遍路と言えば。

カテゴリーを追加しました。
もぉホントに単発。これ以上どうしようっていうような代物をブチ込むカテゴリです。
ホントはバレンタイン誤解編とかホワイトデーパイ投げとかも一発芸に入るのかもしれんが……長さ的にいいかなとか。


電子猟犬が遍路遍路と言う度に、霧島には脳裏を過るものがあります。
栗/山千/明のデビュー映画です。
実はこの話、霧島の好みのツボです。映画としてはそう怖くない（当時リング映画真っ盛りでしたので）のですが、民俗学的Jホラーってかなり好きなのだ。
そんなわけで、今回の出演者は行灯、火喰い鳥、電子猟犬と気のいいタマでございます。

「ほぉう……そんなにお遍路行きたいか、タマ？」
「イヤですよっ」

警察官というよりヤクザさんに近い迫力で、加納は玉村に詰め寄った。
扇風機のように玉村は首を横に振る。
あくまで他人事の……不定愁訴外来を占領されていることは、この際別だ……田口は、のんびりコーヒーを啜りながらその様子を見ていた。
そうしてふと思い出す。

「逆打ちに遭わないといいですね」
「逆打ち？　田口センセ、何ソレ？」

地獄耳の白鳥がすぐに反応した。
触覚を思わせる前髪もぴょこんと反応した気がする。
田口は白鳥の方に顔だけ向けて説明した。

「え？　四国遍路の札所を88番目から逆さまに、死んだ人の年の数だけ回ると、死んだ人が甦るっていうんですけど……そーゆう話、ありませんでしたっけ？」

田口が言うと、白鳥は溜息を吐いた。
心底他人をバカにした表情だ。
田口はその顔だけでむかっ腹が立ったが、これくらいで怒っていては白鳥と付き合っていられない。正直、付き合いたくもないが。

「田口センセ、それフィクションでしょ。小説か何かじゃないの？」
「そ、そうでしたっけ？」
「俺も聞いたことないな」

加納も、玉村イジメの手を止めて首を横に振った。
キャリア官僚に揃って言われると、勘違いだった気がしてくる田口である。

「あーよかった。そんなのに遭うのはゴメンですよ」
「おっ、やっぱり行く気満々だな」
「イヤですっ！！」

玉村がほっとした顔で言うと、すかさず加納は口の端を吊り上げて悪人笑いを浮かべた。
つくづく、人の好い笑顔というのに縁のない男である。
悲鳴じみた玉村の声を聞き流しながら、田口は再度コーヒーを啜った。