お見合い記念日

早速本日の記念日、参りましょう。

アパート記念日/お見合い記念日

の二つになります。
手元にあるのは記念日の羅列だけなので、どうして今日がお見合い記念日なのだが、すっかり忘れてしまったなぁ。

「へえ、お前に見合い？」

速水の報告に、田口は寧ろ面白そうな顔をした。
対して、見合い話を持ち込まれた当の速水はうんざりした顔をしていた。
折角の休みを仕事絡みで潰されるのだ、機嫌がよくなる筈がない。

「何だよ、妬いてくれないのか」

せめて恋人がヤキモチでも妬いてくれればいいのに、その当の恋人はまるで他人事で面白がっているのだ。
速水は不貞腐れる一方である。
速水が拗ね出したのに気付いて、田口は小さく苦笑を浮かべた。
速水の隣りに座って、小さく頬にキスをした。

「今更妬かないって」
「そこは素直に妬けよ」
「ヤだ。でもさ」

首に回される田口の腕に応えて、速水は田口の胴に腕を回す。
向かい合った体勢で膝に抱き上げると、田口の方から唇へキスをくれた。
何度も何度も啄ばむような短いキスを繰り返す。

「振り袖姿の若い子にヨロめいたりしたら、許さないから」

田口は唇の端を上げてにっと笑う。
強気な我儘と滲む独占欲が可愛くて、ようやっと速水は満足した。
深くキスをして互いの舌を捏ね回した。

「ぁふ…………んっ」

唇から繋がった銀糸が垂れるに任せ、仕上げに軽いキスを田口の瞼へ落とす。
くったりと胸に寄り掛かってくる田口を、速水はきつく抱き締めた。

「お前もホテル来いよ。見合い適当に切り上げるから、ホテルでディナーデートしようぜ」
「……それって非道くないかなぁ？」

速水の提案に田口は少しだけ眉を顰めた。
見合い会場のホテルで、見合い直後に恋人とデート。
確かに余り誉められた行いとは言えないだろう。
しかし見合い自体がいけ好かないのだ、速水の無礼も許されてしかるべきである。
速水は勝手にそう思うことにした。

「いいだろ？」

田口の答えを聞く前に、速水は何度目かのキスを仕掛けた。
田口はハイもイイエも言わなかった。
だが、速水の動きに応える舌と強く速水を抱き締める腕が、そのまま答えになった。