6回確定かな。
またまた唐突に行灯先生サイドです。
本当は昨日アップ出来ないこともなかったけど、そうすると今日アップするものが無くなるんだ……。
一日二つ上げて次の日休みってのと、一つずつで毎日ってのと、どっちがいいですか?
訊いたところで、そうなるとも限りませんが、ね。
またまた唐突に行灯先生サイドです。
本当は昨日アップ出来ないこともなかったけど、そうすると今日アップするものが無くなるんだ……。
一日二つ上げて次の日休みってのと、一つずつで毎日ってのと、どっちがいいですか?
訊いたところで、そうなるとも限りませんが、ね。
「…………速水?」
ぶつん、と切れた電話に田口は溜息を一つ吐いた。
こういうチンケな嫌がらせをする男ではないと田口は解っているが、田口以外の相手にこれをやったら、不審電話以外の何物でもないだろう。
速水がどういうつもりで電話をかけてきて、どういうつもりで切ったのか、田口には想像もつかない。
ただ、速水の心情の吐露を聞かなくて済んだことに、田口は少しだけほっとした。
田口の中でも、速水の問いに対する答えは出ていなかった。
「同情か?」と訊かれたのが癇に障ったのは事実だ。
速水は何処となく不機嫌で、言葉の中にも棘が含まれているのを感じた。「同情なんかされたくねえよ」と言っているようだった。
速水を労わりたいと願ってした全てを否定された気がして、咄嗟にこちらも棘のある一言を返してしまった。
だがしかし、同情ではなかったとしたら、さて何だったのだろうか。
己の奥底にどんな気持ちが眠っていたのだろうか。
「…………お前は、答え出たのか?」
携帯電話の画面は、待ち受けから既に省エネモードに入っている。
届く筈もない問いを、田口は空中に呟いた。
「…………ゴメンなさい…………でも、有難う…………さよなら、先生」
離れていった唇が小さな声で囁く。
田口はそれをただ、困惑と共に黙って見送るしかなかった。
彼女は小さな笑みを浮かべると、そっと踵を返して病棟へ戻っていく。
その影は何処となく薄く、彼女に残された時間の短さを表しているようだった。
愚痴外来の外扉に凭れかかって田口は天を仰いだ。
触れ合った唇を手の甲で強く拭う。
無意識にそうして、田口は苦笑を浮かべた。
「ダメだなぁ」
幾ら煩悶を抱えていても、日々の業務は減ることはなかった。
相変わらず田口は患者の愚痴を聞き届ける毎日である。
まだ二十代の、若い女性だった。
悪性の腫瘍が既に転移していて、彼女に残された時間はもう僅かだと知らされていた。
東城大で出来ることは最早尽きており、転院が決まっていた。
そんな彼女のメンタルケアを依頼されたのが田口で、彼女は残り少ない時間にささやかな恋をした。
彼女が望んだのはキス一つだけだった。
「…………同情だけじゃ無理だよ、速水」
彼女を憐れんだのは確かだ。
だが、キスを容易く受け入れられはしなかった。
唇を拭った手がその証拠だ。
若く愛らしい女性で、不満なんて抱いたら罰が当るだろうに。
彼女の残された時間を思えば、どんな願いだろうと聞き入れるべきだろうに。
それでも、たかがキス一つでも、同情だけでは受け入れられないのだ。
そして思い知らされる。
あの夜にあったのは、同情だけではなかったこと。
「速水…………」
申し訳ないが、可哀想な彼女の事は脳裏から消え失せた。
田口の思考を占めるのはたった一人の男だ。
田口自身にさえ聞こえるか聞こえないか、ましてや北にいる彼に届く筈のない呟きが田口の唇から零れ落ちる。
だが。
「呼んだか?」
非常階段の上から、耳に慣れた声がする。
かつんかつんと金属のステップを鳴らして降りてくる速水を、田口は呆然と見詰めていた。
ぶつん、と切れた電話に田口は溜息を一つ吐いた。
こういうチンケな嫌がらせをする男ではないと田口は解っているが、田口以外の相手にこれをやったら、不審電話以外の何物でもないだろう。
速水がどういうつもりで電話をかけてきて、どういうつもりで切ったのか、田口には想像もつかない。
ただ、速水の心情の吐露を聞かなくて済んだことに、田口は少しだけほっとした。
田口の中でも、速水の問いに対する答えは出ていなかった。
「同情か?」と訊かれたのが癇に障ったのは事実だ。
速水は何処となく不機嫌で、言葉の中にも棘が含まれているのを感じた。「同情なんかされたくねえよ」と言っているようだった。
速水を労わりたいと願ってした全てを否定された気がして、咄嗟にこちらも棘のある一言を返してしまった。
だがしかし、同情ではなかったとしたら、さて何だったのだろうか。
己の奥底にどんな気持ちが眠っていたのだろうか。
「…………お前は、答え出たのか?」
携帯電話の画面は、待ち受けから既に省エネモードに入っている。
届く筈もない問いを、田口は空中に呟いた。
「…………ゴメンなさい…………でも、有難う…………さよなら、先生」
離れていった唇が小さな声で囁く。
田口はそれをただ、困惑と共に黙って見送るしかなかった。
彼女は小さな笑みを浮かべると、そっと踵を返して病棟へ戻っていく。
その影は何処となく薄く、彼女に残された時間の短さを表しているようだった。
愚痴外来の外扉に凭れかかって田口は天を仰いだ。
触れ合った唇を手の甲で強く拭う。
無意識にそうして、田口は苦笑を浮かべた。
「ダメだなぁ」
幾ら煩悶を抱えていても、日々の業務は減ることはなかった。
相変わらず田口は患者の愚痴を聞き届ける毎日である。
まだ二十代の、若い女性だった。
悪性の腫瘍が既に転移していて、彼女に残された時間はもう僅かだと知らされていた。
東城大で出来ることは最早尽きており、転院が決まっていた。
そんな彼女のメンタルケアを依頼されたのが田口で、彼女は残り少ない時間にささやかな恋をした。
彼女が望んだのはキス一つだけだった。
「…………同情だけじゃ無理だよ、速水」
彼女を憐れんだのは確かだ。
だが、キスを容易く受け入れられはしなかった。
唇を拭った手がその証拠だ。
若く愛らしい女性で、不満なんて抱いたら罰が当るだろうに。
彼女の残された時間を思えば、どんな願いだろうと聞き入れるべきだろうに。
それでも、たかがキス一つでも、同情だけでは受け入れられないのだ。
そして思い知らされる。
あの夜にあったのは、同情だけではなかったこと。
「速水…………」
申し訳ないが、可哀想な彼女の事は脳裏から消え失せた。
田口の思考を占めるのはたった一人の男だ。
田口自身にさえ聞こえるか聞こえないか、ましてや北にいる彼に届く筈のない呟きが田口の唇から零れ落ちる。
だが。
「呼んだか?」
非常階段の上から、耳に慣れた声がする。
かつんかつんと金属のステップを鳴らして降りてくる速水を、田口は呆然と見詰めていた。
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