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こちらは、愚痴外来シリーズの妄想文を展開するブログです。 行灯先生最愛、将軍独り勝ち傾向です。 どうぞお立ち寄り下さいませ。
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13回で終わりそうです。半端なのは否めない……。
前回のが短いので今回のとくっつけてもよかったんだけど、今回のが長くなりそうなので切りました。
あと一息だぁ。

世界が無音になった。速水と魔女がいるだけになる。
田口も、グレーに霞んだ背景の一部になった。

「時間を止めてあるの、これで少し話が出来るわ」

魔女はゆったりと空中に座って足を組んだ。
空気椅子の要領だが、魔女は本当にリラックスしているように見える。
速水の目には見えない椅子があるのかもしれない。
だが、そんなことは今はどうでもよかった。

(話なんかしてる場合じゃないだろ! 俺を元に戻せよっ!)

「無理だ、と何度言ったら解るのかしら? あの魔法を解くのは、あれ以外の方法は無いの」

(だったらお前が助けろよっ!)

魔女は呆れた顔で言う。
速水は更に噛みついた。

「助かるわよ、彼」

(えっ!)

魔女はあっさりと口にした。
速水は首を伸ばして魔女を見上げた。
少しだけ、ほんの一瞬安心して、だが。

「7分後、あなたの後輩が見つけて、それから病院へ運ばれるわ。一命は取り留めるけど、右半身に障害が残る……留年は仕方ないわね。それでも卒業はするわ」

(何だよ、それっ!)

「助かることは間違いないでしょう?」

それを助かったと言うのか。断じて言わない。
命が助かったのだからそれでいい、とは思わない。
田口の何一つ、失くしたくないのだ。
まして速水は何も出来ないままなんて!

(どうすりゃいいんだよっ?!)

「そこよ。どうして彼にキスしないの? 好きなんでしょう? 戻れるかもしれないじゃない」

魔女はぴっと指を立てた。
魔女の言葉に速水は目を見開いた。
しかし、すぐに首を横に振る。

(戻れるワケねえじゃねえか。田口は運命の人じゃねえだろ?)

言い出したのは魔女の方だ。運命の人との真実の愛のキス。
確かに田口を好きだけど、田口は運命の人ではない。
魔女は笑った。

「あら、出逢った時点でそれは運命よ」

不思議と優しい笑顔だった。
声まで優しく聞こえた。

「あなたが100年生きたとして、その間に地上の全ての人に出逢うことが出来ると思う? 出来ないでしょう? 出逢って知り合えた時点でそれは運命。友達になれたのなら、更に奇跡ね」

(じゃあ…………)

「ついでに、私は女性と言った覚えもないわ」

呆然とした速水に、魔女は笑った。
確かに魔女は、結ばれる運命とは言わなかった。女性とも言わなかった。
それを女性だと判断したのは速水の方だ。
速水に理解が広がるのを察して、魔女は更に言葉を紡いだ。
今はもう、魔女の声も優しい歌のようだった。

「あとは真実の愛だけ。想いに嘘はある?」

(ねえよ)

田口を失くしたくない。
田口の傍にいたい。笑っていて欲しい。
隣りを歩く存在でありたい。
心底、願う。

「それならいいわ」

魔女が指を鳴らすと、世界に色と音が戻る。
ただの背景になっていた田口は、現実として速水の前にいる。
薄く開いたままの唇に、速水はそっと口を寄せた。
カメの口と田口の唇が微かに触れ合った。
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