23456ヒットの錆兎さまからのリクエストです。
錆兎さま、おめでとうございます&リクエスト有難う御座いました。
さてリクエスト内容なのですが。
「互いに思いを抱えたまますれ違い、で将軍が結婚、ふとした弾みで相手の心を知らないまま関係を結び、互いに気持ちを測れず悩む二人、というサラリとどろどろな切ないお話」
……だそうです。
珍しくリクエスト内容をそのまま載せたのは、つまり書きたかったのはこういうお話なんですけどぉ……という言い訳です。
何だか違うものがが出来上がりそうな予感がヒシヒシとしております。
最早間違い探しです……うううっ、情けない。
エンドシーンの指定がなかったので、個人的な趣味嗜好でハッピーエンドへ持ち込みますが、よろしかったでしょうかね?
それではどうぞです。
長くなりそうです。3回くらいが理想なんですが、はてさて……。
後記:3回無理だよ! 話が進まないうちに、文字数ばっかり増えてるもん!
錆兎さま、おめでとうございます&リクエスト有難う御座いました。
さてリクエスト内容なのですが。
「互いに思いを抱えたまますれ違い、で将軍が結婚、ふとした弾みで相手の心を知らないまま関係を結び、互いに気持ちを測れず悩む二人、というサラリとどろどろな切ないお話」
……だそうです。
珍しくリクエスト内容をそのまま載せたのは、つまり書きたかったのはこういうお話なんですけどぉ……という言い訳です。
何だか違うものがが出来上がりそうな予感がヒシヒシとしております。
最早間違い探しです……うううっ、情けない。
エンドシーンの指定がなかったので、個人的な趣味嗜好でハッピーエンドへ持ち込みますが、よろしかったでしょうかね?
それではどうぞです。
長くなりそうです。3回くらいが理想なんですが、はてさて……。
後記:3回無理だよ! 話が進まないうちに、文字数ばっかり増えてるもん!
『よお。来いよ、こっちにいるんだろ? 美味い物食わせろって言ってたじゃないか。いいから来いって、近くなんだしさ、場所解るだろ』
傍若無人な電話は現在地を告げると、田口の返事を待たずに切れた。
携帯電話を手に、田口は眉間に皺を寄せた。
札幌への出張が入ったので速水に連絡を取ったのが、一週間ばかり前のことだ。
美味い北海の幸を食わせる店にでも案内させようと思っていたのだが、別件で用があったらしく、断られてしまった。
それならそれで仕方がないと、札幌駅近辺で適当に食事をしてホテルに戻り、シャワーも浴びて寛いでいたところで、今の電話だ。
明らかに酔った声が告げていたのは、札幌駅近辺のホテルの名前だった。
そこのバーで速水は飲んでいるらしい。
夜の10時を回ったところだから、酔っていて悪いことはないだろう。
ないのだが、何だろう、酷い酔い方をしているのが電話越しに感じられたのだ。
酔っ払い特有の高いテンション、他人の話を聞かない奔放さ……その向こうにある、捨て鉢な雰囲気。
何となくそれを感じて、財布を手に部屋を出た。
この季節の北海道の夜は、当たり前だがコートが必要だった。
「よお」
「何なんだよ、お前」
ホテルのバーは一階にあって、宿泊客以外でも利用しやすいようになっていた。有難い限りである。
入ってきた田口を見て、速水は片手を上げた。
田口の方は、当然ではあるが速水の顔を見ると同時に溜息を吐いた。
草臥れた顔の田口を、速水は遠慮なく笑う。明らかにテンションが高い。
それでもやはり、電話越しに捨て鉢な空気を感じたのは間違っていなかった。
「…………お前、何かあったのか?」
「そうだな……場所変えようぜ」
速水の隣りのスツールに腰を下ろし、バーテンダーを気にしながら密かに声をかけると、速水は苦笑を浮かべてそう言った。
速水がそう言うなら、田口に異論はない。
椅子が温まらないうちに腰を上げることになり、速水の先導でバーを出ていく。
田口の前を歩く背中はしっかりと揺るぎなく、これなら大丈夫かもしれないと田口は内心思った。
カードで精算を済ませた速水は外へは向かわなかった。
ホテル内を奥へと入っていく。
フロントを過ぎて更に先に向かうので、田口はハラハラし始めた。
ただの通りすがりが立ち入れる雰囲気ではないのだ。
艶のある木目が美しい、特別フロントが現れる。
速水が懐からカードキーを取り出すと、フロントにいた人物は深々と頭を下げて「お帰りなさいませ」と口にした。
「来いよ、行灯」
「…………お前、泊ってんのか?」
唖然として瞬きを繰り返した田口を、速水は小さく笑った。
勝手知ったるという風情で速水はエレベーターに乗り込む。
ボタンは最上階レストランの一つ下、客室としては最上階である。
東城大病院の「満天」より高い階でエレベーターは音を立てて停止した。
「ほら」
エレベーターの扉を手で押さえ、速水は田口を先に降りるように促す。
言われるままに田口はエレベーターからフロアに出た。
客室のドアが遠い。ワンフロアにある客数は極端に少ないようだった。
「まさかここって…………」
「おうよ。スウィートフロアだぜ、折角だから拝ませてやるよ。一生入れないかもしれないぜ」
田口が恐る恐る呟くと、速水は面白そうな顔で言った。
速水の偉そうな物言いは別として、確かに興味がそそられる。
速水はカードキーで部屋のドアを開け、田口は速水の後に続いてスウィートルームに踏み込んだ。
雰囲気のある部屋だった。
内装の素晴らしさは、例えば田口が今夜の宿にしていたビジネスホテルとは比較にもならなかった。
「すげえんだぜ、風呂から夜景が見えるんだ。いい値段したけどな」
「…………おいくら?」
「八万円」
「うわぁ…………」
備え付けのソファに腰を下ろした速水が、楽しそうに笑う。
お値段が気になるのは小市民の悲しい性だ。
速水の答えに、田口は口の中で感嘆の声を上げた。
きょろきょろと部屋を見回して、室内の調度品も観察する。液晶大型テレビなど、田口の自宅にもない代物だ。
だが、どうしても気になるのは背後の大きなダブルベッドだった。
誰かと泊るために予約した部屋なのだ。
それがまさか、田口のワケがない。元々今日は会う予定はなかったのだから。
それがどうして、この部屋に足を踏み入れたのが田口なのだか……。
速水のささくれた雰囲気の理由も、そこにあるのかもしれなかった。
傍若無人な電話は現在地を告げると、田口の返事を待たずに切れた。
携帯電話を手に、田口は眉間に皺を寄せた。
札幌への出張が入ったので速水に連絡を取ったのが、一週間ばかり前のことだ。
美味い北海の幸を食わせる店にでも案内させようと思っていたのだが、別件で用があったらしく、断られてしまった。
それならそれで仕方がないと、札幌駅近辺で適当に食事をしてホテルに戻り、シャワーも浴びて寛いでいたところで、今の電話だ。
明らかに酔った声が告げていたのは、札幌駅近辺のホテルの名前だった。
そこのバーで速水は飲んでいるらしい。
夜の10時を回ったところだから、酔っていて悪いことはないだろう。
ないのだが、何だろう、酷い酔い方をしているのが電話越しに感じられたのだ。
酔っ払い特有の高いテンション、他人の話を聞かない奔放さ……その向こうにある、捨て鉢な雰囲気。
何となくそれを感じて、財布を手に部屋を出た。
この季節の北海道の夜は、当たり前だがコートが必要だった。
「よお」
「何なんだよ、お前」
ホテルのバーは一階にあって、宿泊客以外でも利用しやすいようになっていた。有難い限りである。
入ってきた田口を見て、速水は片手を上げた。
田口の方は、当然ではあるが速水の顔を見ると同時に溜息を吐いた。
草臥れた顔の田口を、速水は遠慮なく笑う。明らかにテンションが高い。
それでもやはり、電話越しに捨て鉢な空気を感じたのは間違っていなかった。
「…………お前、何かあったのか?」
「そうだな……場所変えようぜ」
速水の隣りのスツールに腰を下ろし、バーテンダーを気にしながら密かに声をかけると、速水は苦笑を浮かべてそう言った。
速水がそう言うなら、田口に異論はない。
椅子が温まらないうちに腰を上げることになり、速水の先導でバーを出ていく。
田口の前を歩く背中はしっかりと揺るぎなく、これなら大丈夫かもしれないと田口は内心思った。
カードで精算を済ませた速水は外へは向かわなかった。
ホテル内を奥へと入っていく。
フロントを過ぎて更に先に向かうので、田口はハラハラし始めた。
ただの通りすがりが立ち入れる雰囲気ではないのだ。
艶のある木目が美しい、特別フロントが現れる。
速水が懐からカードキーを取り出すと、フロントにいた人物は深々と頭を下げて「お帰りなさいませ」と口にした。
「来いよ、行灯」
「…………お前、泊ってんのか?」
唖然として瞬きを繰り返した田口を、速水は小さく笑った。
勝手知ったるという風情で速水はエレベーターに乗り込む。
ボタンは最上階レストランの一つ下、客室としては最上階である。
東城大病院の「満天」より高い階でエレベーターは音を立てて停止した。
「ほら」
エレベーターの扉を手で押さえ、速水は田口を先に降りるように促す。
言われるままに田口はエレベーターからフロアに出た。
客室のドアが遠い。ワンフロアにある客数は極端に少ないようだった。
「まさかここって…………」
「おうよ。スウィートフロアだぜ、折角だから拝ませてやるよ。一生入れないかもしれないぜ」
田口が恐る恐る呟くと、速水は面白そうな顔で言った。
速水の偉そうな物言いは別として、確かに興味がそそられる。
速水はカードキーで部屋のドアを開け、田口は速水の後に続いてスウィートルームに踏み込んだ。
雰囲気のある部屋だった。
内装の素晴らしさは、例えば田口が今夜の宿にしていたビジネスホテルとは比較にもならなかった。
「すげえんだぜ、風呂から夜景が見えるんだ。いい値段したけどな」
「…………おいくら?」
「八万円」
「うわぁ…………」
備え付けのソファに腰を下ろした速水が、楽しそうに笑う。
お値段が気になるのは小市民の悲しい性だ。
速水の答えに、田口は口の中で感嘆の声を上げた。
きょろきょろと部屋を見回して、室内の調度品も観察する。液晶大型テレビなど、田口の自宅にもない代物だ。
だが、どうしても気になるのは背後の大きなダブルベッドだった。
誰かと泊るために予約した部屋なのだ。
それがまさか、田口のワケがない。元々今日は会う予定はなかったのだから。
それがどうして、この部屋に足を踏み入れたのが田口なのだか……。
速水のささくれた雰囲気の理由も、そこにあるのかもしれなかった。
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