灯台記念日

11月の企画をスタートします。
題して、「何でもない日万歳企画・30日間連続更新月間」です。


毎日が何かしらの記念日です。特に11月は、「いい●●」と語呂合わせを作り易い為に、一年で最も記念日が多いとか。
そこで記念日ネタで一ヶ月間続けて更新しようという企画です。
……ムボーですかね？　でも大丈夫、ブログには日付指定機能がある！
結果として一ヶ月間連続更新になればいいや、と。
そのっくらいの志の低い企画ですが、よろしくお付き合い下さいませ。
長さは多分短くなります。
あ、キリ番と重なった時は一日二つアップという手を使いますので、キリ番当たった人は遠慮なくご報告＆リクエスト下さいませ。


早速ですが、本日1日の記念日です。

灯台記念日/紅茶の日/計量記念日/川の恵みの日/野沢菜の日/犬の日/いい姿勢の日

寿司の日ってのもあるらしいけど、情報が不確かです。
紅茶の日は昔余所のサイトで拝読した気がするので、今回は止めました。
それでは早速どうぞです。

救命救急センター部長職に就いてすぐ、このままではセンターは回らないということに気付いた。
悪足掻きの手段を探していたところに現れたのが、鼻の利く結城だった。
ロクでもないきっかけで知り合った男とは、結局ロクでもない関係を築くことになるらしい。
几帳面な字で書かれた領収書は、オレンジ一階のデスクの中だ。
敗れ去りつつある理想は、速水の気を憂鬱にさせる。


「ああ、田口先生じゃないの、ちょうどよかった」

「満天」で食事を済ませ、階段を下りて戻る途中に、昔馴染みの名前を聞いて速水は足を止めた。
階段から神経内科病棟に首を伸ばすと、談話スペースに立っている細い後ろ姿が見つかった。

「こんにちは、榎本さん。どうかなさいましたか？」
「ほら、これよ。お勧めのきんつば。食べて食べて」
「仕事中なんですけど……」
「じゃあお昼休みにでも、ね？　本当に美味しいのよ」
「それじゃ頂きますね。有難う御座います」

速水の口元が綻んだ。
新米医師だった頃から「御供え物」の絶えなかった男は、今でも変わらないらしい。
速水に見えるのは田口の背中だけだが、中身も変わっていないのだろう。
患者の声に耳を傾けたいと言った、あの時のまま。

「…………お前はそれでいいよ」

速水は小さく呟いて、階段へ戻った。
いつになくのんびりと階段を下りながら、田口を思う。
揺らがずにそこにあればいい。
そして、変わらぬ行先を照らしてくれ。

「昼行灯じゃなくて灯台かな」

思いついたはいいが、どっしりした灯台の印象と田口の姿がそぐわなくて、速水はついつい笑ってしまったのだった。