パラレル注意報発令中
キリリクも切れたので、早速今月の企画をスタートします。題して、
「七夕こじつけ企画・パラレル月間R」
です。
RはリターンズのRか、リベンジのRか……。
4月に出しそびれたパラレルが、上のようなタイトルの代物なので、七夕=星=天体=月、というこじつけでもって7月にお披露目となりました。
この話自体は5回くらいの短めな話です。
あ、状況説明が要ったな。
赤本設定、カタストロフィシーンです。
これから暑くなろうって時期に冬を書くのは、ちょっとシンドイ……。
サイトの方、更新しています。
ホワイトデー話と、一発芸強化週間ものを再録しました。
長さは数でフォロー、出来るのか。
昨日の"仕事中の妄想"。あちら様やこちら様のマネっこです。
一言で説明すれば「島津と田口で『慟哭』ごっこ」。
これ以上言うと、ネタとして使えなくなるから出し惜しみ……。
そのうちやっちゃうぞっと。
キリリクも切れたので、早速今月の企画をスタートします。題して、
「七夕こじつけ企画・パラレル月間R」
です。
RはリターンズのRか、リベンジのRか……。
4月に出しそびれたパラレルが、上のようなタイトルの代物なので、七夕=星=天体=月、というこじつけでもって7月にお披露目となりました。
この話自体は5回くらいの短めな話です。
あ、状況説明が要ったな。
赤本設定、カタストロフィシーンです。
これから暑くなろうって時期に冬を書くのは、ちょっとシンドイ……。
サイトの方、更新しています。
ホワイトデー話と、一発芸強化週間ものを再録しました。
長さは数でフォロー、出来るのか。
昨日の"仕事中の妄想"。あちら様やこちら様のマネっこです。
一言で説明すれば「島津と田口で『慟哭』ごっこ」。
これ以上言うと、ネタとして使えなくなるから出し惜しみ……。
そのうちやっちゃうぞっと。
冬の月は遮る雲も少なく、白い光を放つ。周辺のスペクトルまで仄かに見える。
当直の暇に外の空気を吸いにオレンジの屋上に上がった速水は、幽かな歌声に気付いた。
声の主を探せば、シャツに白衣を纏っただけの田口が、非常階段の途中に佇んで空を見上げている。
歌は、田口から零れていた。
「行灯。今日は何だ?」
「"MOON RIVER"」
田口は短く答えて、また歌を口ずさんだ。
虹の終り、幼友達、ムーンリバーと私。
田口が歌い終わるのを待って、速水は小さく笑った。
「相変わらずだな、東城大のかぐや姫は」
「古い渾名を持ち出すなよ……」
遠目だが、田口が額を押さえて項垂れるのが解る。
田口の顰め面を想像して速水はまた笑った。
知る人ぞ知る渾名だ、「東城大のかぐや姫」。付けたのは彦根だったか。
別に、かぐや姫のようにモテまくったとか、求婚者に無理難題をふっかけたとかいう意味ではない。
田口が月を見ながら歌を歌っていることが多かったせいだ。
歌ばかりではなく詩だったり、和歌だったり漢詩だったりすることもあった。日本語英語中国語どころか、イタリア語やスペイン語だったりする時もあった。そして、必ず「月」の単語が入っていた。
そんなことから、月を見て嘆くかぐや姫を連想したらしい。
田口は当然ながら「何で姫なんだ」と嫌がったが、速水は意外に似合っていると思っていた。浮世離れした田口の雰囲気は、月の世界の住人にしっくりとくる。
何度か想いを告げようとして、田口の持つ空気に挫折したこともあったが。
そういう点でも、まさに求婚者につれない「かぐや姫」だった。
「お前は当直?」
「ああ。外来室にいるってことは、お前は残業か?」
「うん、そう。書類仕事が増えてイヤになる……」
月世界の住人は、現実的なことを問うてきた。
速水がからかい混じりに尋ね返せば、うんざりした声で田口は答えた。
学生時代からちっとも変らない怠け者に速水は笑った。
そして、崩壊の瞬間が訪れる。
「取材のヘリは飛ぶのに、ドクターヘリはどうして桜宮の空を飛ばないんだっ!」
速水は虚空に向かって吼えた。
ヘリが飛べば。現場へ行ければ。もう幾つか、救える命がある筈なのに。
速水はこのオレンジで、手を拱いて待っているしか出来ないのだ。
そんな速水を嘲笑うように風が音を立てる。白衣を煽る。
大きく一つ、二つ。
「え…………?」
速水の視界が暗くなった。視界に白衣が広がる。
視線の先には、動きやすさを重視したジョギングシューズの爪先。
見上げた世界を遮断するように、空に立つ人がいる。
「速水、どうして…………」
田口は呆気に取られた顔で速水を見下ろしていた。
下で指揮を執っている筈の速水がこの場にいることが疑問らしい。
疑問なのは速水の方だった。
「お前こそ、その姿…………浮かんで、る?」
冬の冴え凍る月のように白く光る髪。
春の朧に滲む月のように、黄色く淡い色の瞳。
額の中央に真向き月の赤い痣が浮かぶ。
田口の白衣が風を孕んで大きく膨らむのは、空にいるからだ。
今この時だけ、速水は切迫した現実のことを忘れた。
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