自称「記念日を尊重するサイト」としては、やっぱり参加したい7月7日。
その他、川の日やらサマーバレンタインやら、7月7日は記念日が多い。
正直、既に遠恋の二人が再会するSSを読ませて頂いたし、自分でも似たようなの書いたので、不参加でもいいかなぁと思っていたのですが。
思いついた小ネタを廃棄するのも勿体なくて、小ネタ3つ合わせて1本! という荒技を駆使してみようと思い立ちました。
喜(怒)哀楽、過去現在未来、と盛沢山構成……とか、言ってみたり。
それではどうぞです。
後記:書いてる途中で一回消えました……悲しい。
その他、川の日やらサマーバレンタインやら、7月7日は記念日が多い。
正直、既に遠恋の二人が再会するSSを読ませて頂いたし、自分でも似たようなの書いたので、不参加でもいいかなぁと思っていたのですが。
思いついた小ネタを廃棄するのも勿体なくて、小ネタ3つ合わせて1本! という荒技を駆使してみようと思い立ちました。
喜(怒)哀楽、過去現在未来、と盛沢山構成……とか、言ってみたり。
それではどうぞです。
後記:書いてる途中で一回消えました……悲しい。
「やっぱりコレでしょう」
スーパーで来客サービスに貰った短冊を手に暫し考え込んでいた彦根だったが、徐に書き上げたのは「世界征服」の文字だった。
実現すれば、傍迷惑な願い事だ。
田口は呆れた溜息を吐いた。
「小学校のクラスに一人はいたよな、こういうヤツ」
「じゃあ田口先輩は何て書くんですか?」
言われて考えてみたが、田口の脳裏に浮かぶのは「家内安全」「無病息災」「無事故無違反」といったものばかり。
地味だ。極めて地味である。
「ボンヤリ行灯らしいな。こんなのどうよ」
笑って速水が書き上げた短冊には「一攫千金」の文字が踊る。俗欲まみれだ。
田口はまたまた呆れて溜息を吐いた。
「お前さぁ、『必勝祈願』とかじゃないの?」
「ああ、大会近かったな。いいよ、勝ちも負けも実力のうち、神頼みはしねーよ」
「おお、カッコいい~~っ」
速水の発言に彦根がわざとらしい歓声を上げ、田口もパチパチと手を鳴らした。
そんなノリの三人に、島津は鼻を鳴らして言った。
「お説ご立派だが、どーしても神頼みしたくなる日が来るぞ。特に速水と田口」
「「へっ?」」
顔を見合せる速水と田口に、島津は自分が書いた短冊を突き付けた。島津らしい太く堂々とした書体で書かれていたのは、「国試突破」の文字。
数年先を思ってうんざりした顔をする速水と田口を余所に、彦根が声を上げて笑った。
「どうぞ。田口先生も何か書かれては如何かしら?」
そう言って、藤原看護師は赤い短冊を田口に手渡した。
短冊と言っても、折り紙を二つに切って糸を通す穴を開けただけの、手作り感溢れるものだった。
小児科病棟の七夕飾り制作を、猫田小児科看護師長は事もあろうに藤原看護師に依頼したのだ。病院内で一番手が空いていそうな部署だから、という理由で。
そして藤原看護師は見事に受けて立った。
チェーン飾りや貝殻、網飾りなどを作ったついでに、短冊も作ったのである。
「願い事、か」
赤い短冊をひらりと翻して、田口は苦く笑った。
願いなら何時だって胸の底に燻っている。
七夕に重ねるのは二人のこと、赤い短冊で連想するのは彼のこと。
逢いたい、と。
書いても叶わない願いなんて、口に出すことも出来ない。
くしゃりと握り潰した短冊は悲しい姿になってしまった。
「星が見えないな」
ふと、速水が言った。
今日に限ってどうしてそんなことを気にするのかと田口は怪訝に思ったが、すぐに今日の日付に思い当たる。
7月7日、七夕だった。
雨こそ降っていないものの雲が厚い。
「旧暦なら8月になるから、晴れの日も多いんだろうけど」
「織姫と彦星も切ないよなぁ」
窓辺に立つ速水の隣に立つと、すぐに速水の手が田口の肩を抱く。
速水の長身に頭を寄り掛からせると、速水は田口の耳を擽り遊ぶように髪を梳いた。
互いの脳裏に浮かぶのは、去年と一昨年とその前の7月7日だ。
「今年はお前と一緒にいられる」
「うん」
目が合えば自然と重なる唇。互いを啄ばみながら何度も重ねた。
いつの間にか腕の中にしっかり抱かれる形になって、田口は速水を見上げながら笑った。
「知ってるか、速水? 七夕の日が曇りなのは、地上の人間に逢瀬を覗き見されたくないからなんだってさ」
本来の七夕伝説では、晴れ以外は不可だ。だが、実際7月7日は梅雨時で晴れる方が珍しい。
だからそんな、新しい伝説が出来上がっていったのかもしれない。
「なるほど、その気持ちは解るな」
田口の言葉に頷いて、速水は腕の中の恋人を見下ろした。
熱っぽい瞳と柔らかな笑顔、抱かれる時の切ない表情と踊る肢体、それ以外のどんな姿も他の誰かに見せたくはない。
もう一度、今度は深く唇を重ねた。舌を探り合い唾液を流し込み、快楽の入口を叩く。
「ん、んぁっ、ぅん…………っ」
色が滲む声。速水の理性を芯から揺さぶってくる。
田口の腰を片手で抱いたまま速水は窓のカーテンを引いた。
たとえ星にだって、こんな田口を人には見せたくない。
スーパーで来客サービスに貰った短冊を手に暫し考え込んでいた彦根だったが、徐に書き上げたのは「世界征服」の文字だった。
実現すれば、傍迷惑な願い事だ。
田口は呆れた溜息を吐いた。
「小学校のクラスに一人はいたよな、こういうヤツ」
「じゃあ田口先輩は何て書くんですか?」
言われて考えてみたが、田口の脳裏に浮かぶのは「家内安全」「無病息災」「無事故無違反」といったものばかり。
地味だ。極めて地味である。
「ボンヤリ行灯らしいな。こんなのどうよ」
笑って速水が書き上げた短冊には「一攫千金」の文字が踊る。俗欲まみれだ。
田口はまたまた呆れて溜息を吐いた。
「お前さぁ、『必勝祈願』とかじゃないの?」
「ああ、大会近かったな。いいよ、勝ちも負けも実力のうち、神頼みはしねーよ」
「おお、カッコいい~~っ」
速水の発言に彦根がわざとらしい歓声を上げ、田口もパチパチと手を鳴らした。
そんなノリの三人に、島津は鼻を鳴らして言った。
「お説ご立派だが、どーしても神頼みしたくなる日が来るぞ。特に速水と田口」
「「へっ?」」
顔を見合せる速水と田口に、島津は自分が書いた短冊を突き付けた。島津らしい太く堂々とした書体で書かれていたのは、「国試突破」の文字。
数年先を思ってうんざりした顔をする速水と田口を余所に、彦根が声を上げて笑った。
「どうぞ。田口先生も何か書かれては如何かしら?」
そう言って、藤原看護師は赤い短冊を田口に手渡した。
短冊と言っても、折り紙を二つに切って糸を通す穴を開けただけの、手作り感溢れるものだった。
小児科病棟の七夕飾り制作を、猫田小児科看護師長は事もあろうに藤原看護師に依頼したのだ。病院内で一番手が空いていそうな部署だから、という理由で。
そして藤原看護師は見事に受けて立った。
チェーン飾りや貝殻、網飾りなどを作ったついでに、短冊も作ったのである。
「願い事、か」
赤い短冊をひらりと翻して、田口は苦く笑った。
願いなら何時だって胸の底に燻っている。
七夕に重ねるのは二人のこと、赤い短冊で連想するのは彼のこと。
逢いたい、と。
書いても叶わない願いなんて、口に出すことも出来ない。
くしゃりと握り潰した短冊は悲しい姿になってしまった。
「星が見えないな」
ふと、速水が言った。
今日に限ってどうしてそんなことを気にするのかと田口は怪訝に思ったが、すぐに今日の日付に思い当たる。
7月7日、七夕だった。
雨こそ降っていないものの雲が厚い。
「旧暦なら8月になるから、晴れの日も多いんだろうけど」
「織姫と彦星も切ないよなぁ」
窓辺に立つ速水の隣に立つと、すぐに速水の手が田口の肩を抱く。
速水の長身に頭を寄り掛からせると、速水は田口の耳を擽り遊ぶように髪を梳いた。
互いの脳裏に浮かぶのは、去年と一昨年とその前の7月7日だ。
「今年はお前と一緒にいられる」
「うん」
目が合えば自然と重なる唇。互いを啄ばみながら何度も重ねた。
いつの間にか腕の中にしっかり抱かれる形になって、田口は速水を見上げながら笑った。
「知ってるか、速水? 七夕の日が曇りなのは、地上の人間に逢瀬を覗き見されたくないからなんだってさ」
本来の七夕伝説では、晴れ以外は不可だ。だが、実際7月7日は梅雨時で晴れる方が珍しい。
だからそんな、新しい伝説が出来上がっていったのかもしれない。
「なるほど、その気持ちは解るな」
田口の言葉に頷いて、速水は腕の中の恋人を見下ろした。
熱っぽい瞳と柔らかな笑顔、抱かれる時の切ない表情と踊る肢体、それ以外のどんな姿も他の誰かに見せたくはない。
もう一度、今度は深く唇を重ねた。舌を探り合い唾液を流し込み、快楽の入口を叩く。
「ん、んぁっ、ぅん…………っ」
色が滲む声。速水の理性を芯から揺さぶってくる。
田口の腰を片手で抱いたまま速水は窓のカーテンを引いた。
たとえ星にだって、こんな田口を人には見せたくない。
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