本気でダーク警報発令中。死にネタ注意!
シリアス月間に止めを刺すべく、出さずにいた「残酷にその名を」のダークエンドバージョンをお披露目します。
「残酷に~・3」からこちらへ枝分かれです。
死にネタは無理って人は逃げましょう。
シリアス月間に止めを刺すべく、出さずにいた「残酷にその名を」のダークエンドバージョンをお披露目します。
「残酷に~・3」からこちらへ枝分かれです。
死にネタは無理って人は逃げましょう。
ピ―――――っ!
フラットになった心電図の音が処置室に響く。
二度と戻らない命を宣告するその音が、しかし速水には勝利の鐘に聞こえた。
「は、っ」
駆け込んできた田口は速水の名を呼びかけて、途中で息を呑んだ。
こんな時でさえ、誰にも言わない誓いを守っている律儀さが愛おしい。
速水はゆるりと笑って口を開いた。
今、全ての柵をブチ壊す。
「午前1時28分、死亡を確認した」
「そんな…………っ」
田口は絶句し、処置室の扉を見つめた。
加納の遺体はまだこの扉の向こうにある。看護師が死後の処置の最中だ。
田口の青白い頬に、速水はそっと指を伸ばした。口元に笑みが浮かぶ。
弾かれたように田口が振り返る。速水の笑みに気付き、ますます目を丸くして速水を凝視した。瞬きすら忘れている。
「やっと、取り戻した」
「……………お前、まさか…………」
田口の声は自然と震える。
まさか、と思う。冗談にだって口に出来ない、最悪の想像を田口はしてしまう。
「まさか。そんなわけないだろう」
速水にもその想像は伝わった。軽く笑って否定する。
田口の肩の力が瞬間抜けた。こんな場合なのに、思わず笑みが零れた。
「そう、だよな」
「ああ。俺は何もしていないよ」
速水の声に混じった不穏なもの。田口はそれに気付いた。
田口が見つめる先で、速水の笑みは更に深くなった。
「ただ、何もしなかっただけだ」
幾つかの出血点に処置をしなかった。放置しただけ。
それが故意かどうかなど、処置室にいた人間にだって判断出来ない。
田口が絶望的な声音で呟いた。
「お前、何てことを…………っ」
「お前の為だよ。解ってるんだろ」
速水は手を伸ばした。小さく震える田口の身体を抱き寄せる。
腕の中にすっかり納めてしまえば、田口の震えも次第に消えていく。速水の肩に預けられた田口の頭を速水はゆっくりと撫でた。
「取り戻した……もう誰にもやらない。お前は、ずっと、俺のものだ……」
うわ言のような呟きが田口の耳に落ちる。
速水の声を聞き、髪を梳く指を感じながら田口は目を閉じた。
二人が踏み外した道の上にいることは、田口も十分に解っている。
速水は間違えた。
だが、それを嬉しく思ってしまう田口も十分に人でなしで、間違っている。
「速水…………」
名前を呼んで甘く強請れば、期待通りにキスが降ってきた。
すぐに舌が絡み合い、背中を抱く腕の力が強くなり、絡みあう足は無意識のうちに互いの性器を擦り合わせようとする。
「俺はずっと、お前のものだよ、速水」
唇が離れた隙に田口は囁く。
速水は子供のように、嬉しそうに笑った。
フラットになった心電図の音が処置室に響く。
二度と戻らない命を宣告するその音が、しかし速水には勝利の鐘に聞こえた。
「は、っ」
駆け込んできた田口は速水の名を呼びかけて、途中で息を呑んだ。
こんな時でさえ、誰にも言わない誓いを守っている律儀さが愛おしい。
速水はゆるりと笑って口を開いた。
今、全ての柵をブチ壊す。
「午前1時28分、死亡を確認した」
「そんな…………っ」
田口は絶句し、処置室の扉を見つめた。
加納の遺体はまだこの扉の向こうにある。看護師が死後の処置の最中だ。
田口の青白い頬に、速水はそっと指を伸ばした。口元に笑みが浮かぶ。
弾かれたように田口が振り返る。速水の笑みに気付き、ますます目を丸くして速水を凝視した。瞬きすら忘れている。
「やっと、取り戻した」
「……………お前、まさか…………」
田口の声は自然と震える。
まさか、と思う。冗談にだって口に出来ない、最悪の想像を田口はしてしまう。
「まさか。そんなわけないだろう」
速水にもその想像は伝わった。軽く笑って否定する。
田口の肩の力が瞬間抜けた。こんな場合なのに、思わず笑みが零れた。
「そう、だよな」
「ああ。俺は何もしていないよ」
速水の声に混じった不穏なもの。田口はそれに気付いた。
田口が見つめる先で、速水の笑みは更に深くなった。
「ただ、何もしなかっただけだ」
幾つかの出血点に処置をしなかった。放置しただけ。
それが故意かどうかなど、処置室にいた人間にだって判断出来ない。
田口が絶望的な声音で呟いた。
「お前、何てことを…………っ」
「お前の為だよ。解ってるんだろ」
速水は手を伸ばした。小さく震える田口の身体を抱き寄せる。
腕の中にすっかり納めてしまえば、田口の震えも次第に消えていく。速水の肩に預けられた田口の頭を速水はゆっくりと撫でた。
「取り戻した……もう誰にもやらない。お前は、ずっと、俺のものだ……」
うわ言のような呟きが田口の耳に落ちる。
速水の声を聞き、髪を梳く指を感じながら田口は目を閉じた。
二人が踏み外した道の上にいることは、田口も十分に解っている。
速水は間違えた。
だが、それを嬉しく思ってしまう田口も十分に人でなしで、間違っている。
「速水…………」
名前を呼んで甘く強請れば、期待通りにキスが降ってきた。
すぐに舌が絡み合い、背中を抱く腕の力が強くなり、絡みあう足は無意識のうちに互いの性器を擦り合わせようとする。
「俺はずっと、お前のものだよ、速水」
唇が離れた隙に田口は囁く。
速水は子供のように、嬉しそうに笑った。
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COMMENT
読めてうれしいです
こんにちは。
残酷にその名をシリーズのダークエンド版、実は以前伺ったときからずっと気になっていたので、拝読できてとても嬉しいです。
田口先生を想うあまりに道を踏み外してしまったジェネラルとそれに寄り添った田口先生の描写はとても切なかったです。
最後に速水が子供のように笑ったのもとても印象的でした。
とても読み応えがあって素敵な小説でした。
残酷にその名をシリーズのダークエンド版、実は以前伺ったときからずっと気になっていたので、拝読できてとても嬉しいです。
田口先生を想うあまりに道を踏み外してしまったジェネラルとそれに寄り添った田口先生の描写はとても切なかったです。
最後に速水が子供のように笑ったのもとても印象的でした。
とても読み応えがあって素敵な小説でした。
Re:読めてうれしいです
いらっしゃいませ。コメント有難う御座います。
……って、コレで? かーなーり問題ありません? てか、ある。
とか言いながら、本音はもっとこう、ダークでイカレた様子が醸し出せたらよかったなぁと思ってたりするのですが。神経爛れて気持ち悪くなるほど、暗~くて重~い話にしたかった……。
何はともあれ、読んでいただけただけで有難いことで御座います。
コレで霧島を嫌いにならないで下さい……お願いしますっ。
……って、コレで? かーなーり問題ありません? てか、ある。
とか言いながら、本音はもっとこう、ダークでイカレた様子が醸し出せたらよかったなぁと思ってたりするのですが。神経爛れて気持ち悪くなるほど、暗~くて重~い話にしたかった……。
何はともあれ、読んでいただけただけで有難いことで御座います。
コレで霧島を嫌いにならないで下さい……お願いしますっ。