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こちらは、愚痴外来シリーズの妄想文を展開するブログです。 行灯先生最愛、将軍独り勝ち傾向です。 どうぞお立ち寄り下さいませ。
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片想い企画関係無い、ぶっ飛びパラレルです。
もしくは胡散臭いメルヘン。
どんな話かって一言で表すなら、

「すばしっこさばかり鼻にかけてると、いつか痛い目に遭うわよ」by千里眼 from伝説


……つまりそういう話です。ウチはさり気に将軍の受難率が高い。
5回くらいはかかりそうだなぁ。
あ、でも時間軸は学生時代。
パラレルに耐性のある方はどうぞ覗いてみて下さい。

「速水クンって、いつもそうね。勝手に決めちゃうの。あたしの考えなんてどうでもいいの、それがイヤ」

モテる割に、速水はフラレ体質だ。
麻雀優先だったり剣道優先だったりで、とどのつまり「私の事を考えてくれない」という理由でフラレることが多い。
今回もまあ、そのクチらしかった。
去って行った女にさほどの未練も無いが、やはり何となく腹立たしくなってくるところである。
速水は一人で愚痴り始めた。

「決断力のあるところがいいとか言ってたクセによ、ったく。勝手に決めてるって、誤解だぜ」

いや、決断力云々は別の女だった気もするが。
カノジョは「勝手に決めてあたしの考えを無視する」と主張したが、速水はそんなつもりは全くなかった。
具体的に言うと、今回は生協のジュースだ。
口論が始まったきっかけはそこだった。
生協で間食用にパンかおにぎりを物色していた速水に、カノジョが甘えてジュース奢ってと言い出したのだった。パックジュースなら速水の懐に痛いものでもない、速水は快諾した。
「どれにしようかな?」とカノジョが悩み出すより先に、「これだろ?」と速水はカノジョの気に入りのジュースを選んで、会計を済ませた。
どうやら、これが気に入らなかったらしかった。
速水としては、カノジョの好きな物を解っているつもりでしたことだったのだが、カノジョの主張するところに拠ると、「独り決めして、あたしの意見なんか聞かない」ということらしい。

「女なんか、悩み出したら長いじゃねえか。で、俺が決めれば『あたしの意見聞いて』だぁ?」

いつの間にか、カノジョに対する不平不満が女性全般に対する不満になっている。
そもそも速水は即断即決の、よく言えば決断力のある、悪く言えば短気なタイプだった。
ウダウダと悩むのは時間の無駄だと、切って捨てる男である。

「やってられるかっ!」

吐き捨てると共に蹴った足元の石は見事にすっ飛んで行って、かしんっ、と音を立てて人にぶつかった。

「げっ」
「…………何事?」

思わず速水は口の中で呻いた。
まさに踏んだり蹴ったりだ。何だってあんな道の真ん中を、歩いているんだ。
石をぶつけられた女性は、声にどすを効かせながらゆぅっくり振り返った。
ぱっと見で年齢不詳だった。
速水より上、ということしか解らない。ちょっと上の三十代にも見えるし、うんと上の六十代にも見えるのだ。

「すいませんっ」
「ふぅん…………」

内心の苛立ちを隠して詫びた速水を、女性は上から下までじろじろと眺めた。
背は速水より小さいのに、堂々とした態度である。
それから胸の前で腕を組み、偉そうな表情で口を開いた。

「そんなところをトロトロ歩ってんなよクソったれ、という気分かしら?」
「はっ?!」
「女なんてどいつもこいつも愚図ばっかりだ、ですって? まあ偉そうに」

女性は、速水の心の中を読んだような暴言を口に乗せた。
確かに女性の言う通りだった。いや、そこまで酷いことは思わなかったつもりだが。
速水が唖然としていると、女性はすっと指を伸ばした。
速水の視線が自然と女性の指へ向かう。

「そんなに速いのが凄いのかしら? それでは思い知らせてあげましょう」

女性は中指と親指を打ち鳴らせて、ぱちんと一つ歯切れのいい音を立てた。
途端にすっと速水の視線が下がる。
目に映るのは灰色だけになった。
ひたすら遠く、消失点が見えるほどに灰色の道が延びる。
これはアスファルトの色か。
左右を見れば、鱗の生えた手が見える。自分の意志で動く。
ではこれは、速水自身の手か。
何かを背負っているかのように、身体がやたらと重かった。

(何だよ、コレっ!)

叫んだつもりだったが、声は出なかった。
何か空気が抜けるような音がしただけだった。
頭上がゆっくりと影になった。
首を伸ばすと、巨大な女性が速水の上に屈みこんでいる。足が大木のように太かった。
遠近感がちぐはぐになった目で女性の顔を探すと、先刻まで速水より小さかった女性が、速水の頭上を覆うほどの大きさで笑っていた。
にっこりと赤い唇が弧を描く。
艶のある唇は若々しく蠱惑的だったが、その表情は老齢の狡猾さが滲んでいた。

「まあ、何て可愛らしいカメさんだこと」

女性はとても上品な口調で言った。
小動物を愛でるご婦人の声が、まさにそれだ。
ご丁寧に、化粧品のポーチに入っていたコンパクトのミラーを速水の前にかざしてくれる。
そこに写っていたものを見て、速水は自分の目を疑った。

(ぅそ、だろ…………?)

そう、速水はカメにされてしまったのだ。
速水がいっぱいに目を見開けば、鏡の中のカメも目を丸く見開いている。
だが小動物の目はとても小さくて、見開いても大した大きさにはならなかった。
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