこそこの美人で、カノジョ達の方から速水に寄っていくという。
そして、長く続いても二週間。
長続きしない理由を、彦根同様、俺も知っている。

「…………お前、何考えて付き合ってんだ?」

俺達の近くに来ると、速水はカノジョの手を払う。そして、一瞥もしない。
カノジョの存在を抹消し、いないもののように振る舞うのだ。
速水の隣に立つカノジョたちは戸惑いと不審の表情を浮かべる。
その雰囲気の固さは、とても恋人同士には思えない。
その不自然さに彦根も気付いているのだろう。
気付いていないのは、田口くらいだ。
尤も、田口は真っ当に授業に出ていないから、大学内での速水との遭遇率が低いせいもあるだろうが。
邪険に扱うなら、どうして付き合うのか。

「さあな」

速水は薄く笑った。
その酷薄な笑みは日頃の速水には似つかわしくなかった。
速水という男のカタチを掴み損ねて、俺は瞬きを繰り返す。
次の言葉が出ないうちに、雀牌は箱の中に収まってしまった。
沈黙した二人で雀卓を囲むなんて、アホらしい。

「帰ろうぜ」
「おう」

俺が言えば、速水は自然な素振りで立ち上がった。
上機嫌から不機嫌のどん底、そして今はニュートラル。
田口がいなければ、速水の精神の振れ幅はごく普通の範囲だ。
彦根に叩きつけた殺気も、田口が発端とも言えるのだから。
本当に、何を考えているのやら、さっぱりだ。
「すずめ」の外は冷たい風が吹いているらしい。扉の隙間から聞こえる音は細く寒々しかった。

「じゃあな。たまには真面目に授業に出ろ」
「ははっ」

別れの言葉に、つい小言じみたセリフを付け加える。
速水はからっとした、いつもの速水らしい表情で笑った。
「すずめ」の前で俺は速水と分かれ、下宿への道を辿りながら空を見上げる。
オリオンを見つけ、それから冬の大三角を作る。シリウスとプロキオン。
三角形の二人は速水と田口。
もう一人は、姿の見えない彼女だろうかと思った。
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