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こちらは、愚痴外来シリーズの妄想文を展開するブログです。 行灯先生最愛、将軍独り勝ち傾向です。 どうぞお立ち寄り下さいませ。
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企画の方です。うう、ゴメンなさい。
多分こっちの方が話の目処が立っている……ハズなのですが。
キリリク連載は脳内構想がもうちょっと。出来たら一気に行きたいな。
カテゴリ変更かけました。これ以上増えなかったら肩透かしだな。

私信・Nさま
ハロウィンは妄想のみ。まだ着手しておりません。
ウチ、甘くないかも……例によって将軍イジメかもしれないな。

「なあ」
「あん?」

速水に呼びかけられて、島津は飯茶碗を持ったまま目だけを上げた。
自分一人さっさと食事を終えた速水は、酷く真剣な顔で島津に尋ねた。

「行灯って俺のこと好きだと思う?」
「………ぐっ! げ、ごほっ」
「汚ねえな、飛ばすなよ」

米を飲み込む先を間違えて島津は噎せ込んだ。
速水は、そんな島津を実にイヤそうな顔で見ている。
誰のせいだ、誰の。てか、お前のせいだろ。
鼻にツンとくる不快な痛みに……多分、飯が鼻へ逆流している……顔を顰めながら、島津は心の中で呟いた。
取り敢えず落ち着いてから、島津は速水に問い返した。

「お前ら付き合ってるんじゃなかったか」
「まあ付き合ってるけどよ、アレは何か、成り行きみたいなモンだったし」

速水と田口が付き合いだしたのは少し前のことだった。
島津もその時のことは覚えている、確かに速水が言う通り、成り行きのような始まり方ではあった。
お互い、付き合った方がいろいろ便利っぽい、という理由でスタートしたのである。

「で、どう思う?」
「どうって、嫌いな人間とは付き合わんだろ、フツー」
「いや、嫌われてないのは解ってるよ、そういう意味じゃなくて」

速水はそう言ってテーブルに身を乗り出した。
頭を若干低くして、内緒話の体勢になる。

「男として意識されてると思うか?」
「それは…………」
「…………だよな」

島津は返答に口籠った。
言葉よりもよほど正直な答えに、速水はがくりと項垂れてしまったのだった。
田口の所業を思い起こせば、島津にもそこは甚だ疑問だった。

「アイツすぐくっついてくるし、腕とか組んでくるし、胸当たってるっつーの。俺がいても、風呂入るから勝手にしてて、とか言うんだぜ。ぜってー意識されてねえよな?」

速水が挙げた具体例に島津は眩暈を起こしたくなった。
ここにはいない田口に、何やってるんだお前、と大声で言いたいところである。
男は狼だと、田口の親は教えなかったのだろうか。

「見事なまでに男の数に入ってないな」
「だろ?」

正直に言うと速水は同意を求めて力強く頷いた。

「で、お前今更何だってそんな話を持ち出してきたんだ?」
「いや、男として意識されてないよなって」
「だからそんなの今更じゃないか。それとも何か、男として意識されたいのか?」

島津が言うと、速水は面白いほどに反応した。リトマス試験紙よりも顕著だ。
耳を赤くしてそっぽを向く速水に、今度こそ島津は唖然とした。

「お前…………今頃になってマジになったか!」

島津は思わず声を上げてしまった。
当然だろう、既に二人は付き合っているのだ。
お互いの家に入り浸り、一緒に食事をし、出かけもする。
付き合っていることに違和感の欠片も無かった二人なのだ。

「仕方ないだろ! アイツ可愛いんだから」
「うえっ」

島津の声に首まで赤くした速水は、声を顰めながらも主張した。
しかし惚気紛いの主張に、島津はたちまちげんなりした。
これは訊かない方がよかったか。
島津のイヤな予感も知らず、速水はますます胸焼けしそうな発言を繰り出した。

「アイツいちいち楽しそうに笑うんだよ、俺がメシ食ってる時とか。待ち合わせに遅れた時だってさ、俺の奢りとか言いながらやっぱり笑ってて、そういうのが可愛いとか思って、」
「あーはいはいはいはい。もう結構」
「聞けよ!」
「惚気は聞かん。聞きたくもない…………」

げんなりした表情で島津は手を振って速水を黙らせた。
速水は不満そうな顔をする。
速水にはまだまだ訴えたいことがあるらしいが、島津はこれ以上聞いているのは御免だ。

「押し倒してみりゃ? そうすりゃ嫌でも意識すんだろ」
「嫌われたらどうするんだよっ!」
「…………お前でもそこを意識するんだな」

島津の無責任な提案に、速水は噛みつくように反論した。
少し意外な反応に、島津は目を見開いた。
今まではとっとと話を終わらせたい気持ちでいっぱいだったが、少し真剣になって速水の様子を窺う。
島津の呟きに、速水は不思議そうな顔をしていた。

「お前今まで、ベッドに持ち込むのに躊躇ったことなかっただろ? そりゃ今までの相手はみんなお前に告白してきた子だったからな、最初からOKは目に見えていたんだろうが……行灯は別なんだな」
「当たり前だろ」

頷いておいて、速水は自分の主張の可笑しさに気付いたようだった。
苦笑混じりの笑みを浮かべた。
先程まで若干パニクっていた様子とは大違いの、落ち着いた風情だった。

「マジ、アイツに嫌われたくねえんだよ。アイツに絶交とかされたら本気で落ち込む」
「…………本気なんだな」
「ああ」

入学当初からの付き合いだから、もう三年越しだ。
いつもお手軽な交際しかしてこなかった速水の本気を知り、何だか感慨深いものを島津は覚えた。まるで保護者の気分だ。
速水がここまで真剣なのだから、島津としても真っ当なアドバイスの一つや二つ捻り出してやりたいところだった。

「やっぱここは、セオリー通り、告ったらどうだ?」
「やっぱそうだよなぁ」

速水も考えたのだろう、頷きは早かった。
だが、頷いた後で速水は苦笑を浮かべた。

「私も好きだよー、とかフツーに流されそうな気もするけどな」
「……行灯だからな」

あの呑気者の、悠長な反応を想像して島津も苦笑を浮かべた。




食堂を出てからも、話題は対田口告白対策だった。
うっかりすると惚気になる会話を、島津が辟易しながら聞いていると、前方のベンチに田口と彦根の姿が見えた。
彦根が慌てた様子で立ち上がる。
田口はしきりに顔を拭っていた。
その様子に、島津はつい眉を顰めた。

「田口、泣いてんのか…………?」

その時既に、速水は走り出していた。
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