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1月の13日から18日の分を再アップ。
我ながら、こんなの書いたんだなぁという気がします。
リンク報告したサイトマスター様からお返事いただいてます。どちらもご快諾頂けましたようで、有難い限りです。
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我ながら、こんなの書いたんだなぁという気がします。
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田口がいないのに気付いた時、酷く落胆した。
そのことが逆に、どれほどあの顔を見たかったかを自覚させる。
今日のオレンジ新棟の話をするつもりだった。惚気てやったと言えば怒るだろうと、その表情を想像するのさえ楽しかった。
それが、黙っていなくなるなんて。
キッチリ畳んでリビングに放置された洗濯物や、綺麗なままの台所。
田口がいた気配は残っているのに、当の本人はいない。
もう一度鍵を引っ掴んで、速水は自宅を飛び出した。
「…………どうして、黙って帰った?」
玄関先で大声を出してやったら、田口は近所を憚ってすぐに家に上げた。コタツの角を挟んで向き合う。
普段なら茶の一つも出してくる田口だが、一向に動こうとしなかった。コタツ蒲団の上に座って、そのまま俯いている。
コタツの天板にキーホルダーも付いていない鍵が転がっていた。恐らくは速水の家のものだ。
「後悔してるのか?」
原因は解りきっている。速水とのセックス。それしかない。
静かに尋ねると、田口はびくりと震えてますます俯いた。それが頷きの仕草だと気付いたのは少し経ってからだ。
「お前…………」
「してる。するに決まってるだろ、お前とはずっと友達だったのにあんなこと…………っ」
速水の声が咎めるようなものだったのに気付いたのだろう。
田口は急に口を切った。一度口を切ったら、止まらなくなったようだ。
さっきまでカーペットを見つめていた視線を上げて、速水の顔を捕らえた。
怒っているような、泣きだしそうな、そんな顔をしていた。
「雰囲気に流されるんじゃなかった。お前が優しいのが嬉しくて、好きだなんて勘違いしたんだ、きっと。触られるのは嬉しかったし触りたいと思った、ヤってて気持ち良かったのも本当だけど……この身体は違う」
田口の言葉の速さに、速水の思考は一拍ずつ遅れているようだった。
雰囲気に流されたのは速水も同罪で、好きの一言は素直に嬉しいと思うし、勘違いの一言は否定してほしい。気持ち良かったと言われれば男として単純に舞い上がる。
だが一番の問題は、違うという一言だった。
「この身体が女だから、お前を好きだと思ったのかもしれない。触りたいと思ったのも、女だからかもしれない。だったら、元に戻ったら? 全部なかったことになるのか? また今まで通りの付き合いになる?」
今まで通りの付き合い。
愚痴外来で、コーヒー片手に下らないことをだべるような付き合い。
田口の言葉に想像した光景は温かいものだが、物足りないと瞬間速水は思った。
速水は自分のカンを信じるタチだ。
物足りないと思うなら、欲しいのはもっと別のカタチをしている。
「でも、今まで通りにならなかったら? 俺は、どんな顔してお前と会えばいいんだよ」
「お前は…………なかったことにしたいのか?」
「…………したいよ。全部無かったことにしたい」
泣きそうな顔で田口は告げる。
田口の脳裏にあるのは、破綻寸前の友情だ。速水もそれは望まない。
だが、友人関係をブチ壊した先に見ているものが違う。
「俺は嫌だ」
速水の声に田口は息を呑んだ。
そのことが逆に、どれほどあの顔を見たかったかを自覚させる。
今日のオレンジ新棟の話をするつもりだった。惚気てやったと言えば怒るだろうと、その表情を想像するのさえ楽しかった。
それが、黙っていなくなるなんて。
キッチリ畳んでリビングに放置された洗濯物や、綺麗なままの台所。
田口がいた気配は残っているのに、当の本人はいない。
もう一度鍵を引っ掴んで、速水は自宅を飛び出した。
「…………どうして、黙って帰った?」
玄関先で大声を出してやったら、田口は近所を憚ってすぐに家に上げた。コタツの角を挟んで向き合う。
普段なら茶の一つも出してくる田口だが、一向に動こうとしなかった。コタツ蒲団の上に座って、そのまま俯いている。
コタツの天板にキーホルダーも付いていない鍵が転がっていた。恐らくは速水の家のものだ。
「後悔してるのか?」
原因は解りきっている。速水とのセックス。それしかない。
静かに尋ねると、田口はびくりと震えてますます俯いた。それが頷きの仕草だと気付いたのは少し経ってからだ。
「お前…………」
「してる。するに決まってるだろ、お前とはずっと友達だったのにあんなこと…………っ」
速水の声が咎めるようなものだったのに気付いたのだろう。
田口は急に口を切った。一度口を切ったら、止まらなくなったようだ。
さっきまでカーペットを見つめていた視線を上げて、速水の顔を捕らえた。
怒っているような、泣きだしそうな、そんな顔をしていた。
「雰囲気に流されるんじゃなかった。お前が優しいのが嬉しくて、好きだなんて勘違いしたんだ、きっと。触られるのは嬉しかったし触りたいと思った、ヤってて気持ち良かったのも本当だけど……この身体は違う」
田口の言葉の速さに、速水の思考は一拍ずつ遅れているようだった。
雰囲気に流されたのは速水も同罪で、好きの一言は素直に嬉しいと思うし、勘違いの一言は否定してほしい。気持ち良かったと言われれば男として単純に舞い上がる。
だが一番の問題は、違うという一言だった。
「この身体が女だから、お前を好きだと思ったのかもしれない。触りたいと思ったのも、女だからかもしれない。だったら、元に戻ったら? 全部なかったことになるのか? また今まで通りの付き合いになる?」
今まで通りの付き合い。
愚痴外来で、コーヒー片手に下らないことをだべるような付き合い。
田口の言葉に想像した光景は温かいものだが、物足りないと瞬間速水は思った。
速水は自分のカンを信じるタチだ。
物足りないと思うなら、欲しいのはもっと別のカタチをしている。
「でも、今まで通りにならなかったら? 俺は、どんな顔してお前と会えばいいんだよ」
「お前は…………なかったことにしたいのか?」
「…………したいよ。全部無かったことにしたい」
泣きそうな顔で田口は告げる。
田口の脳裏にあるのは、破綻寸前の友情だ。速水もそれは望まない。
だが、友人関係をブチ壊した先に見ているものが違う。
「俺は嫌だ」
速水の声に田口は息を呑んだ。
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