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こちらは、愚痴外来シリーズの妄想文を展開するブログです。 行灯先生最愛、将軍独り勝ち傾向です。 どうぞお立ち寄り下さいませ。
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オリキャラ登場注意報発令中

ついでにも一つ、将軍サイテー注意報も出しときます。
今回はちょっと……ちょっと、アレです。


赤本映画公開になりましたねーー。おめでとう御座います。
しかし霧島は行きません。そもそも映画館に映画を見に行くという習慣がないんです。人生で片手で数えるほどしか映画館に行ったことがないです。
いーもんいーもん、レンタル新作落ちしたら借りるから。


現在絶賛浮気中です。三浦しをんの箱根駅伝小説です。
萌えるよ、コレ。ご多分に洩れず走灰です。
小規模ジャンルはサイト廻りがすーぐ終わっちゃうのが悲しいな。




翌日。
自分でも不思議なくらい、愛実は元気に実習ができた。
友人二人とも大いに笑って喋る。
「おばちゃん」とからかってくる子供たちに「おねえちゃん!」と反論するのも、この三日と変わっていない。
指導医の方が、昨日のことを気にして及び腰なのが可笑しかった。

「おねえちゃん、怒られた?」

すっかり容態の落ち着いた拓真が、遠慮がちに尋ねてきた。
愛実は小さく笑った。
拓真の検査は延長になった。何とか都合をつけて、今日明日中に行うということだ。

「ちょっとだけね」
「…………ゴメンなさい」
「どうして? 拓真くんは悪いことしてないよ」

小さな小さな声で拓真が謝る。
それだけで、愛実は報われた気がした。



すっかり飴玉は溶けたのに、まだ口に入れたままのチュッパチャップスの棒を速水は奥歯で噛み潰した。
愛実の笑顔にどうしようもなく神経が苛立つ。
脳裏に過ぎるのは田口の後姿だった。
昨日、遠くて見えなかった表情は想像で補うしかない。
だがどれほど優しい表情をするかは、速水がよく知っている。
あの顔を他の誰かに見せたのかと、それだけで腹が煮え繰り返ると思った。
味のしなくなった棒を手近なゴミ箱に放り込むと、スチールのゴミ箱はカランといい音を立てた。



「よお。出勤日だったのか」

ノックもせずに不定愁訴外来に現れた速水に、田口はにこやかな挨拶を寄越した。
速水が不定愁訴外来に顔を出すのは、何故か必ず人のいない時間帯だった。外来のない日だけではなく、外来のある日もそうなのだ。
速水独自のカンで人のいない時間帯を避けているのではないかと田口は思っている。
のんびりした田口の笑顔が、今日ばかりは速水の癇に障る。どすんと大きな音を立ててソファに座った。
いつになく乱暴な挙措に、田口の表情が微妙に変わる。

「…………速水? 何かあったのか?」
「あった」

速水は低い声で肯定した。機嫌の悪さが声音に滲み出ている。
田口は眉を顰め、速水をじっと見た。
田口の視線に対抗するように速水も田口を睨み返す。
途端に田口の方がたじろいで、視線を泳がせた。落ちた視線はテーブルに残っていたコーヒーカップを拠り所にする。

「えっと、速水? 俺が何かしたか?」
「ふぅん。どニブの行灯でもそれっくらいは解るんだな」

田口に解るのは、速水の機嫌が悪いこととそれが田口の方に向っているらしいということだけだ。具体的に何がどうまでは解らない。
田口は戦々恐々としながら速水の表情を伺った。
速水は核心を口にする。

「仁科愛実」
「え?」
「昨日、オレンジで失敗をやらかした。ところが今日はすっかり元気ときたモンだ。慰めてやったのはお前だろ?」
「ああ…………?」

速水が選ぶ単語と口調に棘がある。
速水の言葉に頷きながらも、田口は眉間の皺を深くした。
速水は田口を睨みながら、薄笑いを浮かべて言った。

「一体どんな慰め方をしたんだかな。肩なんか抱いちゃってさ。キスの一つでもしてやった? 憧れの『こーへー先生』だもんな、慰めるのも簡単だったろ」

速水のセリフに田口は唖然として……先に手の方が動いた。
飲みかけだったコーヒーカップの中身を、速水にブチ撒けたのだ。
流石の速水も予想外の反撃に、前髪から茶色い雫を滴らせながら瞬きを繰り返す。白衣の肩にも次々と茶色い染みが増えていく。

「それは侮辱だぞ、速水。彼女に対しても、俺に対しても、サイテーの侮辱だ」

田口は静かな声で言った。激したのは一瞬だけで、今の田口は静かに怒っている。
コーヒーカップをテーブルに戻して立ち上がると、田口は速水の横を通り抜けて外来のドアを開けた。

「帰れ。頭を冷やすんだな」

有無を言わせない田口の口調と態度に、速水ものろのろと立ち上がる。
尚も額に落ちてくる茶色い雫を白衣の袖で拭いながら、速水は田口の横をすり抜けた。

「速水」

二、三歩外へ出たところで、田口の声が投げつけられる。
速水は肩越しに振り返った。
田口の表情は無表情に近かった。怒りさえ読み取れない。

「コーヒーが温くてよかったな」

コーヒーが熱くても、田口は速水にぶっかけていただろう。
それぐらい怒ったのだと、田口は言外に告げていた。
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ほろ苦かったです
こんばんは。
シリーズ新作拝読しました。
愛実ちゃんが元気で頑張ってたのは嬉しかったですが、反比例してジェネラルは迷走しているみたいですね。
自分でも酷い事を言っていると分かっていても口を衝いて出てきてしまった言葉に対する田口先生の怒りに冷静さを取り戻すのでしょうか?
今後がとても楽しみです。
田口先生の怒りはとても印象的でした。
普段温厚で大人しい人ほど怒ると恐いと言いますが、まさしくその通りですね。
田口先生も自分のことだけならここまで怒ることもなかったのかなと。
人のために怒りを表現する田口先生はやっぱりやさしい人だなと再認識しました。
次回も期待しています。
長文失礼たしました。
シラユキ 2009/03/08(Sun)23:06:07 編集
Re:ほろ苦かったです
いらっしゃいませ&コメント有難う御座います。
あ……あんまり真剣にコメント頂けると、恐縮しますデス。
書いてる当人は「コーヒーぶっかけたらカッコいいかな~」レベルなのですよ、実は。その場の妄想とノリだけってのが見え見えな発言ですな。
案外、行灯先生は鉄火な性格してると思いますね。青本やら赤本やらで啖呵切ることもあったし……ただ後悔するのも早そうだ。「だああ、言っちゃったよっ」みたいな。
やっとこ目途が立ってきたので、サクサクっと完結させたいですね。
もちっとお付き合い下さいませ。
S.Kirishima 2009/03/09 13:03
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