3500番をヒットした由貴さまのリクエストです。
キリ番ヒットおめでとう&報告とリクエスト有難うデス。
今回のリクエストは「引き籠り三人衆の昔語り」ということです。
ちなみにウチの引き籠りとは、行灯、将軍、魔人の同期トリオです。
この三人に喋らせると、努力しなくても漫才方向に行くから不思議。デフォルトがコメディです。
それでは、同期三人+地雷原の合いの手でお願いします。
キリ番ヒットおめでとう&報告とリクエスト有難うデス。
今回のリクエストは「引き籠り三人衆の昔語り」ということです。
ちなみにウチの引き籠りとは、行灯、将軍、魔人の同期トリオです。
この三人に喋らせると、努力しなくても漫才方向に行くから不思議。デフォルトがコメディです。
それでは、同期三人+地雷原の合いの手でお願いします。
「引き籠りのお三方は、一緒にお出かけしたりはなさらないんですか?」
藤原看護師に問われ、速水と田口は顔を見合わせた。
一人渋い顔をするのは島津で、島津はそもそも引き籠りと言われるのが我慢ならないのだ。
曰く、病院内外で積極的に活動している俺がどうして「引き籠り」なんだ、と。藤原看護師応えて曰く、地下MRI室が主要な仕事場なんて立派な「引き籠り」だ、と。
それはさておき、お出かけの話だ。
「学生時代もあんまり出かけたことなかったよな、この面子じゃ」
「基本ポン友だから……雀荘がせいぜい?」
「大学の前じゃねえか」
速水に話を振られて田口が首を傾げながら呟くと、速水はにやりと笑った。
よくよく考えてみると、このメンバーでお出かけはほとんどない。
同期で最も親しかったと互いに認識しているのに、不可解な話である。
「そういや一回あったな、三人でドライブ」
「「あ――――」」
物覚えのいい島津が言いだしたので、速水と田口のウロ覚えコンビは間の抜けた相槌を打った。
「そうだ、確か俺が免許取ったばかりの時だ」
「強引に連れ出しやがってえ……死ぬかと思ったぞ」
速水が言うと、田口は恨めしそうな声で呟いた。
藤原看護師が好奇心の見え隠れする視線を向ける。田口は哀れっぽい声で訴えた。
「速水のヤツ、免許取り立てのくせして飛ばすんですよ。80オーバーで追い越しガンガンかけるし、もう怖くて怖くて。生きた心地しなかった」
「嘘吐けよ、お前後ろでしっかり寝てたじゃねえか」
「それは帰りの話。行きはコイツ、車酔いの挙句最初のサービスエリアに入った途端植え込みで吐き戻した」
「「…………そうだったっけ?」」
島津の証言に、速水も田口も首を傾げる。
島津はわざとらしいほど長い溜息を吐いて、頭を左右に振った。
「人に散々面倒かけといて、ちっとも覚えてないんだな、お前ら。藤原さん、コイツら昔からこうなんですよ」
「あらあら」
島津の訴えに藤原看護師は鷹揚な笑みを見せる。
が、速水と田口が落ち着かない気分になるのは当然だった。
自然と恨みの矛先は島津に向かう。
速水と田口の声が重なった。
「「地図間違ったくせに」」
島津の眉が跳ね上がった。
反論の中身を決めるより先に、島津は反射的に声を上げた。
「あれはっ」
「お前が地図読み違ったから、全然違う方行っちまったんだろ」
「テメェの運転が荒いから読み間違ったんだよっ」
「はぁ? 俺のせいにするのかよっ」
「おおよっ」
速水が受けて立てば、気の長いとは言えない二人だ、たちまちにヒートアップしてしまう。
今度は一人スローテンポの田口が溜息を吐く番だった。
しかし二人を止めないのが田口という男である。
藤原看護師が淹れたコーヒーを一口啜ると、昔話の続きを勝手に始めた。
「元々は●●方向に行く予定だったんです。助手席で地図見てたのが島津だったんだけど、どこでどう間違ったのか、××に出ちゃって。引き返そうにも時間的に厳しいものがあって……」
「そうだ! 戻れなくなったのはお前のせいだろ、速水!」
田口の言葉を拾い上げて島津が噛みついた。攻撃ネタが増えて調子づいている。
「何があったんです?」
当然ながら藤原看護師が尋ねた。ここで島津ではなく田口に尋ねる辺り、藤原看護師も魔人と将軍の対決を完全に無視する構えだ。
田口が苦笑と共に答えた。
「女の子二人にナンパされたんですよ、速水のヤツ」
「まあ」
「コイツも脂下がった顔でまあ、ダラダラと喋ってるもんだから、宿も決まってないのに日はどんどん暮れていくし」
「何だよ、宿を確保する為の情報収集だろ」
「「あのスケベ面は絶対違った」」
藤原看護師は実に面白そうな顔をする。
速水が辛うじて反論するが、島津と田口は揃ってきっぱり断言した。
速水に対しスケベ面だの何だのと、速水ファンの看護師が耳にしたら逆上しかねない暴言を吐くのは、同期のささやかな特権である。
島津と田口の態度に速水は一つ舌打ちしたが、不意にニヤリと笑って田口を見た。
「けどあん時、一番の大物を引っかけたのは行灯だったよな」
「…………ああ、そういやそうだった」
「あら、田口先生がナンパでもなさったんですか?」
島津にも頷かれ、田口は苦虫を噛み潰したような顔になった。
藤原看護師は今度は速水の方に話を振る。話を引き出せそうな人物を選ぶ技は匠の域だ。
案の定、速水は面白おかしく田口の「ナンパ」をご披露した。
「タケノコ採りに来ていて腰を悪くしたばあちゃんを田口が見つけたんですよ。『速水、車出せ』の一言で俺のナンパもそこで終わり。俺と島津と田口、残った席にはタケノコの籠とぎっくり腰のばあちゃんが座ったワケです」
「さすが東城大のワイドスペクトルコンビ、年寄り担当」
「五月蠅いよ、島津」
「田口先生らしいお話ね。でも大物というのは? 籠が大きかったのかしら?」
藤原看護師の質問に三人は顔を見合わせた。
三人の口元には笑みが浮かぶ。尤も、どこか面白がっている島津や速水と違い、田口の笑みは苦笑というべきものだったが。
話の流れで、最後のオチも速水が説明した。
「そのばあちゃん、民宿の女将さんだったんですよ。車の中で宿が無いって言ったら、じゃあ安く泊めてあげるって。古民家風の、当時の俺達にゃ分不相応ないい宿でした」
「あら、まあ。善行には善果があるものなんですね」
藤原看護師は田口に向かってにっこりと笑った。
子供を褒めるような態度と言えなくもないが、そういう温かい笑みを向けられれば田口も嬉しくなる。しかし同時に照れくさい。
「人徳ですかね」
「「自分で言うなよ」」
照れくささを誤魔化すように田口が言ったら、島津と速水は揃ってツッコミを入れる。お気楽な学生時代のままに喋っている三人を見ながら、藤原看護師はゆったりと笑うのだった。
藤原看護師に問われ、速水と田口は顔を見合わせた。
一人渋い顔をするのは島津で、島津はそもそも引き籠りと言われるのが我慢ならないのだ。
曰く、病院内外で積極的に活動している俺がどうして「引き籠り」なんだ、と。藤原看護師応えて曰く、地下MRI室が主要な仕事場なんて立派な「引き籠り」だ、と。
それはさておき、お出かけの話だ。
「学生時代もあんまり出かけたことなかったよな、この面子じゃ」
「基本ポン友だから……雀荘がせいぜい?」
「大学の前じゃねえか」
速水に話を振られて田口が首を傾げながら呟くと、速水はにやりと笑った。
よくよく考えてみると、このメンバーでお出かけはほとんどない。
同期で最も親しかったと互いに認識しているのに、不可解な話である。
「そういや一回あったな、三人でドライブ」
「「あ――――」」
物覚えのいい島津が言いだしたので、速水と田口のウロ覚えコンビは間の抜けた相槌を打った。
「そうだ、確か俺が免許取ったばかりの時だ」
「強引に連れ出しやがってえ……死ぬかと思ったぞ」
速水が言うと、田口は恨めしそうな声で呟いた。
藤原看護師が好奇心の見え隠れする視線を向ける。田口は哀れっぽい声で訴えた。
「速水のヤツ、免許取り立てのくせして飛ばすんですよ。80オーバーで追い越しガンガンかけるし、もう怖くて怖くて。生きた心地しなかった」
「嘘吐けよ、お前後ろでしっかり寝てたじゃねえか」
「それは帰りの話。行きはコイツ、車酔いの挙句最初のサービスエリアに入った途端植え込みで吐き戻した」
「「…………そうだったっけ?」」
島津の証言に、速水も田口も首を傾げる。
島津はわざとらしいほど長い溜息を吐いて、頭を左右に振った。
「人に散々面倒かけといて、ちっとも覚えてないんだな、お前ら。藤原さん、コイツら昔からこうなんですよ」
「あらあら」
島津の訴えに藤原看護師は鷹揚な笑みを見せる。
が、速水と田口が落ち着かない気分になるのは当然だった。
自然と恨みの矛先は島津に向かう。
速水と田口の声が重なった。
「「地図間違ったくせに」」
島津の眉が跳ね上がった。
反論の中身を決めるより先に、島津は反射的に声を上げた。
「あれはっ」
「お前が地図読み違ったから、全然違う方行っちまったんだろ」
「テメェの運転が荒いから読み間違ったんだよっ」
「はぁ? 俺のせいにするのかよっ」
「おおよっ」
速水が受けて立てば、気の長いとは言えない二人だ、たちまちにヒートアップしてしまう。
今度は一人スローテンポの田口が溜息を吐く番だった。
しかし二人を止めないのが田口という男である。
藤原看護師が淹れたコーヒーを一口啜ると、昔話の続きを勝手に始めた。
「元々は●●方向に行く予定だったんです。助手席で地図見てたのが島津だったんだけど、どこでどう間違ったのか、××に出ちゃって。引き返そうにも時間的に厳しいものがあって……」
「そうだ! 戻れなくなったのはお前のせいだろ、速水!」
田口の言葉を拾い上げて島津が噛みついた。攻撃ネタが増えて調子づいている。
「何があったんです?」
当然ながら藤原看護師が尋ねた。ここで島津ではなく田口に尋ねる辺り、藤原看護師も魔人と将軍の対決を完全に無視する構えだ。
田口が苦笑と共に答えた。
「女の子二人にナンパされたんですよ、速水のヤツ」
「まあ」
「コイツも脂下がった顔でまあ、ダラダラと喋ってるもんだから、宿も決まってないのに日はどんどん暮れていくし」
「何だよ、宿を確保する為の情報収集だろ」
「「あのスケベ面は絶対違った」」
藤原看護師は実に面白そうな顔をする。
速水が辛うじて反論するが、島津と田口は揃ってきっぱり断言した。
速水に対しスケベ面だの何だのと、速水ファンの看護師が耳にしたら逆上しかねない暴言を吐くのは、同期のささやかな特権である。
島津と田口の態度に速水は一つ舌打ちしたが、不意にニヤリと笑って田口を見た。
「けどあん時、一番の大物を引っかけたのは行灯だったよな」
「…………ああ、そういやそうだった」
「あら、田口先生がナンパでもなさったんですか?」
島津にも頷かれ、田口は苦虫を噛み潰したような顔になった。
藤原看護師は今度は速水の方に話を振る。話を引き出せそうな人物を選ぶ技は匠の域だ。
案の定、速水は面白おかしく田口の「ナンパ」をご披露した。
「タケノコ採りに来ていて腰を悪くしたばあちゃんを田口が見つけたんですよ。『速水、車出せ』の一言で俺のナンパもそこで終わり。俺と島津と田口、残った席にはタケノコの籠とぎっくり腰のばあちゃんが座ったワケです」
「さすが東城大のワイドスペクトルコンビ、年寄り担当」
「五月蠅いよ、島津」
「田口先生らしいお話ね。でも大物というのは? 籠が大きかったのかしら?」
藤原看護師の質問に三人は顔を見合わせた。
三人の口元には笑みが浮かぶ。尤も、どこか面白がっている島津や速水と違い、田口の笑みは苦笑というべきものだったが。
話の流れで、最後のオチも速水が説明した。
「そのばあちゃん、民宿の女将さんだったんですよ。車の中で宿が無いって言ったら、じゃあ安く泊めてあげるって。古民家風の、当時の俺達にゃ分不相応ないい宿でした」
「あら、まあ。善行には善果があるものなんですね」
藤原看護師は田口に向かってにっこりと笑った。
子供を褒めるような態度と言えなくもないが、そういう温かい笑みを向けられれば田口も嬉しくなる。しかし同時に照れくさい。
「人徳ですかね」
「「自分で言うなよ」」
照れくささを誤魔化すように田口が言ったら、島津と速水は揃ってツッコミを入れる。お気楽な学生時代のままに喋っている三人を見ながら、藤原看護師はゆったりと笑うのだった。
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COMMENT
遅くなりました。
お久しぶりです。遅くなりましたが、しっかり読ませていただきました。ありがとうございます。
今回も素敵な小説をありがとうございます。三人で話す時のポンポンと弾むようなやり取りが読めて幸せです。
これからも応援していますので、頑張ってください。それでは失礼します。
今回も素敵な小説をありがとうございます。三人で話す時のポンポンと弾むようなやり取りが読めて幸せです。
これからも応援していますので、頑張ってください。それでは失礼します。
Re:遅くなりました。
コメント有難う御座います。
あ、あんなんでよろしかったでしょうか? あーゆう回想トークより、学生時代そのものをやった方がよかったのかなぁと、書いてから考え込んだりもしたんですが。
漫才調のトークは書いてて楽しかったです。一応三人が全ての組み合わせでハモったのですが、放っとくと将軍と行灯先生でハモる台詞が多くなりそうでちょっとビックリでした。何て仲良しさん。
また遊びにいらしてくださいませ。
あ、あんなんでよろしかったでしょうか? あーゆう回想トークより、学生時代そのものをやった方がよかったのかなぁと、書いてから考え込んだりもしたんですが。
漫才調のトークは書いてて楽しかったです。一応三人が全ての組み合わせでハモったのですが、放っとくと将軍と行灯先生でハモる台詞が多くなりそうでちょっとビックリでした。何て仲良しさん。
また遊びにいらしてくださいませ。