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こちらは、愚痴外来シリーズの妄想文を展開するブログです。 行灯先生最愛、将軍独り勝ち傾向です。 どうぞお立ち寄り下さいませ。
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将軍イジメ第2弾です。
最初はこっちのタイトル決めてなかったんですが、前回の分と共通項を持たせたタイトルにしてみました。
中身は全く関係ありません。コンセプト……つまり将軍イジメってとこが同じなだけ。

それに伴いまして、前回の分のカテゴリを変更しています。
報復三部作にしてみようかな――とか思ってるんですけど、三回目の「報復」はタイトル候補があるのに中身が決まってない……今週中に書けるのか?

取り敢えず目先のことを片付けましょう。続きをどうぞ。
あ、桜宮市に雪が積もるかどうか解りません。噂じゃ積もらない場所っぽいのだが……そこは話の都合というヤツでお願いします。



「積もったなぁ」

駐車場を白く染め変えた雪に、田口は白い息を吐きながら呟いた。
一晩で積もった雪は、朝の光を返して世界をきらきらと輝かせている。
残業のため不定愁訴外来に泊まり込んでしまった田口だったが、目の前に広がる未踏の銀世界は、残業の報酬としては情緒と新鮮さに溢れているように思った。
と、そこへ、バシュっと濡れた音がして、胸元に雪が投げつけられる。

「よぉ。お前も泊まりか」
「速水…………」

胸にぶつかった雪を払いながら、田口は思いっきり眉を顰めた。
救命センターから出てきた速水は、素手で雪玉を転がしている。
朝っぱらから失礼な挨拶がもう一発飛んできた。
田口はかろうじて雪玉を避ける。

「こら、避けるなよ」
「何で大人しく食らわなきゃなんないんだよ」

速水の理不尽な物言いに、田口も雪玉を以て応戦しようとした。
だが、田口が投げた雪玉は、二人の中間地点あたりでぼすっと雪の中に落ちる。
速水は呆れた顔をした。

「おっまえ、その体力の無さは問題あるぞ。一晩持たないしさぁ」
「う、五月蠅いっ!」

夜の行為のことまで匂わされて、田口はむきになった。
再度雪玉を作り、腕を振り上げた時だ。

「え」
「うわっ!!」
「「「うおぉりゃあぁっ!」」」

四方八方から、速水めがけて雪玉が飛んできたのだ。
それはもう、速水が真っ白になる勢いだった。
唖然としている田口の前で、複数の勇ましい掛声が、次々に速水に雪玉をぶつけていく。
穢れのない銀世界はたちまちに踏み荒らされた。

「え? え?? 兵藤? あ、如月さん……? な、なに……」
「解説しよう」
「ちょ、待てっ! お前ら…………ゲホっ!」

まさに目を白黒させている状態で速水に挑む面々を眺めていた田口の肩を、背後からぽんと叩いたのは島津だった。
こちらはコート、マフラー、手袋にブーツという完全冬装備だ。
大量に雪玉をぶつけられて焦っている速水が、手術着に白衣という軽装なのとは大違いである。

「これは速水に一泡噴かせようっつー企画でな。兵藤先生を中心にベテラン看護師、院外関係者や患者で組織されたお前のファンクラブ、『田口先生は東城大病院の聖域だ』、略してTTS連合。元は速水のファンクラブだったが速水が本命を作ったのを機に改称、活動内容も改めた若手女性看護師中心の天城越えコミュニティ。速水に振り回される手術室の連中からとにかくモテる男は気に食わないっつー、速水に反感を持つ男たちが集まったアンチ・ジェネラルズ。最後に、高階病院長を名誉会長に迎え、俺が実行部隊長を務める『いつでも探せ、なければ作れ』がモットーの東城大娯楽探究会。まあ、そういったメンツが集まって、今回の仕儀と相なったワケだ」

島津の長口舌に田口は唖然とした。ツッコミ所が多すぎる。
そもそもそんなにアングラ組織があったことも驚きだが、長年の友人がそんなものに積極的に関わっているのも驚きだし、病院長が一枚噛んでるらしいことについては呆れるばかりである。
どうでもいい疑問が田口の口を突いて出た。

「何で、天城越え?」
「演歌にあるだろ。『誰かに奪られるっ、くらぁ~いなぁ~ら』」

貴方を殺していいですか?
続く歌詞の不穏さに、田口はぎょっとなって速水を振り返った。
たったワンフレーズを壊滅的に外した島津を笑うどころではない。
若い女性看護師たちは凄まじい形相で雪玉を速水にぶつけている。
まさかあの雪玉に石を仕込んだりしない……とは思うが、不安は消えなかった。
ハラハラと田口が見守っていると、雪玉攻勢の中を何とか抜け出した速水が、田口と島津の背後に回った。島津を盾にするつもりなのだ。
二、三個の雪玉が田口の足元に落ちて、攻撃はストップした。
背後で速水が荒い息を吐く。

「はっ、はぁっ、はぁっ…………何なんだよ、一体」
「日頃の行いってヤツだな」
「くそっ」

島津は平然と言うだけだった。
速水は肩で息をしながら吐き捨てる。
膝に手を突いて中腰状態で息を吐く速水の頭頂部が田口にも見えて、髪に雪が残っていることに気付いた。
特に何か考えたわけではなく、田口は手を伸ばした。

「あーあ、髪まで濡れてる。風呂にでも入らないと風邪ひくぞ、これ……」

呟きながら、速水の髪に残った雪を払う。
この季節に頭から濡れたら、風邪をひくのは目に見えていた。
ふと、速水が笑う。
下から見上げる体勢で田口の顔を覗き込む速水の目には、悪戯っぽい光が踊っていた。

「行灯、みんな見てるぞ」
「え?」
「人の目の前でイチャイチャしやがって」

島津が苦虫を噛み潰したような顔で言い、やっと田口は現在のシチュエーションに気が付いた。それが、他人の目からどう見えるのかも。
ばっと振り返れば、兵藤が心底情けない顔をしている。

「え、あっ! いや、これは…………っ」
「そんな焦らなくても。見せつけてやればいい」

慌てて速水から距離を取った田口だったが、速水の方は逆に背中を伸ばして田口の肩を抱き寄せた。
濡れた白衣がひやりとする。

「さぁて、行灯のお勧めだ。風邪を引く前に風呂に入るとするか。帰るぞ、田口」
「ちょっと待て、俺はっ!」
「外来休みだろ? 島津、藤原さんに田口は風邪で休みますって言っといてくれ」
「へーへー、速水にドナドナされましたっつっとくよ」
「解んのかよ、それで」

速水はからりと笑うと、田口の肩を抱いたままずんずんと歩き出した。
元々体力的には到底敵わない田口は、速水に連れて行かれるままになる。
散々踏み荒らされた足元は最早ぐちゃぐちゃで、朝一の銀世界は見る影もない。

「一緒に温まろうぜ、田口」
「嫌だって言っても聞く耳持ってないだろ、お前…………」

田口はぐったりと肩を落として呟いた。
残業疲れだけではない疲労感が身体に圧し掛かってきた。
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