さて、4回目です。
無理に終わらせたので、前回に比べるとやったらと長いです。
それでも終わったは終わったぞ。いーや、もう。
サイトの方も更新しています。
何だか、ちょうどサイトアップの時期になると「●●の続き書いて」ってリクが来るような気がする……。
無理に終わらせたので、前回に比べるとやったらと長いです。
それでも終わったは終わったぞ。いーや、もう。
サイトの方も更新しています。
何だか、ちょうどサイトアップの時期になると「●●の続き書いて」ってリクが来るような気がする……。
~ 速水 ~
「速水…………っ!」
追ってきた声が嬉しかった。
何を話せばいいかは、てんで解らなかったが。
足を止めた俺の前で、田口は肩で息をしている。
気が付くと、雀荘から結構遠いところまできていたらしい。現地点からは「すずめ」より俺の家の方が近かった。
それを走ってきたのなら、田口の息が上がるのも当然だろう。尤も田口の場合、日頃の運動不足が大いに祟っているのもあるだろうが。
呼吸を整えた田口と眼が合った。
「何だよ」
「なにって、その…………」
俺が問いかけると、田口は視線を下に落とした。ちらりと俺の顔を伺い、また下を向く。
「ええと…………」
なかなか言葉が出てこないらしい。そもそも、何を言うのか考えてもいなかったようだ。
「話無いんなら俺帰るけど」
「あ、と、うん…………」
引き止めるには弱い声。俺は踵を返した。
今は田口の顔を見ているのはちょっとしんどい。
カノジョ候補が現れたのは田口の責任ではないのに、田口に腹を立てている自分を、今日はまだコントロールできない。
それなのに、そんな俺に田口は追い討ちをかけた。
「えっと、ゴメンっ」
「…………何で?」
「だってお前、怒ってるだろ? 俺のせいか?」
前後の脈絡なしに謝られて、俺は思わず足を止めて再度振り返った。
田口は微妙な上目遣いで俺を見ながら喋る。
「俺が何したのかは正直解らないけど、でも…………あっ」
田口の表情が変わった。何かに気付いたのか、目を丸くして俺を見る。
「もしかして、お前の本命って向井さんっ?!」
「はあ?」
「いや、だって……本命を横から掻っ攫われたって彦根も言ったし……それで俺に腹を立ててたのか?」
呆れた。
いや、田口の思考回路の方が真っ当なのか。
俺は田口に交際を申し込んだ女の名前すらうろ覚えだというのに。
呆れて、ついでに笑えてきた。
俺の本命に気付いた(つもりの)田口の顔が可笑しかった。
からかい甲斐のある顔。
結局俺は、田口と二人きりで不機嫌でいることなんて出来ないらしい。
「だったらどうする?」
底意地の悪い質問だ。
聞きたい答えがある。多分、言ってくれると思う。
それが解っていてわざわざ試すのは、我ながらしつこいと思った。
「だったら…………俺が退くしかないだろ」
「退くのか? お前の彼女になってくれる女なんて、この先現れないかもしれないぞ?」
「俺がお前に敵うワケないだろ」
田口は眉間に皺を浮かべてちょっと渋い顔をしている。
ただこの顔はよく見たものだ。島津もよくやる。
つまり「ああヤだ、モテる男はよぉ」という演技だ。本当に僻んでいるワケではないから、俺も大いに「モテるんだ、羨ましいだろう」と威張り返す。ダチだからこそ出来るノリだろう。
そんな表情から、田口は今度は苦笑を浮かべた。
俺は余すところなくその表情を記憶に留める。どんな欠片も見逃さない。
「向井さんには悪いけど、そんな切羽詰まってカノジョが欲しいワケじゃないし。お前と気まずくなるくらいなら、俺は身を退くよ」
「……それって、カノジョより俺の方が大事って意味だよな?」
「まあ……そうなるかな。今のところはだぞ! これから、お前にも譲れないほど好きな子が出来るかもしれないしっ」
念を押すと、田口は照れたように視線を逸らした。
半端だろうが何だろうが、肯定には違いない。
聞きたい言葉が聞けた。嬉しいと思う。
俺は手を伸ばして、田口を抱き締めた。
彦根にも、いつまでもグダグダやってんなってイヤミ言われたことだし、ここらが潮時なのかもしれない。
俺にも譲れないほど好きな女なんて、作られて堪るかとも思ったが。
「は、速水っ?!」
「違うよ、バカ」
「違うって何がっ」
「俺の本命」
突然の俺のアクションに慌てふためいていた田口だが、俺の言葉にピタリと動くのを止めて俺を見上げてきた。田口を囲い込んだまま上手く距離を取って視線を合わせる。
「俺の本命はお前だよ、田口」
「…………お、れ? だってお前カノジョ…………」
「続いてないだろ」
本命のいる男が、別の女と長続きするワケがない。俺の交際サイクルが短いのは当たり前の道理なのだ。
顔を見れば解る、まだ話を消化しきれていない田口の耳に、俺は暗示をかけるように吹き込んだ。
他のどんな人間の声も掻き消して、俺の声だけが田口の中に残ればいい。
「お前が好きだよ。だから、カノジョなんか作るな。俺の傍にいろよ」
「は、やみ…………っ」
「なあ。好きだよ」
俺は田口の耳に囁き続ける。
唇に触れるか触れないかギリギリの耳殻から、田口の熱が伝わってくる気がした。
「…………で、結局どうなったよ?」
「さあな」
数日後、島津に訊かれたが俺は笑ってそう返した。
少なくとも田口は向井とやらとの交際を断った。
俺も、女からの告白は全てお断りしている状態だ。
俺は隙を見ては田口を口説き、田口はイエスもノーもくれずに答えをはぐらかし続けている。
俺の答えに島津は心底呆れたような顔をしたが、俺は焦る気はなかった。
この状況もそう長くは続かないと俺は踏んでいる。
冬の空に欲しいと思った星は、もうすぐ俺のものになるだろう。
俺の顔を見てふわっと柔らかく笑う田口に、俺も軽く手を挙げて笑った。
「速水…………っ!」
追ってきた声が嬉しかった。
何を話せばいいかは、てんで解らなかったが。
足を止めた俺の前で、田口は肩で息をしている。
気が付くと、雀荘から結構遠いところまできていたらしい。現地点からは「すずめ」より俺の家の方が近かった。
それを走ってきたのなら、田口の息が上がるのも当然だろう。尤も田口の場合、日頃の運動不足が大いに祟っているのもあるだろうが。
呼吸を整えた田口と眼が合った。
「何だよ」
「なにって、その…………」
俺が問いかけると、田口は視線を下に落とした。ちらりと俺の顔を伺い、また下を向く。
「ええと…………」
なかなか言葉が出てこないらしい。そもそも、何を言うのか考えてもいなかったようだ。
「話無いんなら俺帰るけど」
「あ、と、うん…………」
引き止めるには弱い声。俺は踵を返した。
今は田口の顔を見ているのはちょっとしんどい。
カノジョ候補が現れたのは田口の責任ではないのに、田口に腹を立てている自分を、今日はまだコントロールできない。
それなのに、そんな俺に田口は追い討ちをかけた。
「えっと、ゴメンっ」
「…………何で?」
「だってお前、怒ってるだろ? 俺のせいか?」
前後の脈絡なしに謝られて、俺は思わず足を止めて再度振り返った。
田口は微妙な上目遣いで俺を見ながら喋る。
「俺が何したのかは正直解らないけど、でも…………あっ」
田口の表情が変わった。何かに気付いたのか、目を丸くして俺を見る。
「もしかして、お前の本命って向井さんっ?!」
「はあ?」
「いや、だって……本命を横から掻っ攫われたって彦根も言ったし……それで俺に腹を立ててたのか?」
呆れた。
いや、田口の思考回路の方が真っ当なのか。
俺は田口に交際を申し込んだ女の名前すらうろ覚えだというのに。
呆れて、ついでに笑えてきた。
俺の本命に気付いた(つもりの)田口の顔が可笑しかった。
からかい甲斐のある顔。
結局俺は、田口と二人きりで不機嫌でいることなんて出来ないらしい。
「だったらどうする?」
底意地の悪い質問だ。
聞きたい答えがある。多分、言ってくれると思う。
それが解っていてわざわざ試すのは、我ながらしつこいと思った。
「だったら…………俺が退くしかないだろ」
「退くのか? お前の彼女になってくれる女なんて、この先現れないかもしれないぞ?」
「俺がお前に敵うワケないだろ」
田口は眉間に皺を浮かべてちょっと渋い顔をしている。
ただこの顔はよく見たものだ。島津もよくやる。
つまり「ああヤだ、モテる男はよぉ」という演技だ。本当に僻んでいるワケではないから、俺も大いに「モテるんだ、羨ましいだろう」と威張り返す。ダチだからこそ出来るノリだろう。
そんな表情から、田口は今度は苦笑を浮かべた。
俺は余すところなくその表情を記憶に留める。どんな欠片も見逃さない。
「向井さんには悪いけど、そんな切羽詰まってカノジョが欲しいワケじゃないし。お前と気まずくなるくらいなら、俺は身を退くよ」
「……それって、カノジョより俺の方が大事って意味だよな?」
「まあ……そうなるかな。今のところはだぞ! これから、お前にも譲れないほど好きな子が出来るかもしれないしっ」
念を押すと、田口は照れたように視線を逸らした。
半端だろうが何だろうが、肯定には違いない。
聞きたい言葉が聞けた。嬉しいと思う。
俺は手を伸ばして、田口を抱き締めた。
彦根にも、いつまでもグダグダやってんなってイヤミ言われたことだし、ここらが潮時なのかもしれない。
俺にも譲れないほど好きな女なんて、作られて堪るかとも思ったが。
「は、速水っ?!」
「違うよ、バカ」
「違うって何がっ」
「俺の本命」
突然の俺のアクションに慌てふためいていた田口だが、俺の言葉にピタリと動くのを止めて俺を見上げてきた。田口を囲い込んだまま上手く距離を取って視線を合わせる。
「俺の本命はお前だよ、田口」
「…………お、れ? だってお前カノジョ…………」
「続いてないだろ」
本命のいる男が、別の女と長続きするワケがない。俺の交際サイクルが短いのは当たり前の道理なのだ。
顔を見れば解る、まだ話を消化しきれていない田口の耳に、俺は暗示をかけるように吹き込んだ。
他のどんな人間の声も掻き消して、俺の声だけが田口の中に残ればいい。
「お前が好きだよ。だから、カノジョなんか作るな。俺の傍にいろよ」
「は、やみ…………っ」
「なあ。好きだよ」
俺は田口の耳に囁き続ける。
唇に触れるか触れないかギリギリの耳殻から、田口の熱が伝わってくる気がした。
「…………で、結局どうなったよ?」
「さあな」
数日後、島津に訊かれたが俺は笑ってそう返した。
少なくとも田口は向井とやらとの交際を断った。
俺も、女からの告白は全てお断りしている状態だ。
俺は隙を見ては田口を口説き、田口はイエスもノーもくれずに答えをはぐらかし続けている。
俺の答えに島津は心底呆れたような顔をしたが、俺は焦る気はなかった。
この状況もそう長くは続かないと俺は踏んでいる。
冬の空に欲しいと思った星は、もうすぐ俺のものになるだろう。
俺の顔を見てふわっと柔らかく笑う田口に、俺も軽く手を挙げて笑った。
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COMMENT
ホッとしました(^^)
このまま20年片思い状態に突入かとどきどきしてしまいましたが、素敵なエンドをありがとうございますっ!もうすぐですよ、将軍。頑張って!!
ゲリラな人の働き大ですねvきっと彼も元に戻った行灯の笑顔に幸せな気分になっているんでしょうね。
ずっとずっと気になっていたので悩ませるリクをしてしまいましたが、期待以上のお話が読めて幸せでした!
これからも素敵な2人(+時々将軍いじめ)が読めるのを楽しみにしています。
どうもありがとうございました!!!
みなぎ
ゲリラな人の働き大ですねvきっと彼も元に戻った行灯の笑顔に幸せな気分になっているんでしょうね。
ずっとずっと気になっていたので悩ませるリクをしてしまいましたが、期待以上のお話が読めて幸せでした!
これからも素敵な2人(+時々将軍いじめ)が読めるのを楽しみにしています。
どうもありがとうございました!!!
みなぎ
Re:ホッとしました(^^)
コメント有難う御座います。長々とお待たせいたしました……。
>このまま20年片思い状態
実は危なかったデス(笑)。書いてる間、「これホントにくっつくんかよ?」って何度も思いました。何とかくっつきそうな方向へ辿り着いたとゆーか……。
>ゲリラ大活躍
何か、霧島の脳内では彼は二人の仲を取り持つ役回りです。そんでもって迷惑かけられるのは魔人と決まってるらしい。
ウチ、将軍イジメだけじゃなくて魔人イジメサイトでもあるみたいですよ。
ホントに長らくお待たせした上に愚痴っぽくて申し訳ありませんでした。
改めてキリ番ヒットおめでとう御座います。
また遊びに来てやって下さいませ。
>このまま20年片思い状態
実は危なかったデス(笑)。書いてる間、「これホントにくっつくんかよ?」って何度も思いました。何とかくっつきそうな方向へ辿り着いたとゆーか……。
>ゲリラ大活躍
何か、霧島の脳内では彼は二人の仲を取り持つ役回りです。そんでもって迷惑かけられるのは魔人と決まってるらしい。
ウチ、将軍イジメだけじゃなくて魔人イジメサイトでもあるみたいですよ。
ホントに長らくお待たせした上に愚痴っぽくて申し訳ありませんでした。
改めてキリ番ヒットおめでとう御座います。
また遊びに来てやって下さいませ。