ラストです。キリ番でここまで長かったのは初めてですねえ。
錆兎さま、随分とお待たせしました。
そしてまた、キリリク待機中の皆様にもお詫びとお礼申し上げます。
さあ、次だ次!
サイトを更新しております。
将軍と行灯に2本、その他の人々に2本、小ネタが1本。
七夕ものがね~、分類に迷ったけどその他に放り込みました。
錆兎さま、随分とお待たせしました。
そしてまた、キリリク待機中の皆様にもお詫びとお礼申し上げます。
さあ、次だ次!
サイトを更新しております。
将軍と行灯に2本、その他の人々に2本、小ネタが1本。
七夕ものがね~、分類に迷ったけどその他に放り込みました。
愚痴外来の奥の院が、コーヒーの香りに満たされる。
カフェインには若干の中毒性があるというが、だとすれば最早田口は立派なカフェイン中毒だろう。
コーヒーの香りに安らぐ自分もカフェイン中毒の兆候ありか、と速水は内心笑った。
速水の突然の来訪に、田口は心底驚いた様子だった。
コーヒーを一心に淹れるフリで速水を一向に見ようとしないのは、気持ちを落ち着けるためだろうか。
速水は速水で、沈黙の中で心を鎮めようとしていた。
「ん」
「サンキュ」
差し出されたカップを受け取って一言口にすると、田口も一つ頷いた。
鼻先にカップを寄せれば、白い湯気が目に見える。
一口飲んで速水は笑った。
「やっぱりお前のコーヒーが一番美味いな」
「そりゃどうも」
速水の賛辞は特に目新しいワケでもなかったから、田口はさらっと流した。
暫く二人はコーヒーの為に黙り込む。
口を開いたのは田口が先だった。
「お前どうしてここにいるんだ? 仕事か?」
「違えよ」
一番簡単な仕事という理由を速水が否定したので、田口は少しだけ驚いて目を見開いた。
その田口の目を捉えたまま、速水はコーヒーカップをテーブルに戻した。
これから大切な話をしようというのに、コーヒーカップは邪魔にしかならない。
「お前に直接言いたいことがあって来た」
「そう、か」
雰囲気で、あの電話の続きと解ったのだろう。
田口もマグカップをテーブルに戻す。
ちゃんと話を聞こうという姿勢はそういうところに出るのかもしれず、速水は少しだけ嬉しく思った。流石、愚痴外来の責任者だ。
改めて待機されると、却って口にし辛かったが。
「…………誰でもよくなんかなかった」
「え?」
思い切って速水が言えば、やはり戸惑った表情で田口はこちらを見返してきた。
速水は更に言葉を重ねた。
「しんどい時に一番に思い浮かぶのはお前だってことだ。俺は、お前じゃなきゃダメだ」
「速水…………」
「お前はどうだった?」
速水の結論は出た。
そして、田口の答えが知りたかった。
あの夜がただの同情だったのか。ほんのひと時、慰めを提供してくれただけなのか。
それとも、これからもあの優しさを期待していいのか。
田口の答えを待って速水が見詰めていると、田口は小さく息を吐いた。
それから少しだけ笑った。
「さっきさ、キスして欲しいって頼まれた」
「は?」
今度は速水が驚く番だった。話の展開が唐突過ぎる。
呆気に取られている速水にまた小さく笑うと、田口はそのまま話し続けた。
「彼女、癌でもう手の施しようがないんだって。転院前の思い出にキスしてって言われて……迷ってるうちにキスされてた」
「お前なぁ。女からアクション起こされたのかよ」
速水は呆れた声を出した。
これはもう嫉妬とは別で、男として情けない話だと思う。
田口もそれは解っているのだろう、速水の呆れ声に一つ苦笑を浮かべた。
だが、苦笑はすぐに柔らかな笑みに変わる。
あの夜にずっと傍にあった、包み込むような優しい笑みだった。
「いくら据膳でもさ、同情だけじゃキスも出来ないよ、俺は。まして同性に抱かれるなんて」
「それって」
「…………俺も、お前だったからってことかな」
ついっと田口は視線を逸らせた。
横から見る頬が赤く染まっている。
思わず速水はテーブル越しに手を伸ばした。
やはり、コーヒーカップは手放していて正解だ。
手だけでは足りなくて、手を重ねたまま立ち上がってテーブルを回り、田口の隣りに移動した。
田口の隣りに座ると、改めて田口を身体ごと抱き締めた。
「傍にいてくれ」
あの夜と同じ言葉が口を吐いて出た。
だが言葉の重みが違う。
速水が願うのは一晩ではなく、これから先、人生の続く限りの長さだ。
田口は速水の腕の中で身を捩った。
逃げるためではなく、目線を合わせるためだった。
下から見上げるような田口の視線を、速水は受け止めた。
「いるよ」
田口は曇りのない声で言い切った。
その瞬間の喜びをそのままに、速水は田口を抱き締める。
「ちょっ、速水、痛いって」
衝動に任せて抱き締めてしまったので、田口が小さな悲鳴を上げた。
隙間を作らない程度に腕を緩めると、田口は苦笑を浮かべながら速水の顔を覗き込む。
目が合って、田口がそっと瞼を下ろした。
誘われるままにキスをして、コーヒーの香りが残る唇を速水は存分に味わったのだった。
カフェインには若干の中毒性があるというが、だとすれば最早田口は立派なカフェイン中毒だろう。
コーヒーの香りに安らぐ自分もカフェイン中毒の兆候ありか、と速水は内心笑った。
速水の突然の来訪に、田口は心底驚いた様子だった。
コーヒーを一心に淹れるフリで速水を一向に見ようとしないのは、気持ちを落ち着けるためだろうか。
速水は速水で、沈黙の中で心を鎮めようとしていた。
「ん」
「サンキュ」
差し出されたカップを受け取って一言口にすると、田口も一つ頷いた。
鼻先にカップを寄せれば、白い湯気が目に見える。
一口飲んで速水は笑った。
「やっぱりお前のコーヒーが一番美味いな」
「そりゃどうも」
速水の賛辞は特に目新しいワケでもなかったから、田口はさらっと流した。
暫く二人はコーヒーの為に黙り込む。
口を開いたのは田口が先だった。
「お前どうしてここにいるんだ? 仕事か?」
「違えよ」
一番簡単な仕事という理由を速水が否定したので、田口は少しだけ驚いて目を見開いた。
その田口の目を捉えたまま、速水はコーヒーカップをテーブルに戻した。
これから大切な話をしようというのに、コーヒーカップは邪魔にしかならない。
「お前に直接言いたいことがあって来た」
「そう、か」
雰囲気で、あの電話の続きと解ったのだろう。
田口もマグカップをテーブルに戻す。
ちゃんと話を聞こうという姿勢はそういうところに出るのかもしれず、速水は少しだけ嬉しく思った。流石、愚痴外来の責任者だ。
改めて待機されると、却って口にし辛かったが。
「…………誰でもよくなんかなかった」
「え?」
思い切って速水が言えば、やはり戸惑った表情で田口はこちらを見返してきた。
速水は更に言葉を重ねた。
「しんどい時に一番に思い浮かぶのはお前だってことだ。俺は、お前じゃなきゃダメだ」
「速水…………」
「お前はどうだった?」
速水の結論は出た。
そして、田口の答えが知りたかった。
あの夜がただの同情だったのか。ほんのひと時、慰めを提供してくれただけなのか。
それとも、これからもあの優しさを期待していいのか。
田口の答えを待って速水が見詰めていると、田口は小さく息を吐いた。
それから少しだけ笑った。
「さっきさ、キスして欲しいって頼まれた」
「は?」
今度は速水が驚く番だった。話の展開が唐突過ぎる。
呆気に取られている速水にまた小さく笑うと、田口はそのまま話し続けた。
「彼女、癌でもう手の施しようがないんだって。転院前の思い出にキスしてって言われて……迷ってるうちにキスされてた」
「お前なぁ。女からアクション起こされたのかよ」
速水は呆れた声を出した。
これはもう嫉妬とは別で、男として情けない話だと思う。
田口もそれは解っているのだろう、速水の呆れ声に一つ苦笑を浮かべた。
だが、苦笑はすぐに柔らかな笑みに変わる。
あの夜にずっと傍にあった、包み込むような優しい笑みだった。
「いくら据膳でもさ、同情だけじゃキスも出来ないよ、俺は。まして同性に抱かれるなんて」
「それって」
「…………俺も、お前だったからってことかな」
ついっと田口は視線を逸らせた。
横から見る頬が赤く染まっている。
思わず速水はテーブル越しに手を伸ばした。
やはり、コーヒーカップは手放していて正解だ。
手だけでは足りなくて、手を重ねたまま立ち上がってテーブルを回り、田口の隣りに移動した。
田口の隣りに座ると、改めて田口を身体ごと抱き締めた。
「傍にいてくれ」
あの夜と同じ言葉が口を吐いて出た。
だが言葉の重みが違う。
速水が願うのは一晩ではなく、これから先、人生の続く限りの長さだ。
田口は速水の腕の中で身を捩った。
逃げるためではなく、目線を合わせるためだった。
下から見上げるような田口の視線を、速水は受け止めた。
「いるよ」
田口は曇りのない声で言い切った。
その瞬間の喜びをそのままに、速水は田口を抱き締める。
「ちょっ、速水、痛いって」
衝動に任せて抱き締めてしまったので、田口が小さな悲鳴を上げた。
隙間を作らない程度に腕を緩めると、田口は苦笑を浮かべながら速水の顔を覗き込む。
目が合って、田口がそっと瞼を下ろした。
誘われるままにキスをして、コーヒーの香りが残る唇を速水は存分に味わったのだった。
PR
COMMENT
有難う御座います
霧島様。有難う御座いました。
注文の多いキリ番リクエストに応えて頂き有難う御座います。切ないすれ違い→自覚→ハッピーエンドとスヰ-トは大好物ですので、嬉しい限りですw。新しいお話、過去のお話共々これからも、楽しみにしております。
注文の多いキリ番リクエストに応えて頂き有難う御座います。切ないすれ違い→自覚→ハッピーエンドとスヰ-トは大好物ですので、嬉しい限りですw。新しいお話、過去のお話共々これからも、楽しみにしております。
Re:有難う御座います
いらっしゃいませ。
こちらこそ、長々とした話にお付き合い有難う御座いました。
あ、ハッピーエンドでよかったんですね。
霧島も基本ハッピーエンド主義です。
何か微妙に違うよなぁと思いながら書いてたりしたけど、リク下さったご本人がそう仰って下さるならオールオッケーということで。
こちらこそ、今後ともよろしくどうぞご贔屓下さいませ。
こちらこそ、長々とした話にお付き合い有難う御座いました。
あ、ハッピーエンドでよかったんですね。
霧島も基本ハッピーエンド主義です。
何か微妙に違うよなぁと思いながら書いてたりしたけど、リク下さったご本人がそう仰って下さるならオールオッケーということで。
こちらこそ、今後ともよろしくどうぞご贔屓下さいませ。