11000ヒットのキーコ様のリクエストです。
ご報告&リクエスト有難う御座いました!
リク内容は「学生時代、速水にふさわしくないと言われ距離を置こうとする田口と、そんなことは無いと理解させる速水。後で言った奴に報復する話」……なのですが。が?
要素は間違ってないけど順番間違ってるカンジのが出来上がりました。
す、すみません、これが霧島の精一杯ですっ!
あ、オリキャラ登場注意報発令中。
所詮は当て馬だけど、根性悪いから、多分。
ご報告&リクエスト有難う御座いました!
リク内容は「学生時代、速水にふさわしくないと言われ距離を置こうとする田口と、そんなことは無いと理解させる速水。後で言った奴に報復する話」……なのですが。が?
要素は間違ってないけど順番間違ってるカンジのが出来上がりました。
す、すみません、これが霧島の精一杯ですっ!
あ、オリキャラ登場注意報発令中。
所詮は当て馬だけど、根性悪いから、多分。
「ね? お願い?」
女子学生にお願いされて、田口には反論する理由などなかった。
正直、何でこんなことを頼まれるのだか、それさえ解らない。
自分と彼はただの友達なのに。
ほんの少し、寂しいと思う心には蓋をした。
最近の速水は暇を持て余していた。
理由は簡単、遊び相手が捕まらないためである。
速水の遊び相手といえば「すずめ」仲間だが、彦根は学年違いのためカリキュラムの空きが重ならず、島津は真面目に勉強に勤しんでいる。
いつでも暇な筈の田口が何故だか捕まらないのだ。
いくら田口がサボリ魔でも、一週間、大学の何処でも見かけないということは有り得ないのに。
そんなに暇なら授業に出ればいいだろう、と島津あたりなら言いそうだが、生憎そういう気分にもならない。
そうやって速水が学食でダラダラしていると、速水の前に影が落ちた。向かいに誰かが立ったのだ
速水が顔を上げると、見たことあるような無いような女子学生が、にこやかに笑っていた。口紅はピンク色で可愛いのに、塗り過ぎて毒々しく見える。
「速水くん、いい?」
「ああ、何?」
何、とは問いながら、速水には先方の目的が薄々察せられた。
十中八、九が交際の申し込みだ。
気乗りがしなかったので、話を聞く前から断ろうと速水は決めた。
彼女は近藤と名乗った。看護課の一つ年上だった。
お断りはしたものの、彼女からちょくちょくと話しかけられるようになった。
これもアプローチのうちなのだろう。
余りに素気無くするのも憚られて、挨拶程度の会話は交わすようになった。
「お前、看護課の年上美人と付き合ってるって?」
「付き合ってねえよ。ところで行灯見たか?」
島津に問われたのは数日後の、学食へ向かう道すがらだった。
速水はきっぱりと否定し、ここ数日気になっていた件を尋ねた。
島津は一つ肩を竦める。
「どうせサボリなんじゃねえのか。家で寝てんだろ」
「しばらく見てねえんだよな。『すずめ』にも来てねえだろ」
「そういやそうだな。家でブッ倒れてたりして」
「縁起でもねえこと言うなよ」
島津の言い草に速水は顰め面を返した。
流石の怠け者田口でも、餓えればそれなりに何かするだろう。速水より田口の方が家事能力がある。下宿で餓死寸前、ということはない筈だ。
そんなことを考えながら空席を探して学食内を見回していると、自分の名前が耳に飛び込んできた。
「最近速水くんと仲いいじゃない、萌。いいなぁ」
「先輩どうやったんですか? 速水くんって、余り女の子の相手しないのに」
「どうやったなんて人聞きの悪い」
女子学生が数人固まっている。看護課の女子なのだろう。
輪の中心にいたのは、先日速水に交際申し込みをしてきた近藤だった。
後輩らしい女子の物言いに嫌そうな顔をしたが、すぐに近藤は自慢げな表情になった。
「速水くんの友達に言ったの。アプローチしたいから協力してって。ちょっと二人っきりになる時間をちょうだいって言ったら、気を遣ってくれてるみたい。あとはそこでアタックするだけ」
「あ、それで速水くん、最近一人でいること多いんだぁ」
近藤のセリフに、女子の面々が納得の面持で頷く。
速水が島津を振り返ると、島津は首を横に振った。
近藤に根回しされた「速水くんの友達」は島津ではないらしい。
近藤の小賢しい自慢は更に続いた。
「単純だよね、あのコ。田口くんだっけ? 速水くんと友達って信じられない。タイプ全然違うし」
「そういうことかよ…………っ」
一つ唸った速水がしたことは、給水機で湯呑に冷水を汲むことだった。
島津が首を傾げるが、今は島津に説明するつもりはない。
そのままつかつかと女子学生の一団に歩み寄った。
近藤の背中側から近寄ったので、近藤の向かいに座っていた女子学生の方が先に速水に気付く。
近藤が速水を振り仰ぐ寸前に、速水は湯呑を傾けた。
「冷たっ」
「きゃあっ」
冷水を浴びせられた近藤が悲鳴を上げる。周囲にいた女子学生たちも驚いて声を上げた。
近藤は瞬間非難がましい視線を向けたが、相手が速水であること、そしてその速水の目が凍るように冷たいものであることに気付いて息を飲む。
速水は手にしていた湯呑を、テーブルに放り出した。プラスチック製だから割れる心配はない。女子学生の輪の真ん中で、ガランガランと派手な音を立てる。
その派手な音に食堂に居る人々が振り返るのも構わず、速水は口を開いた。
「てめぇみたいな性格ブス、こっちから願い下げだ。二度と付き纏うな」
誰かが……多分島津だろう……噴き出すのが聞こえた。
速水はそのまま踵を返す。自然と足は速くなった。
「何処行く?」
「行灯とこ」
島津とスレ違いざまに短く答える。
学食を出る頃には速水は駆け出していた。
「あーもう、何だよ」
呼び鈴の連打とノックの嵐に、田口はしぶしぶといった表情で顔を出した。襟の伸びたTシャツを着ているところを見ると、出かけるつもりは全くないらしい。
「邪魔するぞ」
「あ、うん……?」
玄関に立った田口を押し退けて、速水は半ば強引に上がり込んだ。
田口は首を傾げながら速水の後について部屋に戻る。
ローテーブル(本当は掛け布団を外したコタツだ)の、何となく速水の指定席になっている場所に座って、立ったままの田口を見上げた。
「近藤は、きっぱり断った」
「え?」
「お前に余計なこと頼んだ女がいただろ、看護課の」
「ああ、うん…………断った?」
田口は瞬きを繰り返したが、話がし難いと感じたのだろう、その場にすとんと座った。田口がごそごそ動いて胡坐をかくのを速水は待った。
田口の体勢が落ち着いたところで、速水は続きを口にする。
「あの女、もう一切俺には関係ないからな」
「そうか……」
「ったく、あんな嘘吐き女にあっさり騙されやがって」
「嘘吐きはないだろ? お前に近寄りたかっただけで……」
速水が言うと、田口は困った顔をしながらも近藤に肯定的なことを言う。
近藤のせいでここ数日来、田口とスレ違っていたのだと思うと、速水としてはますます彼女が許し難いのに。
「お前はさぁ、俺と会わずにいてつまんなくなかったのか? 俺はすっげーつまんなかったんだけど」
「それはまぁ、少しは…………」
「だろ。俺は、一緒にいて面白いから、お前と一緒にいるんだ。そこんとこ、よっく覚えとけよ。勝手に距離を取ろうとするな」
速水の言葉に、田口はちょっと目を見張った。
それから浮かんだ笑顔には、仕方ないなぁという風情が漂っている。
確かに自分でも、我が儘で偉そうなことを言っている自覚はある。
だが、田口の顔を見ていれば、この数日の不満はたちまち解消されていく。
一緒に居て楽しいのも落ち着くのも、速水は田口以上の存在に出会っていない。
だから、田口しかいないのだ。
「近くにいろよ」
「……うん」
自然と速水の手が伸びて、田口の手を握っていた。
田口は瞬間たじろいだが放さないとばかりに力を込める。
田口が小さな声と共に頷いてくれたので、それでもう十分だった。
女子学生にお願いされて、田口には反論する理由などなかった。
正直、何でこんなことを頼まれるのだか、それさえ解らない。
自分と彼はただの友達なのに。
ほんの少し、寂しいと思う心には蓋をした。
最近の速水は暇を持て余していた。
理由は簡単、遊び相手が捕まらないためである。
速水の遊び相手といえば「すずめ」仲間だが、彦根は学年違いのためカリキュラムの空きが重ならず、島津は真面目に勉強に勤しんでいる。
いつでも暇な筈の田口が何故だか捕まらないのだ。
いくら田口がサボリ魔でも、一週間、大学の何処でも見かけないということは有り得ないのに。
そんなに暇なら授業に出ればいいだろう、と島津あたりなら言いそうだが、生憎そういう気分にもならない。
そうやって速水が学食でダラダラしていると、速水の前に影が落ちた。向かいに誰かが立ったのだ
速水が顔を上げると、見たことあるような無いような女子学生が、にこやかに笑っていた。口紅はピンク色で可愛いのに、塗り過ぎて毒々しく見える。
「速水くん、いい?」
「ああ、何?」
何、とは問いながら、速水には先方の目的が薄々察せられた。
十中八、九が交際の申し込みだ。
気乗りがしなかったので、話を聞く前から断ろうと速水は決めた。
彼女は近藤と名乗った。看護課の一つ年上だった。
お断りはしたものの、彼女からちょくちょくと話しかけられるようになった。
これもアプローチのうちなのだろう。
余りに素気無くするのも憚られて、挨拶程度の会話は交わすようになった。
「お前、看護課の年上美人と付き合ってるって?」
「付き合ってねえよ。ところで行灯見たか?」
島津に問われたのは数日後の、学食へ向かう道すがらだった。
速水はきっぱりと否定し、ここ数日気になっていた件を尋ねた。
島津は一つ肩を竦める。
「どうせサボリなんじゃねえのか。家で寝てんだろ」
「しばらく見てねえんだよな。『すずめ』にも来てねえだろ」
「そういやそうだな。家でブッ倒れてたりして」
「縁起でもねえこと言うなよ」
島津の言い草に速水は顰め面を返した。
流石の怠け者田口でも、餓えればそれなりに何かするだろう。速水より田口の方が家事能力がある。下宿で餓死寸前、ということはない筈だ。
そんなことを考えながら空席を探して学食内を見回していると、自分の名前が耳に飛び込んできた。
「最近速水くんと仲いいじゃない、萌。いいなぁ」
「先輩どうやったんですか? 速水くんって、余り女の子の相手しないのに」
「どうやったなんて人聞きの悪い」
女子学生が数人固まっている。看護課の女子なのだろう。
輪の中心にいたのは、先日速水に交際申し込みをしてきた近藤だった。
後輩らしい女子の物言いに嫌そうな顔をしたが、すぐに近藤は自慢げな表情になった。
「速水くんの友達に言ったの。アプローチしたいから協力してって。ちょっと二人っきりになる時間をちょうだいって言ったら、気を遣ってくれてるみたい。あとはそこでアタックするだけ」
「あ、それで速水くん、最近一人でいること多いんだぁ」
近藤のセリフに、女子の面々が納得の面持で頷く。
速水が島津を振り返ると、島津は首を横に振った。
近藤に根回しされた「速水くんの友達」は島津ではないらしい。
近藤の小賢しい自慢は更に続いた。
「単純だよね、あのコ。田口くんだっけ? 速水くんと友達って信じられない。タイプ全然違うし」
「そういうことかよ…………っ」
一つ唸った速水がしたことは、給水機で湯呑に冷水を汲むことだった。
島津が首を傾げるが、今は島津に説明するつもりはない。
そのままつかつかと女子学生の一団に歩み寄った。
近藤の背中側から近寄ったので、近藤の向かいに座っていた女子学生の方が先に速水に気付く。
近藤が速水を振り仰ぐ寸前に、速水は湯呑を傾けた。
「冷たっ」
「きゃあっ」
冷水を浴びせられた近藤が悲鳴を上げる。周囲にいた女子学生たちも驚いて声を上げた。
近藤は瞬間非難がましい視線を向けたが、相手が速水であること、そしてその速水の目が凍るように冷たいものであることに気付いて息を飲む。
速水は手にしていた湯呑を、テーブルに放り出した。プラスチック製だから割れる心配はない。女子学生の輪の真ん中で、ガランガランと派手な音を立てる。
その派手な音に食堂に居る人々が振り返るのも構わず、速水は口を開いた。
「てめぇみたいな性格ブス、こっちから願い下げだ。二度と付き纏うな」
誰かが……多分島津だろう……噴き出すのが聞こえた。
速水はそのまま踵を返す。自然と足は速くなった。
「何処行く?」
「行灯とこ」
島津とスレ違いざまに短く答える。
学食を出る頃には速水は駆け出していた。
「あーもう、何だよ」
呼び鈴の連打とノックの嵐に、田口はしぶしぶといった表情で顔を出した。襟の伸びたTシャツを着ているところを見ると、出かけるつもりは全くないらしい。
「邪魔するぞ」
「あ、うん……?」
玄関に立った田口を押し退けて、速水は半ば強引に上がり込んだ。
田口は首を傾げながら速水の後について部屋に戻る。
ローテーブル(本当は掛け布団を外したコタツだ)の、何となく速水の指定席になっている場所に座って、立ったままの田口を見上げた。
「近藤は、きっぱり断った」
「え?」
「お前に余計なこと頼んだ女がいただろ、看護課の」
「ああ、うん…………断った?」
田口は瞬きを繰り返したが、話がし難いと感じたのだろう、その場にすとんと座った。田口がごそごそ動いて胡坐をかくのを速水は待った。
田口の体勢が落ち着いたところで、速水は続きを口にする。
「あの女、もう一切俺には関係ないからな」
「そうか……」
「ったく、あんな嘘吐き女にあっさり騙されやがって」
「嘘吐きはないだろ? お前に近寄りたかっただけで……」
速水が言うと、田口は困った顔をしながらも近藤に肯定的なことを言う。
近藤のせいでここ数日来、田口とスレ違っていたのだと思うと、速水としてはますます彼女が許し難いのに。
「お前はさぁ、俺と会わずにいてつまんなくなかったのか? 俺はすっげーつまんなかったんだけど」
「それはまぁ、少しは…………」
「だろ。俺は、一緒にいて面白いから、お前と一緒にいるんだ。そこんとこ、よっく覚えとけよ。勝手に距離を取ろうとするな」
速水の言葉に、田口はちょっと目を見張った。
それから浮かんだ笑顔には、仕方ないなぁという風情が漂っている。
確かに自分でも、我が儘で偉そうなことを言っている自覚はある。
だが、田口の顔を見ていれば、この数日の不満はたちまち解消されていく。
一緒に居て楽しいのも落ち着くのも、速水は田口以上の存在に出会っていない。
だから、田口しかいないのだ。
「近くにいろよ」
「……うん」
自然と速水の手が伸びて、田口の手を握っていた。
田口は瞬間たじろいだが放さないとばかりに力を込める。
田口が小さな声と共に頷いてくれたので、それでもう十分だった。
PR
COMMENT