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こちらは、愚痴外来シリーズの妄想文を展開するブログです。 行灯先生最愛、将軍独り勝ち傾向です。 どうぞお立ち寄り下さいませ。
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「夢見る~」を新古書で入手しました。
これで水族館デートが書ける!
……って、何か違うような気がしますねえ。

さて、予告通り今週はコメディウィークです。
バレンタインあたりから既にコメディ色は強くなってたけど、今回は裏タイトルがありまして。
名付けて「将軍イジメ週間」。
明るく楽しく将軍に酷いメに遭ってもらおうというコンセプトです。ちゃんとフォローは入れるつもりですが。
基本大っぴらにデキてますので、「秘める恋がいいのよ!」という方には不向きかもしれません。今日のノリで判断してみて下さい。
将軍と行灯と、地雷原です。



所謂恋人同士になってから、速水が不定愁訴外来に入り浸る時間が増えた。
今日も、外来のソファにどっかり座ってコーヒーを飲んでいる。
客用のコーヒーカップは繊細な作りになっていて、何だか速水にそぐわない気がした。
コイツ専用のマグカップを用意した方がいいのだろうか、と田口が考えた時だった。

「ぶほっ」
「え」

突然速水が噎せ返った。
焦った手つきで乱暴にコーヒーカップを机に戻し、そのままゴホゴホと咳き込んでいる。
最初は驚いた田口だったが、他人の不幸は面白いものだし、ニヤニヤと笑って焦る速水を眺めていた。

「大丈夫かあ?」
「な、何か入って…………ごほっ」

無責任な口調で声を掛けた田口に、速水は口元を拭った手を広げてみせた。
多くの命を繋ぎ止めた優秀な掌にポツポツと黒い粒が付着している。
田口も謎の粒を凝視した。指で摘まんで擦り合わせてみる。

「コーヒーの、粉…………?」
「何でそんなモンが、俺んトコに」

田口のコーヒーには不審なものは入っていなかった。
大体、このコーヒーを淹れたのは田口ではない。
田口は慌てて流しを振り返った。

「ふ、藤原さんっ?!」
「ええ」

ニッコリ笑った藤原看護師は、一言で全てを肯定した。

「え?? 一体何でそんな???」
「ゴメンなさいねー、速水先生。あたしもこーゆうことはやりたくなかったんですけどねえ」

疑問を投げた田口を通り越して、藤原看護師は速水に向って喋る。
速水も唖然としてしまっているのか、口を挟むこともできていない。
男二人が目を白黒させているにも構わず、藤原看護師は完璧な笑顔で話し続けた。

「散々田口先生を悩ませて、結局は一番オイシイところを持って行った速水先生にささやかな報復を、と病院長の指示でしてね。あたしもホラ、病院長には逆らえる身分じゃございませんもの」

藤原看護師のセリフの、何て嘘くさいこと。
報復を言い出したのは病院長かもしれないが、実際の手段を選んだのは藤原看護師に違いなかった。
毎日愚痴外来でコーヒーを淹れている藤原看護師だからこそ、サイフォンに残ったコーヒー粉末を速水のコーヒーに混ぜる、という手を考え付いたのだろう。
口をパクパクさせるだけの田口を余所に、藤原看護師はにっこり笑う。

「お二人とも、ここは職場ですからね? それを弁えて行動なさって下さいよ。それでは、お先に失礼します」

見事な去り際である。時間は終業3分後だった。
不定愁訴外来に取り残された二人は、揃ってガックリ肩を落とした。
先に口を開いたのは速水だ。

「畜生、あの狸ジジイめ」
「藤原さんも……悪乗りしないで止めてくれればいいのに」
「止めてくれるワケないだろ。あの二人、お前がお気に入りなんだから」

速水の言葉に、田口はタメ息を吐いた。
お気に入りと言われてもちっとも嬉しくない。
くっつくまでには紆余曲折のあった二人だったが、今後も何かと苦労しそうな気配だった。

「あーーーあ、口ん中ざらざらだ」
「難儀だったな」

速水が舌を出してボヤく。舌の上にも黒い粒が残っていた。
苦笑を浮かべて田口が呟くと、不意にニヤリと速水が笑う。
田口の脳裏に警報が鳴るより早く、速水は田口の腕を捕まえて強引に引き寄せた。
そのまま唇を重ね、舌まで絡められる。

「んんっ……………んぁ…………っ」

口内に残るコーヒーの香り。
慣れた舌の感触に、少しだけ異物感が混ざる。
ザラリとしたものが上顎に貼りついたのが感じられた。
解放された時にはすっかり息が上がり、身体の力が抜けてしまって、速水にもたれ掛かる形になっていた。速水の白衣の肩に皺が寄っているのは、田口が強く縋ったせいだ。

「お裾分け。恋愛は共同責任だからな」

速水の低い声が耳元で笑う。
田口は不貞腐れた顔を作った。
口の中がざらざらする。

「コーヒーの粉って食うモンじゃないな…………」
「同感だ」

思わず呟いたら、ヘンにしみじみと速水も頷いたのだった。
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報われてるv
こんばんは、モトコです。ちゃんと報われてる
将軍にホッとするあたり、やっぱり私将軍行灯の
セットが好きなんだ・・と、実感しました。
の、筈なのに・・次の話で恋人として報われてるのに周囲の迫害にあう将軍に笑ってしまう私は、
一体どっちなんだ・・と、頭をひねりました。
それにして、霧島さん書くの早くて尊敬です!
私はもう、アップアップで・・(苦笑)
モトコ 2009/02/16(Mon)20:42:17 編集
Re:報われてるv
いらっしゃいませ&コメント有難う御座います!
やっぱりあらぬ噂たてられたまんまってのは不憫ですし……「将軍イジメ」とか言ってる霧島が言うことじゃないかもしれませんが。
実は今回のネタ、モトコ様んとこの連載から発想したんですよ。最終話で、狸病院長を舅、地雷原を姑と表現なさったでしょ? 嫁イビリならぬ婿イビリなんです。笑って貰えてよかったです。
ブログはHTMLファイル作るより簡単だからなぁ……仕事中に妄想して、ほぼ一発書きってヤツです。後から「あれ?」とか思うことも少なくない……。せめて誤字脱字ぐらいは注意してますが、見つけたら教えて下さいね。
S.Kirishima 2009/02/18 11:28
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