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こちらは、愚痴外来シリーズの妄想文を展開するブログです。 行灯先生最愛、将軍独り勝ち傾向です。 どうぞお立ち寄り下さいませ。
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本気でダーク警報発令中

最初に思いついたのが2月中旬、3月頭には凡その構成は固まってました。
それがどうして今のスタートになったかといえば、偏にタイトル決まらなかったせいです。
霧島は話の中身から決めるタイプで、タイトルは後になります。割とすぐ決まるのもあるし、ちょっと時間かかるのもあります。が、この話、霧島的愚痴外来創作史上一! タイトル出てこなかったデス。
タイトル決まらないと書き出せないんですよね~。
結局、3月下旬、一か月経ってもタイトルは決まってませんでした。

「最近、アメ舐めてないんですね。何かあったんスか?」

佐藤に訊かれ速水は苦笑を浮かべた。
佐藤の背後では、看護師たちが仕事に励むフリで聞き耳を立てている。
そのうち訊かれるだろうと思っていたが、佐藤が特攻隊長とは意外だった。

「今更、虫歯とか血糖値が気になったとか?」
「何だよその、そこはかとなく悪意のある見解は」
「いやっ! 神経内科の兵藤先生がっ!」

わざとらしく睨んでやったら、佐藤は慌てて言い訳した。人身御供を差し出すのは卑怯というか、強かだといおうか。

「廊下トンビんとこでもやっぱり噂になってるか」
「そりゃなりますって。で、実際、どうなんです?」

重ねて問われ、速水は小さく笑った。

「願掛けだよ…………取り返すものがある」

そう言って、速水は自然黙り込んだ。
田口とあの男のことを思えば、表情が勝手に険しくなるのが鏡を見なくても解る。
速水のピリピリした気配に怖気づいたかのように佐藤は視線を宙に走らせて、逃げ道を探した。

「そ、そう言えばっ! 田口先生のお付き合いされてる方ってどんな人だか知ってますか?」
「え?」

佐藤が選んだ逃げ道は、実は最悪だった。佐藤はその事実に気付かず、兎に角速水の雰囲気に呑まれないように話を続けることを選んだ。

「兵藤先生が言ってたんですけど、田口先生、ここに派手な噛み痕があったらしいんです。随分悋気の強い女性だなぁって話を…………」

佐藤が指差したのは耳のすぐ下あたりだった。速水は、そんな傷を付けた田口を見たことはない。速水の眉間の皺が更に深くなった。
噛み痕を付けた相手に心当たりがある。

「警・察・庁、の猟犬さ。今は若干イカレ気味だけどな」

速水が呟いた言葉に佐藤はポカンとした顔になったが、速水は解説などしなかった。




不定愁訴外来で会う田口はやつれたようだった。
今のこの状況に歯噛みしたいのは速水も当然だが、田口にもキツイものがあるのだろう。
全ての原因が速水自身にあるだけに、速水には手出しも口出しも出来なかった。
出来るのは精々、状況を一変させる奇貨を探しながら願掛けをするぐらいだ。

「佐藤ちゃんに聞いた」
「……オレンジまで噂になったか」

田口は小さく笑う。
相変わらず困ったような笑みだ。
それは昔から速水の好きな田口の顔だったけれど、今の、泣くのを堪えながら笑っているような笑みは見たくはなかった。
田口にそうさせているのは速水自身だというのが、尚辛い。
静脈を食い破ろうとするような場所にある噛み痕が痛くて、速水はそっと傷を舐めた。
一度舐めたら、全ての傷が消えればいいのに。

「あぁ…………っ」

田口が細く漏らす声に、速水の雄が熱くなる。
田口が息を呑む度に、舌を押し返す喉が動いた。近過ぎる距離が伝える体臭にはいつものコーヒーの香り。シャンプーの匂いなんか嗅ぎたくもない。
夜を共に過ごすことが許されないなら、今、この僅かな触れ合いで目一杯感じたかった。感じて欲しい。

「行灯…………」

田口の名前は呼べなかった。
大昔の渾名で、名を叫びたい衝動を誤魔化している。
田口の声で名前を呼んで欲しかったけれど、叶わないと解っていた。
田口もきっと同じだ。名前を呼んでしまえば、恋しさが歯止めを失うだろう。
もどかしい。手を伸ばしたい。
もっと、五感全てで交り合いたいし、心の全てをぶつけてしまいたい。
白衣に縋る田口の手が、舌先から伝わる田口の体温が、頭の芯を揺さぶり始める。
結局は、忌々しい携帯電話に邪魔をされたのだが。




その日、速水は当直でもないのにオレンジに居残っていた。
田口があの男と会う晩に、一人で家に帰るなんて願い下げだった。すべての物に八つ当たりしたくなるに決まっている。
キャンディを断ってしまうと、手持無沙汰はいよいよ深刻だった。
願掛けだけで立ち往生なんて自分らしくないと速水も思う。
たとえばマスコミに全てをぶちまけたら、あの男の脅迫は意味を失うだろう。しかしそれでは病院側のダメージも大きい。田口はそれを望まない。
あの男の執着具合を見ると、田口を簡単に手放しそうにもない。

「くそったれが……」

あの男の口説き文句が脳裏に蘇って、尚も癪に障った。
速水自身が田口を口説いた時、似たようなことを言ったのだ。
他にどんな美人がいようと俺が欲しいのはお前だ、と。
幾多の人間を振り払って選んだ田口に、他の誰かが触れるのは単純に許せなかった。

「速水先生っ! 交通外傷入ります」
「あいよ」

歯軋りしたい思いを断ち切るのは看護師の声だ。
そこにいる人間を遊ばせておくほど、救急救命センターは余裕のある職場ではない。
速水は立ち上がって白衣を引っかけた。
搬入口に救急車がやってくる。
ストレッチャーごと下ろされた人物の顔を見て、速水は唇を歪めた。

「…………ははっ。はーっはっはははっ!!」

場違いな哄笑に、救急隊員とオレンジの看護師や医師たちが速水を凝視する。気が狂った人間を、恐る恐る見守っているようだ。
それが解っていても、速水は笑うのを止められなかった。
止められる筈がなかった。
目の前で横たわるのは、憎いあの男なのだから。
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