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こちらは、愚痴外来シリーズの妄想文を展開するブログです。 行灯先生最愛、将軍独り勝ち傾向です。 どうぞお立ち寄り下さいませ。
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12222番ヒットのさんかく様からのリクエストです。
さんかく様、ヒットおめでとう御座います。んで、リクエスト有難う御座います。


リク内容は「『カップリングなりきり100の質問』の二人のエピソード」ということだったのです。
どの話を選ぼうか迷いましたが、今回はコレで。
……全然関係ないトコが長くなりました。何か違う気がする。


今更だけど、我が家の将軍と行灯先生は

「学生時代にくっついて、以後二十年の熟年夫婦」

みたいなのが基本らしいです。
二十年片思いしてて今になって……という話を書いたことがないのに、この段になって気付きました。
今後もこのスタンスだと思います。
それではどうぞデス。


「俺んチ? 汚ねえよ?」

まあ、普通はそう言うだろう。
何時人が来ても大丈夫! と胸を張れる人はそうそういない筈だ。
しかし、汚いと口では言うがそう大したことがないのもまた、世の常である。日本人は謙遜の民族だ。
ちょこちょこっと片付ければ見れる程度になる、というのが世間一般だろう。
ところが世の中、絶望的に汚い部屋も存在するのだった。



「ほんっとに汚いですね」
「お前、よくこんな家に住んでられるよなぁ」
「…………っ」

彦根は玄関口に突っ立ったまま断言した。
島津は寧ろ感心した口調である。
視界の隅っこを黒い生き物が横切ったような気がして、田口はそそくさと眼を逸らした。
入るのを躊躇っている客人たちに対し速水は胸を反らした。

「だから汚いっつったろ」
「開き直るな、阿呆」

速水の言葉に島津が即行突っ込んだ。
そもそもの始まりはやはり「すずめ」だろうか。
雀荘で仲良くなった面々、それぞれの下宿で飲み会をすることも珍しくはなかった。大概は「すずめ」に近い田口か島津の家だが、その二件ばかりでは不公平というものである。
今まで会場になったことのなかった速水の家に行ってみようということで、すずめ四天王はぞろぞろと連れ立ったワケなのだが、事前申告の通り、速水の家は見事に汚かったのだ。

「酷過ぎる…………っ」

絶望的な声で田口が呻いた。
コンビニ弁当やカップ麺のゴミが残るシンクには蠅が飛び、洗濯物は洗濯機から溢れ、散乱した雑誌類で足の踏み場がなく、敷きっぱなしらしい蒲団が奥の部屋から僅かに見える。

「だろ。だから、俺んチで飲み会は無し、な」
「速水」

速水は一同をさっさと追い出そうとする。
そんな速水の胸倉を引っ掴んで、田口は一歩踏み込んだ。

「な、なに?」

田口の目が据わっている。
流石の速水もその迫力に腰が退けた。
長身の速水を睨み上げたまま、田口は宣言した。

「掃除する」




速水にゴミ捨て、島津には洗濯機の見張りと布団干し、彦根に雑誌の処分と風呂掃除を言い付け、田口自身はトイレ掃除を始めた。
その迫力には誰も逆らえなかった。

「おっ前、布団いつ干したんだよ――っ!」
「覚えてねえよ」

饐えた臭いがし始めている布団に島津が悲鳴を上げる。
実際、いつ布団を干したか速水は覚えていなかった。多分梅雨前だ。

「速水先輩、これ捨てていい――っ?!」
「これってどれよ?」
「これこれ。愛野サキのグラビア。あ、桃井エミもある」

人気AV女優のグラビア雑誌、いわゆるエロ本である。
発見した彦根は、仕事の手を止めて実に楽しそうにグラビアを開いた。

「お、なっかなか……」
「欲しけりゃやるぞ」
「このアングル、結構キません?」
「甘いなぁ、もっとスゴイのが確かこっちに……」
「お、どれどれ」

速水がエロ本を引っ繰り返し始め、島津まで興味津々で首を突っ込んできた。
医大生とはいえ、所詮は若い男である。
背中を丸めて固まった三人の背後にゆらりと田口は立った。

「働けっ!!」

滅多に聞かない田口の怒号に、三人は飛び上がることになった。



昼過ぎから掃除を始め、夕刻には何とか終わった。
すずめに赴く気力は残ってなく、そのまま速水の家で酒を飲もうという話になる。掃除した端から散らかすことになるような気もするが、折角綺麗にしたのだから、という気もあった。
問題は、速水の家には食料が全然無いことである。
保存の利くインスタント食品はともかく、田口が冷蔵庫をすっかり綺麗にしたら、生鮮食料品がほとんど無くなってしまった。

「田口、買い出し行ってこいよ。割勘すっからさ。酒はなんでもいいや」
「…………何で俺が?」
「結局料理するのがお前だから」

島津の言葉に最初は眉を顰めた田口だったが、島津の理屈は尤もで、田口は一つ頷いてのっそりと立ち上がった。
ぐだーっと足を伸ばしていた彦根が速水の方に声を掛ける。

「速水先輩、一緒に行ってあげた方がいいんじゃないですか? 田口先輩、道解んないでしょ」
「ああ、そういやそうだな」

速水も頷いて立ち上がる。
そうして速水と田口が連れだって買い出しに出ることになった。
速水の家が少し入り組んだ場所にあるので、住宅地の中をくねくねと抜けて行く方が近いのだが、その分道が解り辛い。
のんびりと住宅地を歩いていると、ふと、田口が小さく呟いた。

「…………グラビア、よかったのか?」

速水が振り返ると、田口は俯き加減で歩いている。その頬が少し赤い。
速水はゆるりと笑った。
気遣う口調ながら、仄見える嫉妬が可愛い。

「必要無い。お前がいるからな」

言ってやれば、田口の頬がますます赤くなる。俯き加減は相変わらずだが、照れ隠しなのか足取りが乱暴で少し足音が大きい。

「田口」

呼ぶと、田口は弾かれたように顔を上げた。
速水は気取って右手を差し出した。

「手、繋がないか」
「え…………」

躊躇いつつも、田口は周囲を見回す。
人目を気にする仕草は、裏を返せば人目がなければオーケーのサインだ。
人目はない。
そろそろと伸ばされる田口の左手を、速水は強く捕まえて指を絡めた。
ゆっくり歩き始めると、緊張で強張っていた田口の指が次第にしっくりと速水の指に添った。

「この次はお前だけで来いよな」

二人きりになれる時間は短い。
速水が低く囁くと、田口は小さく笑って、

「だったら、人が呼べるくらいには掃除しといてくれ」

なんて憎まれ口を叩いたのだった。
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