パラレル注意報発令中
好き勝手書いてるハズなのに、何か意外と苦戦してる気がする。
変なところでシリアスだからなかな?
連載やキリ番待機中の時の「仕事中の妄想」は大概それ関係です。
どんな話にしようかなーから始まって、こういう展開は上手くいくかなーとか、このセンテンスを入れてみようかなーとか、割と具体的です。
なんで、妄想というより現実的で事務的。
連載だって最後の一文は出来てるのだが、そこまでがなかなか、ね。
好き勝手書いてるハズなのに、何か意外と苦戦してる気がする。
変なところでシリアスだからなかな?
連載やキリ番待機中の時の「仕事中の妄想」は大概それ関係です。
どんな話にしようかなーから始まって、こういう展開は上手くいくかなーとか、このセンテンスを入れてみようかなーとか、割と具体的です。
なんで、妄想というより現実的で事務的。
連載だって最後の一文は出来てるのだが、そこまでがなかなか、ね。
「久し振りだね」
「まったくだよ。しかもこういう成り行きなんて、あんた何やってんの?」
ナルミの、相変わらず傍若無人な物言いに、田口はくすりと笑った。
仮にも月帝の後継者である田口をあんた呼ばわりするのは、従弟である彼だけだ。
「僕は先触れだ。貴方のしたことは月界の理に触れた。今、月界で裁きが行われているだろうけど、その前にまず貴方の能力を封じて、魂に対する干渉を止める」
「いいよ」
田口はあっさり頷いた。
救急車は到着した。あとは速水に任せておけば、心配ない。
ナルミが一つ頷いて口の中で何事か唱えると、田口の髪が黒く戻った。瞳も同じく黒く変わり、額の痣が消える。
軽い音を立てて、田口はオレンジ新棟の屋上に降り立った。今度こそ、足が地に付いている。
風が感じられないのが少し残念だった。
「何年振りだっけ?」
「ざっと400年ってとこじゃないの」
ナルミの言う「裁き」が下るまでには少々時間があるようだった。
田口はその暇を、ナルミとの雑談で埋めることにする。
「そんなになるかな」
400年前を田口は思い出す。
月の住人には大した長さではないが、何度も生まれ変わっている田口には大分昔の話に思えた。
「天の碁盤を引っ繰り返して月帝を怒らせたなんて、あんたが最初で最後だろうね」
ナルミが呆れた声と共に、田口が地上に降りる原因になった出来事を口にする。
田口は苦笑を浮かべるしかなかった。
天の碁盤はただの遊戯盤ではない。田口が碁盤を引っ繰り返した時、地上には天災が続発した。その罪を償うために田口は地上に追放されたのだ。
「もう100年大人しくしてればよかったのに」
「そうは言うけどな、ナルミ」
「聞かない。大体あんたは人間に肩入れし過ぎるんだ。60年前にだって、軍医になんかなった挙句、戦場で流れ弾喰らって死んだじゃないか」
「……知っていたのか」
「兄さんが気にしていたんだよ」
60年前と言えば、大戦の真っ最中だった。
人を殺す兵士にはなりたくなくて、せめて人を助けたくて、軍医になって戦場へ行った。そして戦場で死んだのだ。
外見は当たり前の中年男だが、田口の中には400年分の出会いと別れが積もっている。
ナルミの拗ねたような、子供っぽい口調に田口は頬を緩めた。
嫌み交じりのセリフの中にも、田口を気にかけていてくれたことが解る。
「従兄どのは元気かな?」
「変わらないよ。あんたも知ってるだろ、月に病気というのは無い」
ナルミの兄なら、やはり田口にとっては従兄筋に当たる。
彼の人の消息を尋ねれば、ナルミは寧ろ素っ気ない口調で答えた。
だが、ナルミが兄を尊敬し慕っていることを田口はよく知っていた。
ひょっとしたら、ナルミは月帝よりも兄に敬意を払っているかもしれない。
「俺が廃嫡されれば、きっと従兄どのが太子に就くな」
あまり考えず田口は口にしたが、ナルミは一瞬表情に影を落とした。
田口を見下ろしたまま言う。
「兄さんが至高の位に就くのは悪くないけど、きっと兄さんは喜ばないよ」
ナルミの言葉に、田口は従兄の高潔な人柄を思い出す。
彼なら確かに、自分が至高の位に就くことを喜ぶような、浅ましい真似はしないだろう。
「ああ、来たみたいだ」
ナルミが天を見上げ呟く。
能力を封じられた田口には、最初の気配を感じることは出来なかった。
ナルミの声に空を見て、初めて下りてくる光に気付く。
オレンジ新棟の屋上を隅々まで照らし、ヘリポート用のラインが逆に影となる。
「継の君…………」
屋上に降り立った人影は、田口の顔を見て声を詰まらせる。
彼とも400年ぶりだ。
「久し振りだね、キリウ」
柔らかく微笑んだ田口に、従兄どのはますます顔を歪めた。
「まったくだよ。しかもこういう成り行きなんて、あんた何やってんの?」
ナルミの、相変わらず傍若無人な物言いに、田口はくすりと笑った。
仮にも月帝の後継者である田口をあんた呼ばわりするのは、従弟である彼だけだ。
「僕は先触れだ。貴方のしたことは月界の理に触れた。今、月界で裁きが行われているだろうけど、その前にまず貴方の能力を封じて、魂に対する干渉を止める」
「いいよ」
田口はあっさり頷いた。
救急車は到着した。あとは速水に任せておけば、心配ない。
ナルミが一つ頷いて口の中で何事か唱えると、田口の髪が黒く戻った。瞳も同じく黒く変わり、額の痣が消える。
軽い音を立てて、田口はオレンジ新棟の屋上に降り立った。今度こそ、足が地に付いている。
風が感じられないのが少し残念だった。
「何年振りだっけ?」
「ざっと400年ってとこじゃないの」
ナルミの言う「裁き」が下るまでには少々時間があるようだった。
田口はその暇を、ナルミとの雑談で埋めることにする。
「そんなになるかな」
400年前を田口は思い出す。
月の住人には大した長さではないが、何度も生まれ変わっている田口には大分昔の話に思えた。
「天の碁盤を引っ繰り返して月帝を怒らせたなんて、あんたが最初で最後だろうね」
ナルミが呆れた声と共に、田口が地上に降りる原因になった出来事を口にする。
田口は苦笑を浮かべるしかなかった。
天の碁盤はただの遊戯盤ではない。田口が碁盤を引っ繰り返した時、地上には天災が続発した。その罪を償うために田口は地上に追放されたのだ。
「もう100年大人しくしてればよかったのに」
「そうは言うけどな、ナルミ」
「聞かない。大体あんたは人間に肩入れし過ぎるんだ。60年前にだって、軍医になんかなった挙句、戦場で流れ弾喰らって死んだじゃないか」
「……知っていたのか」
「兄さんが気にしていたんだよ」
60年前と言えば、大戦の真っ最中だった。
人を殺す兵士にはなりたくなくて、せめて人を助けたくて、軍医になって戦場へ行った。そして戦場で死んだのだ。
外見は当たり前の中年男だが、田口の中には400年分の出会いと別れが積もっている。
ナルミの拗ねたような、子供っぽい口調に田口は頬を緩めた。
嫌み交じりのセリフの中にも、田口を気にかけていてくれたことが解る。
「従兄どのは元気かな?」
「変わらないよ。あんたも知ってるだろ、月に病気というのは無い」
ナルミの兄なら、やはり田口にとっては従兄筋に当たる。
彼の人の消息を尋ねれば、ナルミは寧ろ素っ気ない口調で答えた。
だが、ナルミが兄を尊敬し慕っていることを田口はよく知っていた。
ひょっとしたら、ナルミは月帝よりも兄に敬意を払っているかもしれない。
「俺が廃嫡されれば、きっと従兄どのが太子に就くな」
あまり考えず田口は口にしたが、ナルミは一瞬表情に影を落とした。
田口を見下ろしたまま言う。
「兄さんが至高の位に就くのは悪くないけど、きっと兄さんは喜ばないよ」
ナルミの言葉に、田口は従兄の高潔な人柄を思い出す。
彼なら確かに、自分が至高の位に就くことを喜ぶような、浅ましい真似はしないだろう。
「ああ、来たみたいだ」
ナルミが天を見上げ呟く。
能力を封じられた田口には、最初の気配を感じることは出来なかった。
ナルミの声に空を見て、初めて下りてくる光に気付く。
オレンジ新棟の屋上を隅々まで照らし、ヘリポート用のラインが逆に影となる。
「継の君…………」
屋上に降り立った人影は、田口の顔を見て声を詰まらせる。
彼とも400年ぶりだ。
「久し振りだね、キリウ」
柔らかく微笑んだ田口に、従兄どのはますます顔を歪めた。
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