本日の記念日
将棋の日
……以上です。選びようがない。
毎月17日、というチョイスなら「いなりの日」とか「国産なす消費拡大の日」とかあるのですが、それはちょっとね、と。
ちなみに霧島、将棋のルールちっとも解りませんので盛大に逃げております。
同期三人です。どうぞ。
将棋の日
……以上です。選びようがない。
毎月17日、というチョイスなら「いなりの日」とか「国産なす消費拡大の日」とかあるのですが、それはちょっとね、と。
ちなみに霧島、将棋のルールちっとも解りませんので盛大に逃げております。
同期三人です。どうぞ。
「……………………っ」
「……………………っしゃあ」
かしゃ、と小さな音が鳴る。
それを聞いた瞬間、島津はがっくりと項垂れ、速水は拳を固めた。
二人の間には小山になった将棋の駒。
オーソドックスにして単純なゲーム、将棋崩しである。
「ふふん、俺の勝ちだな」
「いーや、まだ解らんぞ」
現時点で、手先の器用さで優る速水がリードしている。
桜宮ローカルルールは単純に獲得枚数が多い方が勝ちだ。
もう何枚か崩せば、全てバラけて独り占め出来そうな状態だった。
速水が鼻を鳴らして自慢気に笑うと、島津は島津で鼻息荒く我を張った。
次は速水の番だ。
速水が指を伸ばすと、自然と二人の間には沈黙と緊張が走る。
「あれ、何やってんだ?」
田口が顔を出したのはそんな時だった。
張りつめた空気が一気に緩む。
速水は指を引っ込め、島津は大きく息を吐いて肩の力を抜いた。
「将棋崩し?」
「そ。ちなみに俺がリード中」
「ふぅん」
小山になっている将棋の駒を見て、田口は自ら答えを導き出した。
田口の言葉に速水が頷く。
速水が勝敗も付け加えると、島津は渋い表情になった。
だが少し考えると、唐突ににまっと笑った。
「おい、行灯、ちょっと来い」
「ん?」
田口が近寄ると、島津は田口に何事かを耳打ちした。
最初田口は目を丸くしたが、その顔は悪戯っぽい笑みに取って替わる。
除け者になってしまっていた速水は眉間に皺を寄せた。
どう考えても、悪巧みにしか見えないからだ。
内緒話を終えた田口が、審判役のように二人から等分の位置に立つ。
速水は田口を軽く睨みつけた。
「邪魔すんじゃねえぞ」
「手は出さないよ」
田口はにっこりと笑って言う。実に胡散臭い笑みだった。
疑惑は深まるばかりだったが、それでもゲームは続く。
速水は慎重に指を伸ばした。
…………と。
「ふぅ――――っ」
「うわっ」
速水の耳に、温かい吐息が吹きかかる。
驚いた拍子に速水の指が無造作に駒を触り、音を立てて小山が崩れた。
「っしゃ!」
今度拳を固めて喜ぶのは島津の方だ。
田口の吐息に擽られた耳を押さえながら、速水は田口を順に睨みつけた。
「てめぇ、島津の手先になりやがって…………っ」
「買収されたからなぁ」
「安いぞ、お前っ!」
麻雀の負け分をチャラにするという条件で、田口は速水の妨害を引き受けたのだ。
田口が臆面もなく買収の事実を明かすと、速水は子供のように悔しがる。
そもそも、たかがゲームでムキになる所が、速水も島津も子供だ。
田口はにっと笑ってみせた。
「手は出してないだろう?」
「ぐ…………っ」
「ぎゃははははっ!」
確かに、田口がしたのは速水の耳に息を吹きかけただけ。
速水がそこで驚き焦らなければ、妨害にもならなかった筈だ。
田口の言葉に速水は息を呑み、島津は盛大に笑い声を上げたのだった。
結局勝負は、残りの駒を全て獲得した島津の勝ちになった。
「……………………っしゃあ」
かしゃ、と小さな音が鳴る。
それを聞いた瞬間、島津はがっくりと項垂れ、速水は拳を固めた。
二人の間には小山になった将棋の駒。
オーソドックスにして単純なゲーム、将棋崩しである。
「ふふん、俺の勝ちだな」
「いーや、まだ解らんぞ」
現時点で、手先の器用さで優る速水がリードしている。
桜宮ローカルルールは単純に獲得枚数が多い方が勝ちだ。
もう何枚か崩せば、全てバラけて独り占め出来そうな状態だった。
速水が鼻を鳴らして自慢気に笑うと、島津は島津で鼻息荒く我を張った。
次は速水の番だ。
速水が指を伸ばすと、自然と二人の間には沈黙と緊張が走る。
「あれ、何やってんだ?」
田口が顔を出したのはそんな時だった。
張りつめた空気が一気に緩む。
速水は指を引っ込め、島津は大きく息を吐いて肩の力を抜いた。
「将棋崩し?」
「そ。ちなみに俺がリード中」
「ふぅん」
小山になっている将棋の駒を見て、田口は自ら答えを導き出した。
田口の言葉に速水が頷く。
速水が勝敗も付け加えると、島津は渋い表情になった。
だが少し考えると、唐突ににまっと笑った。
「おい、行灯、ちょっと来い」
「ん?」
田口が近寄ると、島津は田口に何事かを耳打ちした。
最初田口は目を丸くしたが、その顔は悪戯っぽい笑みに取って替わる。
除け者になってしまっていた速水は眉間に皺を寄せた。
どう考えても、悪巧みにしか見えないからだ。
内緒話を終えた田口が、審判役のように二人から等分の位置に立つ。
速水は田口を軽く睨みつけた。
「邪魔すんじゃねえぞ」
「手は出さないよ」
田口はにっこりと笑って言う。実に胡散臭い笑みだった。
疑惑は深まるばかりだったが、それでもゲームは続く。
速水は慎重に指を伸ばした。
…………と。
「ふぅ――――っ」
「うわっ」
速水の耳に、温かい吐息が吹きかかる。
驚いた拍子に速水の指が無造作に駒を触り、音を立てて小山が崩れた。
「っしゃ!」
今度拳を固めて喜ぶのは島津の方だ。
田口の吐息に擽られた耳を押さえながら、速水は田口を順に睨みつけた。
「てめぇ、島津の手先になりやがって…………っ」
「買収されたからなぁ」
「安いぞ、お前っ!」
麻雀の負け分をチャラにするという条件で、田口は速水の妨害を引き受けたのだ。
田口が臆面もなく買収の事実を明かすと、速水は子供のように悔しがる。
そもそも、たかがゲームでムキになる所が、速水も島津も子供だ。
田口はにっと笑ってみせた。
「手は出してないだろう?」
「ぐ…………っ」
「ぎゃははははっ!」
確かに、田口がしたのは速水の耳に息を吹きかけただけ。
速水がそこで驚き焦らなければ、妨害にもならなかった筈だ。
田口の言葉に速水は息を呑み、島津は盛大に笑い声を上げたのだった。
結局勝負は、残りの駒を全て獲得した島津の勝ちになった。
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