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こちらは、愚痴外来シリーズの妄想文を展開するブログです。 行灯先生最愛、将軍独り勝ち傾向です。 どうぞお立ち寄り下さいませ。
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24680番ヒットの一理さまのリクエストです。
一理さま、ヒットおめでとう&リクエスト有難う御座いました。
24444番ヒットのさけかす様、ゴメンなさい……まだ出来上がりません。


リクは「『プールサイドの危険物』の続き設定」です。
……だからだんだんタイトルが苦しくなるんだってば。
今回密かに苦戦したのは「何を武器にするか」という点です。
前回はビーチボールをわざとらしくぶつけてましたが、今回は何をどうしようかなぁと。
結果は読んでご確認あれ。


ハロウィンがあぁっ!
今の計算だとギリギリです。
ちらほらとネタ出しが始まっているので、いつ被ってくるかと、もうハラハラドキドキ。
先に出したモン勝ち、といきたいところですが……。

大学生協の一角で、またも彦根が割引券を発見した。
いちいちそれを貰ってくる彦根は、実のところ貧乏性なのかもしれない。

「で、行きませんか?」
「えー、こないだ行ったからいいよ」

彦根の誘いに速水はつまらなそうな顔をした。
先日デートで行ったのと同じ遊園地だったのだ。
しかし田口が、

「そういや暫く行ってないな」

そう一言呟くと、

「じゃ行くか」

と、ころりと態度を変えた。
彦根と島津は呆れた顔を隠そうともしなかった。



そんなワケで遊園地である。
男同士で何が楽しいかと実は誰もが思っていたのだが、これが意外と楽しかったりした。
つまりは女の子にすべき気遣いが必要ないという点だ。
乱れる髪も捲れるスカートも、歩みの遅れるヒールも無いのだから。

「よし、次コレ行こうぜ!」
「いいですねっ」
「ったく、子供かお前らは……行灯、行くぞ」
「あ、うん」

ジェットコースターのスピードが、速水の中の何かを刺激したようだった。
最初に渋い顔をした奴が、一番楽しんでいたりする。
手元の園内案内図を覗き込んだ速水と彦根が勇んで歩き出す後ろを、島津が分別くさい溜息を零しながら、田口はノリ逸れたようなぼんやりした顔でついていった。



「あ、風船…………」

足元に一瞬落ちた陰に田口が顔を上げると、風船が一つ空を飛んで行くのが見えた。
子供が手放してしまったのだろう。
きっと泣いているんだろうな、などと思って、田口は風船の行方を何となく目で追った。
風船は風に流されて斜めに、そして重力に逆らって上へと進んでいく。屋外なので、留まる所を知らない。
赤い風船が小さな点になるのを見送って、ふと気付いたら、田口の周囲には誰もいなかった。

「あ、ヤバ…………」

置いて行かれた、らしい。
自分がぼーっとしていたのが悪いのだが、早く合流しないと聊か恥ずかしい事態になる。
この年になって、迷子呼び出し放送は勘弁願いたかった。
ましてあのお調子者の速水や彦根なら、嬉々として放送依頼をするだろう。
田口は取り敢えず、今までの進行方向へ早足で進み始めた。



「参ったな」

結構歩いた筈なのに、前を行く筈の三人の姿は見当たらない。
これは進むべき方向を間違えたか。
一度足を止めて、田口はその場で溜息を吐いた。
園内案内図が手元に無いのは痛かった。地図は先導の速水と彦根が持っていて、田口は後ろにくっついて歩いていただけだったのだ。
方針転換が必要かもしれないと田口は思った。
インフォメーションまで行って、呼び出し放送をかけた方が早いだろう。

「……で、インフォメーションってどっちだろ?」

顔を上げて周囲を見回していると、遊園地のユニフォームを着た若い男性と眼が合った。
田口が幸運に顔を綻ばせると、男性従業員の方から田口に近寄ってきた。

「何かお困りですか?」

遊園地の健全さに相応しい、爽やかな笑顔で彼は尋ねた。
親切な対応に嬉しくなりながら田口は頷いた。

「連れと逸れてしまって……インフォメーションへ行きたいんですが」
「ああ、解りました、ご案内します」

男性従業員は笑って言うと、先に立って歩き出した。
歩いているうちに、メインの通りから外れていくことに田口は気付く。

「あの?」
「近道なんですよ、従業員の抜け道です」
「園内広いですもんね」

男性従業員はニッコリ笑って言った。
やっぱり従業員は園内をよく把握しているのだなぁ、と田口は感心した気持ちで頷いていたのだった。



「お連れって、カノジョですか?」
「いえ、友達なんですけど」

黙って歩くのも気詰まりなのだろう、男性従業員の方から話しかけてきた。
やっぱり遊園地に来る若い男はカノジョ連れなんだろうなぁ、と思いながら田口は答える。

「へぇ。高校の同級生とか?」
「え、高校生に見えます? 大学ですよ」
「そうかぁ…………可愛いから、高校生かと思った」

高校生発言に田口は少し驚いた。だがまあ、笑って否定すれば済む程度。
その次の発言に、田口は目を剥いて本気で驚いた。
思わず足を止めてしまう。

「え、」

歩みの止まった田口に気付いて、男性従業員も足を止めて振り返った。
冗談だよなぁと思いながら先方の表情を窺っている田口に、男性従業員はニヤリと笑った。
その笑みに、背中が震えた。
以前に彦根が言った、「先輩はヘンなのに好かれる」発言が脳裏を過る。
これはマズイ……かもしれない。
田口が半歩退いた、その瞬間だった。

バシュ――っ!

田口の腕が強く引かれると同時に、田口の横を茶色い飛沫が走った。
田口は思わず目を瞑ってしまう。

「冷てっ!」

男性従業員の悲鳴に慌てて眼を開けると、男性従業員は茶色の液体でびしょ濡れの状態だった。作業着に染みが浮かび、鼻先や髪から次々と雫が落ちている。

「酷いなぁ、速水先輩。炭酸振らないで下さいよ」
「悪い悪い」
「速水、こちらに謝るのが先だろ。すいませぇん」

田口の傍から、次々と知った声が沸いて出た。
田口の腕を捕まえているのは速水だ。
彦根が持っているのはコカコーラの細い缶だった。あれを思いっきり振って炭酸を噴出させ、男性従業員にぶつけたらしい。
島津の間延びした謝罪は、ちっとも誠意ありげに聞こえなかった。

「お前何処歩ってたんだよ」
「そうですよ、先輩」
「もう昼だぜ、メシにしようや」
「え、え、えぇ?」

速水、彦根、島津の三人に取り囲まれ、田口は強制的に歩かされてしまう。
展開の速さについていけず、田口は目を白黒させた。
後には、コーラでずぶ濡れになった男性従業員が放置されたのだった。



「だっから! 何でお前はあんな変態を引っ掛けるんだ!」
「引っ掛けたくて引っ掛けたワケじゃない」

カレーのスプーンを突き付けながら、速水は田口を叱り飛ばした。
田口は憮然とするしかない。
引っ掛けたくて引っ掛けたワケでは、断じてないのだ。

「先ぱ~い。迷子になったら、そこから動かない方がいいんですよ」
「知らない人には付いていっちゃいけませんって教わらなかったのか、行灯」

彦根と島津が口々に言うが、どう聞いても子供に対する注意事項だ。

「だって……インフォメーションに連れてってくれるって言ったし」
「どう見ても、人気の無い方に連れ込まれてただろうがっ!」

田口がもごもごと遠慮がちにした反論は、速水に一喝されて終わる。
そう言われると、自分がかなり危ない橋を渡っていた気がしてくる田口だった。
肩を落としてしょげる田口の頭を、手を伸ばした速水が撫でる。
先程までとは打って変った、苦笑交じりの優しい表情をしていた。

「そんな落ち込むなよ。折角来たんだ、ちゃんと守ってやるから午後も楽しもうぜ」
「うん、そうだな……折角来たんだもんな」

くしゃくしゃと髪を掻き回されながら、田口は口元を綻ばせて頷いた。
テーブルの上はほのぼのとした光景だったが、それを横で見ていた島津と彦根は、

「速水先輩、鼻の下伸びてますよね」
「解り易い奴だよなぁ……」

と揃って溜息を吐いたのだった。
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ありがとうございます。
霧島様
こんにちは、一理です。
リクエスト受けていただいてありがとうございました!このような素敵な作品を書いてくださってとても嬉しいです。

風船見ててはぐれるとか行灯先生かわいすぎです!どこの子供ですかと、思わずパソコンの前で突っ込んでしまうくらいツボでした。
危ういところで現れた三人ははぐれた行灯先生を探すため、あちこち駆けずり回ったんだろうなとか考えるとたまらないです。武器の炭酸も素敵でした。相手に向けるまできっとめいっぱい振っておいたんでしょうね。
最後の無自覚に甘い雰囲気を振りまく二人に思わずにやけてしまいました。

素敵なお話を書いてくださって本当にありがとうございました!あまりの嬉しさに、長々と書いてしまってすみませんでした。これからも楽しみにしています。
一理 2009/10/27(Tue)23:05:03 編集
Re:ありがとうございます。
いらっしゃいませ、コメント有難う御座います。
こちらこそキリ番報告とリクエスト有難う御座いました!

将軍は遊園地好きそうな気がするんですよねぇ。あ、でも、運動神経のいい人は乗り物酔いしやすいって言うから、逆にジェットコースターは苦手かも?
ヘロヘロになった将軍を、行灯先生が面倒見る構図でもいいな!

>武器の炭酸めいっぱい振って……
実のところ、振ったのはゲリラです。さりー気に将軍のせいにしてますが。
最初に振ったのがゲリラで、他二人もしっかり手伝ったのかな、多分。

ではではっ。またいつでも遊びにいらして下さいませ。
S.Kirishima 2009/10/28 10:59
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