さり気に青本ネタバレ注意報発令中
唐突ですが、本日2月9日はフグの日だそうです。
フグ中毒で運ばれてきた患者に、将軍は「死にたくなきゃ食うなっ」と怒鳴ってるかもしれません。
それはさておき、行灯先生とクラシックです。
共演は青本のプリンセス・由紀さん。
単行本P.171、二度目の小児不定愁訴外来時の二人の描写は、つまり擬似喫茶店デートなんではなかろうかと思ったり思わなかったり。
最近シリアス続きだなぁ。来週はコメディ週に決まりだ。
唐突ですが、本日2月9日はフグの日だそうです。
フグ中毒で運ばれてきた患者に、将軍は「死にたくなきゃ食うなっ」と怒鳴ってるかもしれません。
それはさておき、行灯先生とクラシックです。
共演は青本のプリンセス・由紀さん。
単行本P.171、二度目の小児不定愁訴外来時の二人の描写は、つまり擬似喫茶店デートなんではなかろうかと思ったり思わなかったり。
最近シリアス続きだなぁ。来週はコメディ週に決まりだ。
時間の半分を、田口と由紀は沈黙で過ごした。
「ふふっ」
ふと、由紀が小さく笑みを零す。
半分ボンヤリしていた田口は視線を上げて由紀を見た。
由紀は小さく首を傾げて笑っていた。
「ぐるぐる。紙に穴が開きそうだわ」
「ああ…………」
ぼんやりしているうちに、ボールペンをただひたすらぐるぐる動かしていたらしい。
紙の上には黒々とした円が描かれている。
何度も重ねた筆圧で、紙の表面に凹凸が出来上がっていた。
「気付かなかったな」
「ふふふっ」
情けない顔をした田口に、由紀は再び笑った。
田口もゆっくりと微笑を浮かべる。
本来の不定愁訴外来とは違う姿かもしれないが、ただ緩やかに流れる時間が愛しいと田口は思った。
「ねえ、先生」
「何でしょう?」
由紀に呼ばれ、田口は彼女をまっすぐに見る。
由紀も微笑とともに田口を見つめ返した。
「私を覚えていてね。でも、私が病気だったこととか、死んでしまうことは忘れて。今の私を覚えていて」
「ええ」
田口は一つ頷いた。
田口には当たり前のことだった。
ふと思い出すことがあって、田口は口を開いた。
「今の、オペラみたいですね」
「オペラ、ですか?」
「はい。イギリスの、パーセルのオペラに『ディドとアイネアス』という作品があるんですが、その中のソプラノのアリアです。"私を覚えていて、でも私の運命は忘れて"って」
「死んでしまうのね?」
「ええ」
恋人に去られ自ら死を選ぶディドが、己への挽歌に歌うアリア。
由紀が口にしたのはまさにそれだった。
その言葉を受け取るべきは田口ではないのかもしれない。ディドとアイネアスのような恋人同士では全くない。
だが、この不定愁訴外来で口にされた言葉の全てを田口は受け止めたいと思っているし、その責任があるとも思う。
だから田口は笑顔を作って言った。
「覚えていましょう。今、私の前で笑っているあなたのことを」
「有り難う、先生」
由紀が笑う。
晴れやかな笑みはどこまでも透き通って見えた。
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COMMENT
はじめまして。
はじめまして こんばんは。
ナナシで失礼します。
時間があるときは必ずと言い切れる程、お邪魔
しています。短編でも読み応えのある物語は
何度でも読みたくなるものなのですね。
今回の作品は、原作で彼女の事を『ひとりの大人の
女性として扱うことに決めた』という一文を思い出
しました。
諦観と言うよりももっと穏やかな、優しい静けさが
かなしいのに心に残ります。
素敵な話です。ありがとうございました。
ナナシで失礼します。
時間があるときは必ずと言い切れる程、お邪魔
しています。短編でも読み応えのある物語は
何度でも読みたくなるものなのですね。
今回の作品は、原作で彼女の事を『ひとりの大人の
女性として扱うことに決めた』という一文を思い出
しました。
諦観と言うよりももっと穏やかな、優しい静けさが
かなしいのに心に残ります。
素敵な話です。ありがとうございました。
Re:はじめまして。
こちらこそ、初めまして。御来訪有難う御座います。
最近コメント増加傾向で嬉しいなぁ。
今回、そんな高尚なコト考えてなかったので、そう言って頂けると恐縮致しますね。単にバッハ→バロック音楽→パーセルだったのですよ。あの歌も前から好きなアリアだったし。
あーでも、原作のあのシーンってシンミリしますよねえ。行灯先生贔屓の視点もあるけど、由紀さんは行灯先生好きになったかなぁと思ったりします。牧村君とは別の意味で。
行灯先生は女運がなさそう、という巷の説は正しいと思いますが。
最近コメント増加傾向で嬉しいなぁ。
今回、そんな高尚なコト考えてなかったので、そう言って頂けると恐縮致しますね。単にバッハ→バロック音楽→パーセルだったのですよ。あの歌も前から好きなアリアだったし。
あーでも、原作のあのシーンってシンミリしますよねえ。行灯先生贔屓の視点もあるけど、由紀さんは行灯先生好きになったかなぁと思ったりします。牧村君とは別の意味で。
行灯先生は女運がなさそう、という巷の説は正しいと思いますが。