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こちらは、愚痴外来シリーズの妄想文を展開するブログです。 行灯先生最愛、将軍独り勝ち傾向です。 どうぞお立ち寄り下さいませ。
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連載には全く関係ない前振りを一つ。

本日、10月1日はコーヒーの日です。
コーヒーの新年度が今日から、ということだそうで。つまり10月1日以降に作られたコーヒーは「2009年もの」ってことですよね?
「これはやらねばっ!」ということなのですが、連載でいっぱいいっぱいで量は書けないので、コメントを利用しSSSという形にします。

他に、「眼鏡の日」「日本酒の日」「補助犬の日」「醤油の日」「展望の日」ってのもあるようです。
眼鏡は、「10月01日」を漢数字にすると「一〇〇一」で眼鏡に似てるから、とか。
日本酒と醤油は干支の酉が10番目だから。補助犬は法律制定日、「展望の日」は「10(てん)1(ぼう)」という語呂合わせ。
眼鏡萌えSSを書くもよし、本酒で酔っ払ってごろにゃんするSSを書くもよし。
どうぞ10月1日をお楽しみ下さいませ。

……取り敢えずウチはカメが先ですが。

「田口クンが最近連れてるカメってコレ? あ、小っちゃい」

速水がいるバケツを覗き込みながら、カノジョはそう言った。
何処となく取り繕った口調なのは、本題に入るのを躊躇うせいだろう。
カノジョと田口の接点など速水以外に無い。
田口という人間をよく知らないことが、カノジョの口を重くしているらしかった。
気が強い、ハキハキと喋るタイプだと思っていた速水には少々意外だった。

「…………場所、変えた方がいい?」

田口の提案に、カノジョは申し訳なさそうな表情で頷いた。
普段は人目に付かないところでサボっている田口だが、カメの飼い主を探すために、最近は解りやすい場所にいることが多かったのだ。
解りやすい場所とは、つまり人目に付く場所である。
カノジョの表情を慮って提案する田口は、しっかりお人好しだと速水は思った。
てくてくと、のんびりした足取りで二人は場所を移す。
バケツに入った速水も田口に運ばれた。
建物の裏手に来たところで、二人は揃って足を止めた。

「速水のこと?」

田口の方から話を切り出した。
田口に話題を振られたことで、カノジョも話し易くなったらしい。
今度は躊躇わずに頷いた。

「うん……最近見ないけど、どうしてるか知らないかな?」
「俺も最近会ってない」
「そっか…………」

田口のシンプルな返事に、カノジョは暫し考え込んだ。
それから、何かを決意した表情で顔を上げる。
形のいい唇が開いた。

「速水クンに、田口クンから伝えてくれるかな。この間はゴメンなさいって。それから、今まで有難うって」
「それって…………」

カノジョの言葉に田口は目を見開いた。
恋愛に疎い田口でも解るのだから、誰だって解る。
カノジョの言葉は別れの挨拶だ。
表情だけで問い返す田口に、カノジョはもう一度頷いてみせた。
同じ別れでも、この間の口論の勢いとは雰囲気が違う。
本当に終わったのだと思わせる空気に、バケツの中の速水も何となく苦しくなった。
カノジョが本気で好きだったのかどうかとは、これは違う問題だ。
誰かが去って行くという事実が、否応なく寂しいのかもしれなかった。

「…………田口クンは歩くのゆっくりなのね」
「え?」

黙ってしまった田口に、カノジョは唐突に言った。
当然ながら田口は首を傾げる。
カノジョがくすっと小さく笑うのが聞こえた。

「速水クンは、歩くの速かったの。待ってって言って腕でも組まないと、待ってくれなかった。あたしが傍にいてもいなくても関係ないみたいだった……うん、いろいろあったけど、そこが一番ダメだった」

そう言えば、よく腕を組まれた。
人前で甘えてイチャつきたいのかと思っていたけれど、そういうつもりだったのかと、今になって速水は知った。
今になって、カノジョが口にして初めて、やっと解った。
もしかして今までのカノジョ達もそうだったのだろうか。
それに今まで気付かなかった速水だから、カノジョも、今まで付き合ってきた女のコ達もダメだったのだろうか。

「速水はお子ちゃまだから、だーって進んで行っちゃうんだよ、きっと」
「そうかもね」

田口が敢えて作った軽口に乗って、カノジョは肩を竦めて大人っぽく笑う。
そこで話は終わりになった。
後は二人、速水とは関係のないカメの話……ある意味関係は大アリだ……をしながら、建物の裏手から抜け出していった。
カノジョの言う通り、田口の歩みはゆっくりだ。
今まで鈍くさいヤツだと思っていただけの田口のスローペースは、女性にとってはまた別の見方があるらしい。
ゆっくりした田口の話にカノジョは何度も頷き、時に声を上げて笑う。
田口の隣りにいるカノジョは随分と肩の力が抜けていて、子供のように見えた。
可愛い子だったことに気付いても、今更だった。
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コーヒーの日SSS
「何だ、コレ?」

買ったばかりのコーヒー豆と一緒に入っていたチョコに目を止めて、速水が呟いた。
サイフォンの用意をしながら、田口は首だけで後ろを振り返った。

「いつもの店で買い物したら、たまたま今日がコーヒーの日だからっていろいろおまけしてくれた」
「ふぅん」

速水は一応は頷いて、袋の中を漁り始めた。
小さな菓子類とリーフレットが一つ入っていた筈だ。
暫くすると、速水がリーフレットを開いて読みだすのが田口の視界に映った。

「……コーヒーは当初イスラム修道士の秘薬として……そういや、そんな歌あったな」
「え?」
「お前は知らないか。アラブの坊さんが、失恋した男にコーヒー飲ませるんだよ」

田口が首を傾げると、速水は少しだけ呆れたような顔で笑い、大雑把な説明をした。
コーヒーを飲ませて、さてどうなったか。
当然、そう話が続くと思っていた田口だったが、ふと速水は眉を顰めて考え込んでしまった。

「速水?」
「…………行灯、お前、コーヒー飲むな」
「はあっ?! 何で?!」

考え込んだと思ったら、次に出てきたのは極めて理不尽な要求だ。
田口は当然ながら素っ頓狂な声を上げた。
田口の驚愕などさっぱり流して、速水は至極真面目な顔で言った。

「若い娘に恋なんかされて堪るかっ」
「何だよ、それ………」

全くワケが解らない田口は、長い長い溜息を吐くしかなかった。
霧島 2009/10/01(Thu)20:31:46 編集
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