パラレル警報発令中
暑い――っ!
パソコンが悲鳴上げそうです。
あのノートPC用の冷却ボードって効くかな?
これを書くに当たって、いろいろ調べものはしました。
した上で、大ウソ吐きまくっております。
連載中は前振りに困るので、今回は「私は嘘を吐いている」とでも題して、ネタばらしでもしようかなぁと思います。
①伊豆周辺に藩領はない!
桜宮藩は伊豆州にある設定なのですが、江戸時代、伊豆、静岡あたりは幕府直轄の天領だったようです。旗本知行地だったってことか?
うんと初期に幾つか藩がありましたが、ほぼ改易・転封されています。
家康が引退した後住んでいた駿府城が近かったので、そういうことになったのだと思いますが、まずは嘘その一でした。
暑い――っ!
パソコンが悲鳴上げそうです。
あのノートPC用の冷却ボードって効くかな?
これを書くに当たって、いろいろ調べものはしました。
した上で、大ウソ吐きまくっております。
連載中は前振りに困るので、今回は「私は嘘を吐いている」とでも題して、ネタばらしでもしようかなぁと思います。
①伊豆周辺に藩領はない!
桜宮藩は伊豆州にある設定なのですが、江戸時代、伊豆、静岡あたりは幕府直轄の天領だったようです。旗本知行地だったってことか?
うんと初期に幾つか藩がありましたが、ほぼ改易・転封されています。
家康が引退した後住んでいた駿府城が近かったので、そういうことになったのだと思いますが、まずは嘘その一でした。
このお話の主役について、少々ご説明致しましょう。
桜宮藩の速水家と申しますと、1050石の橘領を治め、家老職を務めたこともある由緒正しい御家柄で御座います。
ご当主晃一(あきただ)様は当年とって22とまだ若輩の身では御座いますが、剣の腕も立ち、藩主高階上総介様の覚えも目出度い、ご立派な御方で御座いました。
「きみ殿か…………」
島津の呟きが耳に落ちる。
速水は視線を逸らした。漆塗りで黒々とした、襖障子の枠が目に入る。
高階の話の結びは、二人のどちらかが田口きみを迎えに行ってはどうかということだった。
五年前の一件については、未だに不審な点がある。
それがなくとも、田口きみが縁者の家から行方を晦ましたのは不可解だ。
面識のある速水か島津なら、何らかの話が聞けようというのが高階の考えらしかった。
勿論、速水は早速に名乗りを上げた。
「お元気であればよいがな」
「ああ」
大廊下を歩きながら、二人はぽつぽつと言葉を交わす。
互いの脳裏に田口兄妹の姿が浮かんでいるだろうことは、想像する間でもなかった。
田口公平は一風変わった人で、身分や男女の隔てというものに余り頓着しなかった。二親を早くに亡くし、兄に育てられたも同然のきみもそういうところがあった。
上級藩士の息女であれば、外へ出ること自体が少ない筈だ。
だが、きみは供の女を一人だけ連れて外へ出ることも多かった。兄のいる藩学までやってくることも度々だった。
そうして、講義に飽きて抜け出した速水と出会い、速水と親しかった島津とも出会ったのだ。
分かれ道に差し掛かったところで、島津がふと顔を上げた。
「お前、やっぱり忘れてなかったんだな」
速水がそれに答えずにいると、島津は少しだけ呆れた顔をして去っていった。職務が残っているのだ。
速水の方は、明日の出立の都合があるから、今日の職務は藩主より免ぜられている。下城する為に門へと歩き出す。
一人、低い声で呟いた。
「忘れるわけがないだろう…………」
今でも、彼女の声が耳の奥に甦る。
「一太郎さまっ」と速水を幼名で呼んだ、幼い頃の彼女の声。
「晃一、さま」と元服したての速水の名を戸惑いがちに呼んだ、少し大人になった彼女の声。
それから、たった一夜の、涙交じりの切なくて甘い声。
彼女の顔を思い出そうとすると、幼い頃の笑顔と五年前の泣き顔が入り混じりになる。
他の誰よりも、彼女の五年間を訊きたいのは速水だった。
翌朝、速水は供を連れずに出立した。
馬を早駆けさせるには供などいない方が都合がいい。
勿論先の長さと、馬と自身の疲労を考慮には入れているが、気持ちが焦るのは抑えようがなかった。
桜宮藩の速水家と申しますと、1050石の橘領を治め、家老職を務めたこともある由緒正しい御家柄で御座います。
ご当主晃一(あきただ)様は当年とって22とまだ若輩の身では御座いますが、剣の腕も立ち、藩主高階上総介様の覚えも目出度い、ご立派な御方で御座いました。
「きみ殿か…………」
島津の呟きが耳に落ちる。
速水は視線を逸らした。漆塗りで黒々とした、襖障子の枠が目に入る。
高階の話の結びは、二人のどちらかが田口きみを迎えに行ってはどうかということだった。
五年前の一件については、未だに不審な点がある。
それがなくとも、田口きみが縁者の家から行方を晦ましたのは不可解だ。
面識のある速水か島津なら、何らかの話が聞けようというのが高階の考えらしかった。
勿論、速水は早速に名乗りを上げた。
「お元気であればよいがな」
「ああ」
大廊下を歩きながら、二人はぽつぽつと言葉を交わす。
互いの脳裏に田口兄妹の姿が浮かんでいるだろうことは、想像する間でもなかった。
田口公平は一風変わった人で、身分や男女の隔てというものに余り頓着しなかった。二親を早くに亡くし、兄に育てられたも同然のきみもそういうところがあった。
上級藩士の息女であれば、外へ出ること自体が少ない筈だ。
だが、きみは供の女を一人だけ連れて外へ出ることも多かった。兄のいる藩学までやってくることも度々だった。
そうして、講義に飽きて抜け出した速水と出会い、速水と親しかった島津とも出会ったのだ。
分かれ道に差し掛かったところで、島津がふと顔を上げた。
「お前、やっぱり忘れてなかったんだな」
速水がそれに答えずにいると、島津は少しだけ呆れた顔をして去っていった。職務が残っているのだ。
速水の方は、明日の出立の都合があるから、今日の職務は藩主より免ぜられている。下城する為に門へと歩き出す。
一人、低い声で呟いた。
「忘れるわけがないだろう…………」
今でも、彼女の声が耳の奥に甦る。
「一太郎さまっ」と速水を幼名で呼んだ、幼い頃の彼女の声。
「晃一、さま」と元服したての速水の名を戸惑いがちに呼んだ、少し大人になった彼女の声。
それから、たった一夜の、涙交じりの切なくて甘い声。
彼女の顔を思い出そうとすると、幼い頃の笑顔と五年前の泣き顔が入り混じりになる。
他の誰よりも、彼女の五年間を訊きたいのは速水だった。
翌朝、速水は供を連れずに出立した。
馬を早駆けさせるには供などいない方が都合がいい。
勿論先の長さと、馬と自身の疲労を考慮には入れているが、気持ちが焦るのは抑えようがなかった。
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