忍者ブログ
こちらは、愚痴外来シリーズの妄想文を展開するブログです。 行灯先生最愛、将軍独り勝ち傾向です。 どうぞお立ち寄り下さいませ。
[214]  [213]  [212]  [211]  [210]  [209]  [208]  [206]  [207]  [205]  [204
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

サイトを更新しております。
将軍と行灯で1本、その他の面々で2本、小ネタに1本。
大分下に拡大してきたカンジが……。

(田口っ!!)

叫んでも声にはならない。
速水は懸命に二人の傍へ近寄っていった。
甲羅が重かった。
爪が地面を浅く引っ掻くが、遅々として進まない。
村上の手が田口の喉を絞めている。
田口は村上の手首に爪を立てていたが、ふ、と力が抜けた。
ずるり、と田口の手が落ちていく。
落下に任せたままの手が、自然な角度で指を曲げて横たわった。

「あ…………っ」

村上は、自分がしでかした事の重大さに呆然となった。
田口の首から手を離してよろよろと立ち上がると、ふらつく足取りでその場から逃げていく。
その際に田口を蹴飛ばした。
田口の手がまた動いた。
それは自発ではなく、ただ蹴られた衝撃で動いただけだ。

(田口っ! おい、しっかりしろよっ!)

幾ら叫んでも声にはならない。
どんなに足を動かしても、距離はなかなか縮まらない。
状況はとても危険だと解っている、解っているのに!

(魔女っ! どっかで見てるんだろっ!)

犬なら、吠えて人を呼ぶことが出来た。
猫なら、村上を引っ掻いて撃退することが出来た。
こんな水棲小動物では、何も出来ないではないか。
田口が目の前で倒れているのに!

(俺を元に戻せよっ!)

「無理よ」

声が聞こえた。
気付けば、速水のすぐ傍にいつかの魔女が立っている。
魔女は速水を掬い上げると、田口の傍へ近寄って田口の顔の近くに速水を下ろした。
魔女の足ではたった三歩だ。

(田口、おいっ)

唾液の零れている口元から呼気が聞こえない。瞼は閉じたままだった。
首を伸ばして田口の頬を突いても、反応しない。

(戻せっ! 俺を戻せよっ!)

「無理だと言ったでしょう」

人であれば、心肺蘇生が出来る。助けを呼ぶことができる。
振り返って速水は怒鳴った。
声にはならないが、魔女には解っている。
ただ一言、魔女は冷静に告げて指を鳴らした。
周囲から音が消えて、一切が灰色に変わった。
PR
back
COMMENT
name
title
text
color   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
mail
URL
pass
secret
TRACKBACK
TrackbackURL:
PREV ←  HOME  → NEXT
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
最新コメント
[04/04 トワ]
[04/03 武那しめじ]
[03/12 名無し]
[01/04 みなみ]
[12/16 武那しめじ]
リンク
倉庫サイトと素敵同盟さま
プロフィール
腐れ管理人、霧島です。
趣味は図書館通いと立ち読み。
レンタルで映画DVD視聴。
モットーは「とりあえず」。
ブログ内検索
バーコード
最新トラックバック
Copyright (C) 2024 M-Rainbow All Rights Reserved.

Photo by (c)Tomo.Yun   TemplateDesign by kaie
忍者ブログ [PR]