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こちらは、愚痴外来シリーズの妄想文を展開するブログです。 行灯先生最愛、将軍独り勝ち傾向です。 どうぞお立ち寄り下さいませ。
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本気でダーク警報発令中

完結です。予告通りだ!

製作裏話もラストです。
3月末になって取り敢えずこのタイトルを決めたけれど、その時点で既に4月は「パラレル企画」と心の中で決めていました。その浮かれ月間にこのダークシリアスが割り込む余地は無い。
……というワケで、スタートが今になったという次第です。

恐れていたような拒否反応が無くてホッとしております。
霧島、こーゆうのも書くんですよ~ってトコを許容して頂ければ万々歳です。
お付き合い下さいまして有難う御座いました。

「警視正どのぉ~」
「…………タマか」

目を覚ました加納に、情けない声が取り縋った。
声の主を確認して、加納は虚ろに呟いた。
いくら加納でも状況判断が少し遅れる。
加納の戸惑いに気付いたように、玉村はゆっくりした口調で説明を始めた。

「ここは東城大病院の外科病棟です。警視正は交通事故で搬送されたんです、覚えてますか?」
「そう、だったな。あのくそトラックめ……」
「200キロ近く出してた警視正の方が、どう考えたって悪いですよ。後で事情聴取来ますからね、覚悟して下さいよっ」

玉村の言葉に加納は溜息を吐いた。
事情聴取が煩わしいのではない。その後の、もみ消しがいろいろと面倒だ。

「お前、どうしてここにいる?」
「田口先生から連絡頂きました」
「ああ、そうか……」

あの晩、田口に会うために桜宮に向かっていたのだ。
反故になった約束の夜を田口がどう過ごしたのか、そんなことが気になった。
来ない加納を気を揉みながら待っていてくれるなんて、そんな甘い願望はなかったけれど。



「よお」

からかいを含んだ声が壁際から投げつけられる。
加納は首を動かして入口のドアを睨んだ。ムチ打ちのせいか、首が痛む。
予想通り、速水が壁に寄り掛かって立っていた。
口元が笑みで歪んでいた。

「あんたか」
「ここは東城大、当然だろ。しかもあんたの手術したのは俺だ」
「ちっ」

苦々しい思いで加納は舌打ちした。苦々しい思いなのは速水も同じだ。
「選りにも選って何でコイツが」とは、二人に共通した思いである。
加納は皮肉気に笑ってみせた。

「残念だったな、俺がくたばらなくて」
「ふん、俺の目の前で死なせて堪るかよ」
「ほお? 先生にとっては、俺が死んだ方がいろいろと都合がいいんじゃないか?」
「…………ざけんな」

速水は低い声で唸った。
相手が重傷者じゃなければ、胸倉を引っ掴んでやりたいところだ。

「確かにてめぇは気に食わねえ。けど、俺は医者なんだよ」

目の前の患者に全力を尽くす。
それは速水にとって最早自明の理だった。当たり前で、疑問の余地もない。

「…………なるほど」

加納は皮肉気にそれだけ呟いて、疲れたように息を漏らした。
相手の状況は速水も解っている。長話は彼の体力的に辛いだろう。
そもそも、皮肉の応酬をするためにわざわざこの気に食わない男に会いにきたわけではないのだ。

「……アイツを返してもらうぜ」
「ああ、先生か……命を助けてやったんだからってコトかい? けど、あんたにゃ怪我人の治療は当り前の話なんだろ。それで俺が恩に着るとでも?」
「まさか」

速水はからりと笑った。
勝てる確信がある。
壁に寄り掛かって、少し遠いままで続けた。

「高速道路の法定制限速度って上限100キロだったよな。あんたは200キロ近くで走ってて、事故った。しかも重傷事故。一発で免許欠格だ」
「はっ。パトカーに上限速度はねえぜ」
「公用でこっちに向かってたワケじゃねえだろ。私用でサイレン使ってかっ飛ばすのは公私混同、職権濫用。マスコミが知ったら大喜びだろうなぁ。しがない地方病院の一医師と違って、警・察・庁は紛いなりにも中央官庁だし」
「…………ちっ」

加納が一つ舌打ちする。
それが加納の降伏の合図であり、速水の勝利を告げていた。
暫くぶりに心の底から晴々と速水は笑った。




加納の病室を出てすぐのところで田口が待っていた。
院内内線で呼び出しておいたのだ。
心配そうな顔で速水を見、ちらりと加納の病室のドアを見る田口の腕を掴んで、すぐに階段室に引きずり込む。人気のない場所で、一番近いのがそこだっただけだ。
田口の腰に腕を回し、全身で、潰れるほどに抱き締めた。

「え…………っ?」

戸惑う田口の唇にそっとキスをする。
ずっと、互いに禁じていた唇に触れる。

「……………………取り返した」

速水の低い囁きに、田口は目を見開いた。
何度か瞬きするうちに意味が解ったのだろう。
田口も両手を伸ばして、速水の首に縋りついた。

「速水っ! 速水速水速水速水、はや…………っ!!」
「田口…………田口…………」

堰き止めていた想いごと、田口が速水の名を呼ぶ。
溢れる想いのまま繰り返す。
速水の口からも田口の名が零れる。
ずっと聞きたかった。
相手の口から、相手の声で、自分の名前が聞きたかった。
今、それを咎める者はもういない。
そして重なる唇。舌が深く絡み合う。

「キャンディの味がしない…………」
「今日から解禁だ」

銀色の糸が切れるのが視界の端に捕えられる。
微笑と共に呟いた田口に、速水はからりと笑って言ったのだった。
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ほっとしました
こんにちは。
ドキドキしながら読ませていただいたシリーズ、田口先生もジェネラルも幸せなエンドで良かったです。
名前を連呼する田口先生の姿に涙が出そうになりました。
猟犬にはいろんな意味で苦い経験になりそうですね。
ハッピーエンドはとても嬉しかったですが、もしこの事故が無かったらどうなってたんだろう…と妄想してしまったりする自分がいたりします;;
とても楽しませていただき、ありがとうございました。
シラユキ 2009/05/17(Sun)15:21:00 編集
Re:ほっとしました
コメント有難うございます。
最終回、ちょっと躓いたんですけどね――。実は本気の暗黒ダークエンドもあったんですよ。流石にそれは……そのうちやるかもしれないけど。
猟犬が意外とアッサリ諦めちゃったのがちょっと反省点でしょうかね。
事故が無かったら? うーん……火喰い鳥にでもお出まし頂いて、猟犬を薙ぎ払っていただきましょうか? 二人で極北逃避行でもいいかな。
お付き合い有難う御座いました!
S.Kirishima 2009/05/18 11:10
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