Letter From

キリ番連載を放置して何をやるかといえば、「今日は何の日」です。
本日、5月23日は「恋文の日」だそうで。
元々は映画の宣伝用にマツタケ映画会社が設定したらしいですが、５（コイ）２３（フミ）の語呂がこんなにしっくりいっているので、いいんじゃないかなと思います。
知ったのが昨日、慌ててネタを練りましたので穴だらけかもですが、よろしくお付き合い下さいませ。


も一つ、今日は「KISSデー」ってのもあるそうです。初めてキスシーンのある邦画が公開された日なんだって。
そっちは誰かやりませんか？
霧島がやったら、何か意味もなくキスしてるだけの話が出来上がりそうで……それはどうかと思うぞ。

拝啓

薫風の頃、ますますご健勝のことと存じ上げる。
北の大地は如何だろうか。此方は時に真夏のように暑い日もある。そちらでは、そこまで暑い日はまだないだろう。
小生は相変わらず、患者の愚痴を聞き病院長殿の無理難題に汲々とする日々を送っている。島津をはじめ、旧知の面々にも変わりはないようだ。
この手紙が、貴君の家でポストに埋もれたままにならないことを祈る。貴君の片付け下手は小生も知るところだが、転居したからといって片付け上手になったとはとても思えない。
多忙の事とは思うが、貴君が倒れては本末転倒であろう。御身を厭うようお願い申し上げる。

敬具

追伸　この手紙を読んでも、電話は寄越さないでくれ。声を聞くと会いたくなるのが解っているから、手紙にしたのだ。


追々伸　この手紙を書いている間、ずっとお前のことを考えた。何を書けばよいか、この文章で正しく伝わるか、そういうことを何度も考えた。ラブレターを書いたことはないが、そう考えると、これは十分恋文じゃないか？





田口から届いた手紙に、速水は笑った。
本文よりも追伸の方が中身が濃いのが可笑しい。
実のところ追伸など無視して電話をかけたかったが、折角のお願いだ、たまには手紙もいいだろう。
同じ文字でも、メールよりも心にぐっとくるものがあるのが不思議だ。
手近には事務用便箋と事務用の封筒しかない。綺麗なレターセットの持ち合わせもない。
どうせなら、北らしい写真の葉書を探そう。氷の海か、今の季節なら溢れる花か、広い大地か。どんな写真を喜ぶだろう。
こうして葉書を探す時点から田口のことを考えている事実に、田口の言う通りだと思った。
どんな手紙でもこれは既に恋文だ。