忍者ブログ
こちらは、愚痴外来シリーズの妄想文を展開するブログです。 行灯先生最愛、将軍独り勝ち傾向です。 どうぞお立ち寄り下さいませ。
[154]  [155]  [153]  [152]  [151]  [150]  [149]  [148]  [146]  [147]  [145
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

13333番ヒットのモトコ様からのリクエストです。
モトコ様、ヒットおめでとう御座います&リクエスト有難う御座います。


リク内容は「学生時代の速水青年が現在の大人の行灯センセに会っちゃった」というお話。
タイトル思い浮かばなかったなぁ……だって「未来の君に恋をする」じゃどこの少女マンガかと思いません? で、長過ぎ。センス悪い気もする。イヤ、霧島のセンスがいいとは思わんが。
でまあ出来上がったのがアレなのですが、やっぱり今一つだなぁと思ったりするワケだ。
この、タイトルがすんなり出来るのと出来ないのとの違いはどこにあるんだろう?
ぐだぐだ言ってますが、取り敢えずお付き合い下されば有難いです。


後記:何か長い上に解り難い話になったかも。ゴメンなさいです。

居間の蛍光管の寿命が来たようだった。スイッチを入れてから点灯に時間がかかる上に、いつまでもチカチカと明滅している。

「ったく……替えがあったかな?」

点滅する蛍光管に苛立って、速水は収納をほじくり返した。幸いに、以前にパック販売で購入していた丸型蛍光管が発掘出来る。
いくら長身の速水でも、踏み台無しで蛍光管の交換は出来なかった。触れることは触れるが、管を外したり差し込んだり、ということが難しい。

「ちっ」

斜めに差し込んでしまって舌打ちする。やり直す為に、もう一度蛍光管を外そうとした時だった。
踏み台にしていた椅子がぐらりと揺れた。

「え」

ヤバイ、と思った時には身体は椅子から落ち始めていた。



「ってぇ…………」

頭か腰かを盛大に打ったらしい。受け身も取れなかったのだから間抜けな話だ。
床から起き上がって、速水はそこが見知らぬ場所であることに気付いた。
誰かの家の中。やはり場所は居間だが、速水の下宿よりもずっと立派で、小ざっぱりしていた。
ふと思い出してしまったのは、田口が最近読んでいたミステリー小説だ。
目覚めた時には知らない場所で、死体があって、出入り口に鍵がかかっていて、犯人扱いされる話である。
思わず速水は周囲をきょろきょろと見回してしまった。死体はない。

「だよな」

安心すると同時に、自分の考えたことがアホらしくなってしまう。
ほっと息を吐きかけたところで、ガチャリ、と玄関が鳴った。鍵を開ける音だ。

「げっ」

今度こそ速水は焦った。
どうしてここにいるかは速水自身にも解らないが、これでは間違いなく不法侵入者だ。
だが、逃げ隠れするのは余計に事態を拗らせると解っていたので、速水には息を詰めて扉が開くのを待つしかなかった。

「ただいま、っと」

独り言のような帰宅の挨拶だが、声に聞き覚えがある。
目を見開いて突っ立っていた速水に、向こうの方も気付いた。彼がふっと笑うと空気が緩む。

「いたのか、はや…………み?」
「お前、田口…………?」

笑って声をかけてから、速水の姿をまじまじと見て、彼は首を傾げた。
速水の方も目を見開いてまじまじとその姿を凝視する。

「…………速水の弟?」
「田口、なのか?」

彼が田口なのは間違いなかった。声も顔も速水が知っている田口だ。
だが、大きく違うのは年齢。速水の前にいる「田口」は速水よりずっと年上の男だった。40代くらいか。
一方田口も唖然として速水を見ていた。

「速水に弟なんかいたかな? 兄弟がいたなんて、聞いたことないけど……」
「いねえよ、弟なんか」
「じゃあ誰?」
「本人に決まってるだろ、速水晃一だ」

一人でぶつぶつ言っているので、速水は思わず口を出した。
40代の「田口」は今度こそ呆気に取られて絶句した。



「1988年、23歳」
「2009年、44歳」

西暦紀元と年齢を擦り合わせたら、20年の開きがあることが判明した。
挙句、迷い込んだのは速水の方らしい。
居間のカレンダーは2009年の表示だったし、テレビは速水が見たこともない薄型で、田口が見せてくれた持ち歩き出来る電話も非常に薄型の小型だった。
20年間における技術の飛躍は、速水の想像の範疇外だ。
20年前の速水本人だと解ると田口は表情を緩めた。

「そうかぁ、あの頃の速水ってこんなだったっけ。何かかわいー」
「かわいーって何だよ」

速水の抗議も、40代の田口はさらっと笑って流してしまう。
速水の知っている学生の田口は、そもそも速水に「かわいー」などと言う筈もなくて、速水は居心地の悪さを覚えた。
憮然とする速水を気にもせず、田口は台所でごそごそと食事の用意などを始めている。そういえば、入ってきた時の田口はスーパーの袋を両手にぶら提げていた。

「お前が料理するのか?」
「お前よりは上手かっただろ」

速水をからかう口調で言って、田口は仕事に取り掛かる。
居間のソファの上で胡坐を組んでいた速水だったが、手持無沙汰になって周囲をきょろきょろと見回した。
全体的にシンプルで、実に速水好みの家だった。調度品がスタイリッシュを目指してまとめられている。
現時点の速水の財力では到底揃えられないインテリアに、必然溜息が洩れる。20年後の自分も、これくらい稼げていればいいのだが。
気になるのは食器棚の中身だった。二人暮らしらしいのだ。
田口がここで料理しているということは、住人の一人は田口ということなるのだろう。

「お前、結婚してんの?」
「いいや」
「じゃあ同棲?」
「ん――それも微妙に違うんだよなぁ」
「…………何なんだよ、一体」

否定はするけど正解を答えない田口に焦れて、速水は眉間に皺を寄せた。
田口は料理の手を止めて振り返った。
今になって気付いたが、田口の料理も二人分だ。明らかに一人前より材料が多い。

「余り訊かない方がいいよ、速水」
「…………何でだよ?」

田口の言葉は少々意外だった。
眉を顰めたまま速水は問い返した。

「例えばさ、俺は医鷲旗大会で速水が勝つかどうか知ってるけど、速水はそれを聞きたい?」

虚を突かれ、そして簡単に速水は納得した。
確かに聞きたくないことだ。
譬え勝つと言われても、それはそれでガッカリするだろう。

「納得した」
「解れば宜しい」

茶目っ気を混ぜて田口は答え、料理の続きに戻った。
納得はしたが、速水は考えるのを止めることは出来なかった。
一番意外なのは、この年の田口が、恋人がいる……この間取りとインテリアコーディネートで、親と同居というオチはあるまい……のに、結婚していないという展開だ。
田口なら、そういうところはキッチリしそうなものなのだが。

「なあ」
「ん?」
「お前、今、同棲みたいなもんなんだよな? それってどうなんだ?」
「どうって?」

再三料理の邪魔をされているにも拘わらず、田口は鬱陶しそうな顔もしないで、また速水を振り返った。
速水が知っている田口なら、もう少し顰めっ面をするだろう。しつこいんだよ、という表情を隠さないだろう。
穏やかな表情は、田口が成長した証なのだろうか。

「それでいいのかってこと」
「ああ、そういうこと…………」

一つ頷いて、田口は柔らかく笑った。
速水が見たことのない笑顔だった。
愛しさと信頼が滲む。満ち足りた世界がある。
柔らかく笑った瞳に映るのは目の前の速水ではなく、彼の想う誰かだ。
その誰かが無性に羨ましいと思った。
あの眼差しを捧げられたら、きっと幸せだろう。

「幸せだよ。決まってるだろう? 何時だって手が届いて声が聞ける。傍にいられる。それ以上の贅沢なんか無いよ」

ゆるりと語る声には愛しさが溢れている。微笑は幸せを確信して揺ぎ無い。

「…………いいな」

そんな風に愛されたいと、あの瞳が欲しいと思った。





手持無沙汰のまま、ソファに引っ繰り返って眠ってしまったらしい。
揺り起こされて速水は目を覚ました。

「…………メシか?」
「何でだよ」

半分寝惚けながら問いかけると、憮然とした声が返された。
そこでようやっと、速水は自分が床の上で寝ていたことに気付く。
見覚えのある、速水自身の安下宿の一室だった。
若い田口が呆れ顔で速水を見下ろしていた。

「人呼びつけておいて、自分は床で大の字かよ、ったく」

田口はぶつぶつと文句を言う。
両手にぶら下げたスーパーの袋からは食材がはみ出していた。
一瞬、時間が解らなくなる。

「なあ、今何年?」
「は? もうボケたのか?」
「いいから答えろよ」

田口の口調は冷ややかだった。

「昭和63年だったかな」
「ふぅん」

それは速水が知っている時間だ。
先ほどまでのことは夢だったのか、覚束なくなる。
夢にしては細部がリアルではっきりし過ぎていたようにも思う。
田口の甘やかな、愛しさの滲む瞳ばかりが脳裏に焼き付いていた。
あの瞳が欲しいと思った。

「なあ、」
「ん?」

床に寝転がったまま声を出すと、田口は速水の視界を遮って顔を覗かせた。
今の田口の瞳にあるのは、ただ友人に対する疑問の念だけ。ちょっとだけ苛立ちも混ざっているのかもしれない。

「お前、好きなヤツいる?」
「何を突然…………」
「いるのかいないのか、どっちだ?」

速水の問いに田口は驚いた表情になった。
当然だろう、年号を聞いて次がこの質問では、誰だって面食らう筈だ。
そこを速水はいつもの強引さで押し通した。

「いないよ、そんなの」

速水に押し負けて、田口は呆れ半分に言う。
その口調に嘘は無さそうだ。
寝転がったまま、速水は小さく笑った。

「よし、間に合うな」
「…………何が?」

速水の独り言に田口は当然ながら首を傾げたが、速水は笑って答えなかった。
脳裏に焼き付いた甘い微笑と柔らかい瞳。愛しさの滲む声音。
「他の誰か」に向けられたそれらに恋をしたのだと、速水は気付く。
田口の心にまだ誰もいないなら、速水が田口の気持ちを手に入れればいいだけだ。

「俺を好きになれよ」

起き上がりざま、小さく囁いて田口の頬に唇で触れた。
何が起こったのか解らない顔をしている田口に、速水は口の端だけで笑ってみせる。
あの瞳を手に入れてみせると、速水は心に決めた。
PR
back
COMMENT
name
title
text
color   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
mail
URL
pass
secret
ありがとうございますv
リクエストありがとうございましたv
ちょっと私事でバタバタしていまして、お礼が遅くなりました(ペコ)
学生時代も好きなんですが、やっぱり大人な行灯センセはいいな~と、しみじみ思いましたv
20年で纏った大人の雰囲気に、そりゃあ小虎も
惚れるってものです。これから、せっせと口説いて、あの未来を手に入れるんだろうな~と思うと、
それだけで楽しくなりますねv
また妄想が膨らみそうで、嬉しい限りです。えへ
凄く早くリクエストにお応え頂いて、驚きと尊敬です。ありがとうございましたv
モトコ 2009/07/20(Mon)12:42:02 編集
Re:ありがとうございますv
いらっしゃいませ、こんばんは。あんなんで宜しかったでしょうか?
日記拝読しましたですよ。お忙しかったんですね。
黒本や伝説と、青本や赤本、読んでみてもあんまり行灯先生は変わってない気がしますけどね。たまごの方でもそーんなに変わってないんじゃないかなぁ。
階段から落とそうかと思ってましたが、ここは一つ「チェリーウッド」に倣い、電球交換で落下してみました。うろ覚えですが、確か脚立から落っこちたんでしたよね?
S.Kirishima 2009/07/20 20:03
TRACKBACK
TrackbackURL:
PREV ←  HOME  → NEXT
カレンダー
01 2025/02 03
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28
最新コメント
[04/04 トワ]
[04/03 武那しめじ]
[03/12 名無し]
[01/04 みなみ]
[12/16 武那しめじ]
リンク
倉庫サイトと素敵同盟さま
プロフィール
腐れ管理人、霧島です。
趣味は図書館通いと立ち読み。
レンタルで映画DVD視聴。
モットーは「とりあえず」。
ブログ内検索
バーコード
最新トラックバック
Copyright (C) 2025 M-Rainbow All Rights Reserved.

Photo by (c)Tomo.Yun   TemplateDesign by kaie
忍者ブログ [PR]