忍者ブログ
こちらは、愚痴外来シリーズの妄想文を展開するブログです。 行灯先生最愛、将軍独り勝ち傾向です。 どうぞお立ち寄り下さいませ。
[216]  [215]  [214]  [213]  [212]  [211]  [210]  [209]  [208]  [206]  [207
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

完結です! 長い間のお付き合い有難う御座いました。
コメントを利用して、おまけの風景SSSをくっつけております。


「将軍がカメって面白くね?」というひょんな思いつきで始まった連載でした。何でこんなことを考えたのだか、自分でもビックリです。
今まで獣化SSって書いたことなかったので、動物の視線視界を意識しながら書くというのは新鮮で難しかったです。まして機動力の無いカメ……。
よくよく考えたら萌え度の低い代物だったかもしれないですねえ。
本当に、お付き合い下さった方にはお礼申し上げます。


まったく関係ない話ですが、サントリーと暴れん坊将軍のコラボCM、知ってます? あれ、面白くない?
肉と米と魚が脳内を回っております。

視点が急に高くなった。
つい先ほどまで速水の視界いっぱいに広がっていた田口の顔を、次の瞬間には見下ろすアングルで捉えていた。
田口に触れようとした手には、速水の意志のままに動く指。

「戻っ、た…………っ」

呟きは音になった。
久々に聞いた自分の声は、奇妙なほど心臓に響いた。
その鼓動で速水は自分のすべき事を思い出す。

「誰かっ! 来てくれっ!!」

一息で大きく怒鳴って助けを求めてから、田口の心肺蘇生法にかかる。
気道を確保し、マウストゥマウスで呼気を送り込んだ。
テキストで読んだきりの、いくつかの注意事項が脳裏を過る。
二回目の人工呼吸を施したところで、田口が咳き込んだ。

「田口っ! 俺が解るかっ?!」
「ぐ、げほっ……はっ、は、やみ…………?」

苦しそうな涙目で、何度も咳き込みながら、田口は辛うじて言った。
速水も涙目になってしまうが、それは安堵の為だ。

「そのまま寝転がってろ、人呼んでくる」

田口に短くそう言って、速水は田口の傍から立ち上がった。
建物の裏手から飛び出すと、最初の速水の怒鳴り声を聞きつけたらしい彦根がやってくるのが見えた。

「え、速水先輩?!」
「行灯が首絞められた。担架と人手調達しろ」
「え、え、えぇっ?!」

暫く姿が見えなかった速水が唐突に現れ、その上に突飛な命令をするものだから、流石に冷静な彦根も目を白黒させた。
滅多に見られない彦根の慌てぶりだが、今は笑う余裕もない。

「いいからとっとと行けよっ」

暴君のように命令だけして、速水は田口の元へ取って返した。
肘を突いて起き上がろうとしていた田口をそっと押さえる。
上手く力が入っていなかったのだろう、田口はすぐにまた地面に横たわった。

「頭打ってるかもしれないんだ、動くな」
「ん…………速水、今まで何処、っごほ…………っ」
「今は喋るな」

口を利こうとした田口が、喉に絡まったような音で咳き込んだ。
速水が制すると、田口は目線で頷いて長く息を吐いた。
一連の騒ぎで体力を一気に消耗したようで、疲れた表情をして目を閉じている。
触りたくなったので、素直に手を伸ばした。
ぐしゃぐしゃになった田口の髪を指先で梳いていたら、田口が瞼を上げて小さく微笑んだ。
カメだった頃に見た、優しさが滲む笑みだ。速水を恋に落とした笑み。
身体を屈めて田口にキスをした。

「は、や…………」

田口が驚いた顔で目を見開いた。
田口の反応に、二人にとっては初めてのキスであることを意識してしまった。
羞恥に紅潮する顔を見られたくなくて、速水はそそくさと立ち上がった。
ちょうど、救援を引き連れて彦根がやってきたところだった。



田口の首にあった明らかな絞め痕に病院は騒然となった。
大学当局に一応の経緯は説明したが、その後の展開はもはや速水にはどうでもいいことだった。
田口の治療の経過は順調で、魔女に言われたように後遺症が現れることもなさそうだった。

「遅ぇよ、行灯」
「五月蠅いよ。先行きゃいいだろ」

田口は相変わらず、どこか気の抜けたような足取りでのんびり歩く。
三歩先で振り返った速水が言うと、田口は顰めっ面を返した。
田口が速水の隣りに並ぶのを待って、今度は田口の歩調に合わせて歩く。
田口が少し不思議そうな表情を浮かべたが、速水の気持ちに気付いたのかゆっくりと、柔らかく笑った。
何度でも速水を恋に落とす笑顔だ。
跳ね上がった鼓動を空咳一つで誤魔化しながら、速水は田口の隣りをのんびり歩いていった。
田口の隣りを歩く幸せは、スロウがいい。
PR
back
COMMENT
name
title
text
color   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
mail
URL
pass
secret
数年後のカメと魔女
東城大病院外科医局に配属になった速水は、剣道部顧問の高階に挨拶する為に、病院内をうろうろしていた。
見覚えのある小柄な後ろ姿に声を上げようとしたが、高階の向こうに更に人がいるのに気付いて声を飲みこんだ。
近づいてきた速水の気配に気付いて、二人は振り返る。

「…………げ」

忘れもしない、あの顔。
数年前、指パッチン一つで速水をカメにした魔女だ。
魔女は速水を見て、にこやかに笑った。

「あら、新人さん?」
「ああ、今年配属の速水くん。速水くん、こちら佐伯外科の藤原看護婦長だ」
「看護婦長…………」

何だってそんな。
いや、実は単なる赤の他人のそっくりさんか?
速水の頭の中は混線してしまう。
速水の混乱を知ってか知らずか、藤原看護婦長はにこやかに笑った。

「慣れるまで大変でしょうけど、頑張ってね」

その笑顔は、まさに記憶にある魔女のものだ。
背筋を強張らせて返事も出来ない速水を残し、藤原看護婦長は悠々と歩き去った。
残された高階が溜息を吐きながら言う。

「あの人怖いですからね、気を付けた方がいいですよ。実は魔女だって噂もある位ですから」
「……よぉく知ってます」

実感を込めて頷く速水に、冗談を言ったつもりの高階は怪訝そうな顔を浮かべたのだった。
霧島 2009/10/08(Thu)21:34:27 編集
連載お疲れ様です!
って、わたしまだ読んでないんですけど <おい!

週末は外出しちゃうから、とりあえず今のうちにと思って(^^;
あれよあれよと話がUPされるので、いつもすごいなーと羨望の眼差しです。
あれです。犬が星みるような感じ。

連載は外出中に携帯から読もうと思ってます。
旅の楽しみとして♪
むふふ。読むの楽しみだなあ。

そんでもって10月企画も始まるのでしょうか。
いあー、テンコ盛りですな!
なゆた 2009/10/10(Sat)06:37:00 編集
Re:連載お疲れ様です!
いらっしゃいませ。
そういえば、連休中は気の進まない外出って仰ってましたね。
息抜き代わりになれば有難いことです。
10月企画やりますよ~。次の企画に取りかかる為に連載をガンバってきた気がするこの頃です。本末転倒してる。
こちらも宜しくお付き合い下さいませ。9月の企画よりおバカなタイトルなのは間違いないのですが。

ハロウィン、はかどってますか? 霧島は、将軍のご衣裳は決めましたがどんな悪戯にしようかに困っているところです。ま、前日辺りに創作の神様がインスピレーションを下さる……かもしれない。
S.Kirishima 2009/10/10 16:02
突然のコメント、失礼いいたします
ご馳走様でございました。

亀さん将軍とほんわか行灯に、思いっきり癒して頂きました。

はぁ~☆イイ。実にイイ。
後日談がまたイイですね~。

その後、愚痴外来に配属された魔女さんと将軍の腹の探り合いなんてのも見てみたいものですwww
たれざる 2010/01/10(Sun)13:33:28 編集
Re:突然のコメント、失礼いいたします
いらっしゃいませ、コメント有り難う御座います!
ちょうどサイトの方にも再録始まる頃ですね~。
単にノロマな生き物ってことでカメを選んで、まあ苦労したこと!
楽しんで頂けましたら、頑張った甲斐もあるというものです。

>その後、愚痴外来に配属された魔女と将軍
ど、どうなるんだ、これ?

地雷原:あら、カメですね。
行灯:へえ……学生の時、ちょっとだけ飼ってたことあるんですよ。
地雷原:そうなんですか。でもどうしてこんなところにいるんでしょうね?
将軍:魔女の呪い(ボソっ)…………。
行灯:?? 今何か言った?
将軍:いや、何でもねえよ。

こんなカンジでしょうか。地雷原の含み笑いが目に見える……。
S.Kirishima 2010/01/11 11:59
TRACKBACK
TrackbackURL:
PREV ←  HOME  → NEXT
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
最新コメント
[04/04 トワ]
[04/03 武那しめじ]
[03/12 名無し]
[01/04 みなみ]
[12/16 武那しめじ]
リンク
倉庫サイトと素敵同盟さま
プロフィール
腐れ管理人、霧島です。
趣味は図書館通いと立ち読み。
レンタルで映画DVD視聴。
モットーは「とりあえず」。
ブログ内検索
バーコード
最新トラックバック
Copyright (C) 2024 M-Rainbow All Rights Reserved.

Photo by (c)Tomo.Yun   TemplateDesign by kaie
忍者ブログ [PR]