2500番をヒットした由貴さまからのリクエストです。
キリ番ヒットおめでとう&報告とリクエスト有難うデス。
さてリクエストは「病院の宴会で院長に猫っかわいがりされる行灯先生とヤキモキする将軍」でございます。
……タイトル見ると、あんまり可愛がられてないようですよ?
どんな出来になるやらです。
ところで劇中使ったデュエットの定番ソング、若い人は知らないよなぁ。ようつべにありますので覗いてみてください。ボカロのミクも歌ってるっぽいよ。
そういえば当たり前のようにカラオケセットが登場してますが……りょ、療法の一つにあるんだよ、歌唱療法! うん、それで使うんだ、きっと。
……苦しいかな。
キリ番ヒットおめでとう&報告とリクエスト有難うデス。
さてリクエストは「病院の宴会で院長に猫っかわいがりされる行灯先生とヤキモキする将軍」でございます。
……タイトル見ると、あんまり可愛がられてないようですよ?
どんな出来になるやらです。
ところで劇中使ったデュエットの定番ソング、若い人は知らないよなぁ。ようつべにありますので覗いてみてください。ボカロのミクも歌ってるっぽいよ。
そういえば当たり前のようにカラオケセットが登場してますが……りょ、療法の一つにあるんだよ、歌唱療法! うん、それで使うんだ、きっと。
……苦しいかな。
「何で私が」
そう言って田口は絶句した。
速水の方はというと眼を見開いて呆然とするばかり。
二人に爆弾発言を突きつけた腹黒狸病院長は、にこにこと人畜無害そうな笑みを浮かべるだけだった。
病院内の宴会だった。
日頃のストレスを発散したいのか、病院の宴会は業務多忙の隙を縫って多々行われる。本日の宴会の名目は最早どうでもよかった。
兵藤に太鼓もちを押しつけて逃げるつもりだったらしい田口を、速水は強引に引っ張り出した。速水自身、病院の宴会に参加するのは久々だ。
参加はしたが、田口の傍にいて「同期で飲んでいるから邪魔するな」という姿勢を作ったので、必要以上に呑まされたり絡まれたりバカ騒ぎに巻き込まれずに済んでいた。
田口の表情もとろんと緩んでいて、これなら宴会もいいかと思っていたら、速水のバリアをものともしない強者……高階病院長が現れたのである。
ちょいちょいと指先で招かれ、挨拶がてら顔を出した田口に突きつけられたのが一本のマイクと。
「デュエットしませんか?」
……という高階のセリフだったワケだ。
「何で私が」
「女性に言うと、セクハラだと言われますでしょ」
「院長権限を嵩にかかるのはパワハラじゃないんですか?」
「私のところにくるお中元のコーヒー豆、お裾分けしますよ」
「……………………仕方ありませんね」
という、何とも低レベルなやり取りを経て、田口は高階とデュエットする羽目になった。
「お前っ」
「一曲付き合えば病院長の気も済むさ。こーいう場合ってやっぱり俺が女性パートだよなぁ……あーぁ」
やる、と決めてしまえば諦めの早いのが田口である。
憮然とした表情を隠そうともしない速水に肩を竦めて、誂えられたステージの高階の隣に立った。
高階から飛んでくるニヤついた視線が、速水には腹立たしくて仕方ない。
あれは絶対、解っていて遊んでいる。
親父的宴会の定番デュエットソングのイントロに速水の眉間の皺はますます深くなった。
歌い出しは女性、つまり田口からだ。
「飲み過ぎたーのは、あなたのせーいよ♪」
「弱い女のぉ愛しさよ♪」
腹の中はともかく外見ロマンスグレーな高階病院長は、歌もそれなりに巧みである。どこかのお調子者が高く口笛を鳴らした。当然ながら、速水には耳障りにしか聞こえなかった。
速水がイライラしているのもお構いなしで、歌は進む。
意外な器用さを発揮して、田口は女性パートの高いキーに何とか合わせて歌う。田口の歌だけ聞けるなら、男性歌手のロックだろうが女性歌手のラブソングだろうが、速水にとっては「妙なる調べ」だ。
だが。
「うそぉつ、きね」
「困ぁらせ、る」
「意地ぃ悪ね」
「わかぁるだろ」
掛け合いの部分で、わざとらしく田口を見る高階がどうにも気に入らない。田口の方は居た堪れなくて視線がうろうろしている。
「嫌がってんだから止めろっての」
速水の呟きは周囲のノリに呑まれてしまう。
サビに向かいますます盛り上がる周囲を余所に、速水の機嫌は下降していく一方だ。
「飲みすぎたーのは、あなたのせーいよ」
「弱い女のぉいとしさよ」
「抱きぃしめて」
「抱きぃしめて~~帰ーしたくぅない~~」
挙句、この下りで高階は田口の肩を抱き寄せたのである。
小柄な高階が、普通の成年男子並みに身長のある田口にそれをやるのは少し難しかったらしく、田口は顰め面で前のめりになっている。
「なっ」
セクハラだろう、それは。
速水の心の声が表に出る前に、歌はタイトルをコールして終了だ。
「「男と女のラブ、ゲー、ムっ♪」」
そこでぶつん、と演奏が切れた。
この歌は二番もある筈だ。
高階と田口と、その他一同が驚く視線の先で、リモコンを手にした藤原看護師がニッコリと笑っていた。
「そのくらいで十分じゃないですか、高階先生。ウチの優秀な救命救急医が発狂寸前ですよ」
優秀な救命救急医……つまり速水のことだ。
高階病院長は速水を見て、呆れた顔を隠そうとしなかった。飛んできた視線に速水はガンを返す。
「やれやれ、今日はここまでですかねえ」
「後は別の方を誘って下さい」
高階がぼやくように呟くのに合わせて、田口はさっさとマイクを返した。
そのまま速水の隣に戻ってくる。
歌が中途半端に終わったために白けかけた空気だったが、すかさず藤原看護師がオーダーしたノリのいい曲が流れることで場は盛り返した。
田口が腰を下ろした途端、速水は田口を抱き締めた。
「速水? そんなに寂しかったのか?」
くすくす笑いながら田口は尋ねてくる。衆人の中にも拘わらず速水を振り払おうとしないのは、速水の心境を些かなりとも解っているためだ。
「ちっくしょ――、狸のヤツ。行灯にベタベタ触りやがってえ」
「はいはい。心配しなくても、俺はお前のものだって」
「当たり前だろ」
そうは言っても、いや、速水のものだからこそ、他の誰かが田口に触るのは許し難いものがある。
取り敢えず高階が触った場所は全て消毒の必要アリだ。
田口を腕に抱き込んであちこち撫で回しながら、速水は宴を抜け出す算段を考えるのだった。
そう言って田口は絶句した。
速水の方はというと眼を見開いて呆然とするばかり。
二人に爆弾発言を突きつけた腹黒狸病院長は、にこにこと人畜無害そうな笑みを浮かべるだけだった。
病院内の宴会だった。
日頃のストレスを発散したいのか、病院の宴会は業務多忙の隙を縫って多々行われる。本日の宴会の名目は最早どうでもよかった。
兵藤に太鼓もちを押しつけて逃げるつもりだったらしい田口を、速水は強引に引っ張り出した。速水自身、病院の宴会に参加するのは久々だ。
参加はしたが、田口の傍にいて「同期で飲んでいるから邪魔するな」という姿勢を作ったので、必要以上に呑まされたり絡まれたりバカ騒ぎに巻き込まれずに済んでいた。
田口の表情もとろんと緩んでいて、これなら宴会もいいかと思っていたら、速水のバリアをものともしない強者……高階病院長が現れたのである。
ちょいちょいと指先で招かれ、挨拶がてら顔を出した田口に突きつけられたのが一本のマイクと。
「デュエットしませんか?」
……という高階のセリフだったワケだ。
「何で私が」
「女性に言うと、セクハラだと言われますでしょ」
「院長権限を嵩にかかるのはパワハラじゃないんですか?」
「私のところにくるお中元のコーヒー豆、お裾分けしますよ」
「……………………仕方ありませんね」
という、何とも低レベルなやり取りを経て、田口は高階とデュエットする羽目になった。
「お前っ」
「一曲付き合えば病院長の気も済むさ。こーいう場合ってやっぱり俺が女性パートだよなぁ……あーぁ」
やる、と決めてしまえば諦めの早いのが田口である。
憮然とした表情を隠そうともしない速水に肩を竦めて、誂えられたステージの高階の隣に立った。
高階から飛んでくるニヤついた視線が、速水には腹立たしくて仕方ない。
あれは絶対、解っていて遊んでいる。
親父的宴会の定番デュエットソングのイントロに速水の眉間の皺はますます深くなった。
歌い出しは女性、つまり田口からだ。
「飲み過ぎたーのは、あなたのせーいよ♪」
「弱い女のぉ愛しさよ♪」
腹の中はともかく外見ロマンスグレーな高階病院長は、歌もそれなりに巧みである。どこかのお調子者が高く口笛を鳴らした。当然ながら、速水には耳障りにしか聞こえなかった。
速水がイライラしているのもお構いなしで、歌は進む。
意外な器用さを発揮して、田口は女性パートの高いキーに何とか合わせて歌う。田口の歌だけ聞けるなら、男性歌手のロックだろうが女性歌手のラブソングだろうが、速水にとっては「妙なる調べ」だ。
だが。
「うそぉつ、きね」
「困ぁらせ、る」
「意地ぃ悪ね」
「わかぁるだろ」
掛け合いの部分で、わざとらしく田口を見る高階がどうにも気に入らない。田口の方は居た堪れなくて視線がうろうろしている。
「嫌がってんだから止めろっての」
速水の呟きは周囲のノリに呑まれてしまう。
サビに向かいますます盛り上がる周囲を余所に、速水の機嫌は下降していく一方だ。
「飲みすぎたーのは、あなたのせーいよ」
「弱い女のぉいとしさよ」
「抱きぃしめて」
「抱きぃしめて~~帰ーしたくぅない~~」
挙句、この下りで高階は田口の肩を抱き寄せたのである。
小柄な高階が、普通の成年男子並みに身長のある田口にそれをやるのは少し難しかったらしく、田口は顰め面で前のめりになっている。
「なっ」
セクハラだろう、それは。
速水の心の声が表に出る前に、歌はタイトルをコールして終了だ。
「「男と女のラブ、ゲー、ムっ♪」」
そこでぶつん、と演奏が切れた。
この歌は二番もある筈だ。
高階と田口と、その他一同が驚く視線の先で、リモコンを手にした藤原看護師がニッコリと笑っていた。
「そのくらいで十分じゃないですか、高階先生。ウチの優秀な救命救急医が発狂寸前ですよ」
優秀な救命救急医……つまり速水のことだ。
高階病院長は速水を見て、呆れた顔を隠そうとしなかった。飛んできた視線に速水はガンを返す。
「やれやれ、今日はここまでですかねえ」
「後は別の方を誘って下さい」
高階がぼやくように呟くのに合わせて、田口はさっさとマイクを返した。
そのまま速水の隣に戻ってくる。
歌が中途半端に終わったために白けかけた空気だったが、すかさず藤原看護師がオーダーしたノリのいい曲が流れることで場は盛り返した。
田口が腰を下ろした途端、速水は田口を抱き締めた。
「速水? そんなに寂しかったのか?」
くすくす笑いながら田口は尋ねてくる。衆人の中にも拘わらず速水を振り払おうとしないのは、速水の心境を些かなりとも解っているためだ。
「ちっくしょ――、狸のヤツ。行灯にベタベタ触りやがってえ」
「はいはい。心配しなくても、俺はお前のものだって」
「当たり前だろ」
そうは言っても、いや、速水のものだからこそ、他の誰かが田口に触るのは許し難いものがある。
取り敢えず高階が触った場所は全て消毒の必要アリだ。
田口を腕に抱き込んであちこち撫で回しながら、速水は宴を抜け出す算段を考えるのだった。
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COMMENT
読ませていただきました
ありがとうございます。メールを見てさっそく読ませていただきました。
藤原さんが凄いかっこいい方になっていて驚きました。速水先生は本当に田口先生が好きなんですね(笑)。
こんな素敵な小説をありがとうございます。それでは短文で申し訳ありませんが、失礼します。
藤原さんが凄いかっこいい方になっていて驚きました。速水先生は本当に田口先生が好きなんですね(笑)。
こんな素敵な小説をありがとうございます。それでは短文で申し訳ありませんが、失礼します。
Re:読ませていただきました
いらっしゃいませ。早速の御来訪、有難う御座います。
こ、こんなんでよかったですか?
何かだんだん、ウチの地雷原さまは「花嫁の母」になってきた気がします。分からず屋の花嫁の父に隠れてこっそり花嫁を助けてくれる役どころ。そりゃ時々は花婿をイジメたりもしますけど。
多少なりとも喜んでいただければ幸いです。
ではではっ。またのお運びをお待ちしております。
こ、こんなんでよかったですか?
何かだんだん、ウチの地雷原さまは「花嫁の母」になってきた気がします。分からず屋の花嫁の父に隠れてこっそり花嫁を助けてくれる役どころ。そりゃ時々は花婿をイジメたりもしますけど。
多少なりとも喜んでいただければ幸いです。
ではではっ。またのお運びをお待ちしております。