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こちらは、愚痴外来シリーズの妄想文を展開するブログです。 行灯先生最愛、将軍独り勝ち傾向です。 どうぞお立ち寄り下さいませ。
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12345番ヒットのさんかく様からのリクエストです。
さんかく様、キリ番ヒットおめでとう&リクエスト有難う。


さてリク内容は「Mr.パーフェクトの手術に見惚れる行灯先生に嫉妬する将軍」という話。
このために黄本を読み返しました。
血の匂いにひっくり返りはしないものの、手術後にヘタレ気味なのは変わってないぞ、先生。


後記:えっらい甘く終わったんですれども。ちょっとビックリだわ。


ノックもせずに愚痴外来に入っていくと、奥の院にあるソファで田口が身を投げ出して寝転がっていた。うつ伏せで、爪先がソファからはみ出している。
サボリの昼寝中、という雰囲気ではなく、疲れ切った様子だ。
速水はからかい混じりの声をかけた。

「おーい、生きてるかぁ?」
「死にそー」

田口は身動きしないまま応じた。うつ伏せのままなので、もごもごとくぐもった声だ。
体力と根性のない田口がへたばっているのはさして珍しくもないが、ここまで疲弊するのは滅多にない。田口は怠け者でもあるので、手の抜き加減を解っている筈なのだ。
速水は空いている向かい側のソファに腰をかけた。

「何だよ、イヤにへたばってるじゃないか。血でも見たのか?」
「…………半分正解」
「半分?」

田口の返答に速水は首を傾げた。
そこでようやっと田口は起き上がる。ソファに座り直して、頭痛を押さえるように少しだけじっとした。

「桐生先生の、バチスタ手術を見学したんだ」
「へえ。金輪際近寄らないと誓った手術室に、足を踏み入れたワケか」
「ああ、15年ぶりだ」
「それも凄いな」

田口が手術との訣別を宣言した瞬間を速水は知っている。
15年手術室と無縁状態だなんて、速水には到底考えられない出来事だ。
その上、15年ぶりのオペ見学がバチスタとは。

「今日のバチスタって、あれだよな? 何とかって国の少年兵のヤツ。報道陣がやたら来てたけど」
「ああ。黒崎教授が嬉々として対応してたよ」

黒崎教授の目立ちたがりはよく知られたところだ。
田口は苦笑を浮かべているが、いささか黒崎教授が煙たい速水は、苦虫をは噛み潰したような顔になってしまった。

「で、半分ってのは?」
「血は大したことなかったんだ。出血量も少なかったし、桐生先生の手並みは見事だった。だけど、再鼓動を待つ時の緊張感がキツくって……」

田口の言葉に、速水はバチスタ手術の術式を思い浮かべた。
心臓手術に使用される人工心肺は離脱時が最も神経を使うのだったか。
見学の田口がこれほど疲弊しているのだから、かなりの緊張を伴うのだろうと速水は朧げながら察する。

「そんなにキツかったのか」
「ああ。でも、桐生先生は流石だな」

疲れ切った田口を慰めるつもりで速水は口にした言葉に、田口は一つ頷いてから、小さな笑みを浮かべた。

「俺はホント、あの緊張感で足が震えたって言うのに。桐生先生は再鼓動のタイミングをじっと待っていた。冷静で、落ち着いていたよ」
「そう、か」
「手術の方も芸術的なくらい、本当に見事だったんだ。それなのに何で術死が…………」

不自然に途切れた速水の返事に、田口は気付かなかったようだ。
田口が呟いた不穏なセリフの方は、今度は速水が気付かない。
速水の脳内では田口が桐生を褒めた、その言葉が回っている。
出血量が少ない、芸術的なほど見事な手術。
再鼓動を待つ緊張の中での、冷静で落ち着いた態度。
他の誰かが言ったなら、そりゃ凄い、で速水も済んだ。
だが田口が……他の誰でもない、速水の恋人である田口が、同じ外科医を褒めたのが神経に障った。

「どうせ俺は『血まみれ将軍』だからな」

我ながら僻みったらしいことを口にしていると思う。
白衣に飛んだ血から目を逸らす田口を知っているから、今日ばかりはその渾名が忌わしくてならなかった。
速水の声に田口は弾かれたように顔を上げ、まじまじと速水の顔を見た。
そうやって穴の開くほど見られると、自分が僻んだことを指摘されているようで、速水は顔を逸らした。

「……もしかして速水、妬いた? 俺が桐生先生を褒めたから?」

小さく微笑んで田口は囁いた。
速水としてはここで頷くことは出来なかった。顔を逸らせて目を合わせないようにするだけだ。
意固地な速水をよく知っている田口は、ソファから立ち上がるとテーブルを回って速水の隣にやってきた。
余所を向いてしまった速水の頬を撫でて、

「はーやーみ。こっち向けって」

そう、子供のような口調で促した。
その声音がちょっと可愛いと思ってしまう時点で、速水は負けている。
速水が視線を合わせると、田口はにっこり笑って速水を見上げた。

「お前が桐生先生に妬く必要なんかないだろ? お前が血まみれなのは当たり前、お前の患者は血まみれで搬送されてくるんだから。お前と桐生先生じゃ、活躍する舞台が全然違うんだ。シンクロの金メダリストと競泳の金メダリストと、どっちが凄いって決められる?」
「お前、何もそんな子供みたいな譬えを……」
「解り易いだろ」

簡単に説き伏せられるのは嫌で口を挟んでみた速水だったが、田口にはあっさり笑って流された。

「それに、俺が好きなのは桐生先生じゃなくて速水だよ」

そう言って、田口は速水の口の端に小さくキスをくれる。
速水は眉間に皺を寄せた。
この会話のパターンは覚えがある。

「お前、そう言っとけば俺の機嫌が直ると思ってるだろう?」
「あれ、直らない? じゃあもう一回。速水が好きだよ」

もう一度囁いて、今度は頬にキスをくれた。

「機嫌直った?」
「まぁだ」
「まだ?」
「うん、まだ」

機嫌が直ってない、というのは嘘だ。
田口の思惑通りというのが多少癪ではあるが、田口の言葉とキスで速水の機嫌なんてとっくに直っている。
ただ、田口からくれるキスを終わりにするのが惜しいだけ。
そんな速水を田口の方も解っているのか、笑顔で機嫌が悪いと嘘を吐く速水に怒り出すこともない。
そのまま二人は、くすくす笑いながら互いに戯れたのだった。
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