異種CP警報発令中
9月の企画ものです。ストックは少ないのにこんなに早くスタートしちゃうなんて、どう考えても後がもたないぞ……。
題して「仲秋明月センチメンタル秋企画・シリアスラブに挑戦月間」で御座います。
9月といえば十五夜がありますが、百人一首に「月見れば千千に物こそ悲しけれ 我が身ひとつの秋にはあらねど」というのがありまして、つまりこれです。
ついでに、シリアスラブとは何ぞや、という話ですが、霧島的解釈では「片想い上等!」ということになります。
そんなワケで、片想い話に挑戦しようかなぁという月間です。
で、いきなり異種CP警報。小児科の歌姫→ICUの爆弾娘です。
霧島の中では、歌姫は「永遠の片想い」キャラです。
「夢見る~」の、所長に対するスタンスが実にそんな感じ。てゆーか、アレは互いに雁字搦めになってる気がする。歌姫は青本プリンセスのことを歌う→所長はプリンセスを思い出して忘れない→歌姫は報われない、みたいな。
まあとりあえずお楽しみ下さいませ。
9月の企画ものです。ストックは少ないのにこんなに早くスタートしちゃうなんて、どう考えても後がもたないぞ……。
題して「仲秋明月センチメンタル秋企画・シリアスラブに挑戦月間」で御座います。
9月といえば十五夜がありますが、百人一首に「月見れば千千に物こそ悲しけれ 我が身ひとつの秋にはあらねど」というのがありまして、つまりこれです。
ついでに、シリアスラブとは何ぞや、という話ですが、霧島的解釈では「片想い上等!」ということになります。
そんなワケで、片想い話に挑戦しようかなぁという月間です。
で、いきなり異種CP警報。小児科の歌姫→ICUの爆弾娘です。
霧島の中では、歌姫は「永遠の片想い」キャラです。
「夢見る~」の、所長に対するスタンスが実にそんな感じ。てゆーか、アレは互いに雁字搦めになってる気がする。歌姫は青本プリンセスのことを歌う→所長はプリンセスを思い出して忘れない→歌姫は報われない、みたいな。
まあとりあえずお楽しみ下さいませ。
「小夜、お水ぅ~~っ」
「はいはい」
小夜のベッドに寝転がった翔子が力の入っていない声で強請った。
小夜は呆れ半分に返事をして、台所の流しで水を汲んだ。
グラスを手に戻ると、翔子はのっそり起き上がって手を伸ばす。その手に慎重にグラスを渡して、翔子が水を飲むのを小夜は真剣に見守った。
幸いにも手元が滑るようなこともなく、翔子はグラス半分ほどを一息に飲み干す。
「ありがと。う――――…………っ」
「飲みすぎだよ、翔子」
「小夜はハメ外さないよねえ…………」
グラスを小夜に返して、翔子はもう一度ベッドに引っ繰り返った。
翔子の唸り声を背中で聞きながら、リビングのテーブルにグラスを戻す。
小夜の小言に翔子は小さく笑った。
「翔子が潰れたら、誰が面倒見るのよ」
「小夜さまでーす。きゃはっ」
「そうよ」
小夜はわざとらしくも重々しく頷き、翔子はきゃらきゃらと笑う。
二人はずっとこんな感じだった。
片方が潰れたら、もう片方が面倒をみる、という形だ。
どちらかというと翔子が潰れることの方が多かったが、小夜が翔子に面倒かけたこともある。
内向的な小夜と違い、社交的な翔子には友人知人は多かったが、お互いに一番の友達を自負していた。
「ほら、もう寝ちゃえ」
「お化粧落としてなぁい……」
「ああ、もう」
小夜が促すと、翔子はごにょごにょと異議を唱えた。
小夜は化粧ポーチの中からクレンジングシートを取り出して、翔子に手渡した。翔子は寝転がったままシートで顔を擦り、使用済みのシートを小夜に渡した。
「さぁよ」
小夜がシートをゴミ箱に捨てると、翔子から声がかかる。
小夜が振り返ると、ベッドに横向きで寝転がった翔子が小夜を見て笑っていた。
素顔の翔子は、化粧で隠されない若さが見えて、ちょっと幼い感じがする。小夜は瞬きを一つした。
「なあに?」
「歌ってよ。何でもいいわ、小夜の歌聴きたい」
「仕方ないなぁ……酔っ払いは我儘ね」
「へへへっ」
翔子がぺたぺたとベッドを叩くので、小夜は翔子が指示した場所に座った。組んだ自分の指先を見詰めながら小夜は静かに歌いだす。
「眠れ よい子よ」
「よい子だって」
子守唄の最初のフレーズに、翔子は小さく笑った。
確かによい子という年齢ではない。
小夜も小さく笑ったが、そのまま歌を続けた。
一曲終わって小夜が翔子の様子を窺うと、微笑を浮かべた翔子と眼が合った。
「…………やっぱり小夜の歌好きよ」
「ありがと」
「ね、もう一曲」
「いい加減寝なさいね」
言いながらも、小夜は次の歌を選んだ。今度の子守唄はブラームスだ。
「薔薇の花は 風に揺れて」
半分も歌わないうちに寝息が聞こえてきたが、小夜はそのまま一曲分歌い続けた。
歌い終えて横を見れば、予想通り翔子が眠りに落ちている。
翔子の身体の下敷きになっているブランケットを引っ張り出しても、翔子が目を覚ます様子はなかった。翔子の肩までブランケットを被せる。
そのまま、小夜は翔子の寝顔を見つめた。
「…………幾らでも歌ってあげる」
翔子が聴きたいと言うなら、何曲だって、一晩中だって、歌う。
他の誰かの為には歌わなくても、翔子の為になら、幾らだって歌う。
小夜は少し考えて次の歌を探すと、静かに歌い始めた。
眠ったままの翔子が少し笑った。
「はいはい」
小夜のベッドに寝転がった翔子が力の入っていない声で強請った。
小夜は呆れ半分に返事をして、台所の流しで水を汲んだ。
グラスを手に戻ると、翔子はのっそり起き上がって手を伸ばす。その手に慎重にグラスを渡して、翔子が水を飲むのを小夜は真剣に見守った。
幸いにも手元が滑るようなこともなく、翔子はグラス半分ほどを一息に飲み干す。
「ありがと。う――――…………っ」
「飲みすぎだよ、翔子」
「小夜はハメ外さないよねえ…………」
グラスを小夜に返して、翔子はもう一度ベッドに引っ繰り返った。
翔子の唸り声を背中で聞きながら、リビングのテーブルにグラスを戻す。
小夜の小言に翔子は小さく笑った。
「翔子が潰れたら、誰が面倒見るのよ」
「小夜さまでーす。きゃはっ」
「そうよ」
小夜はわざとらしくも重々しく頷き、翔子はきゃらきゃらと笑う。
二人はずっとこんな感じだった。
片方が潰れたら、もう片方が面倒をみる、という形だ。
どちらかというと翔子が潰れることの方が多かったが、小夜が翔子に面倒かけたこともある。
内向的な小夜と違い、社交的な翔子には友人知人は多かったが、お互いに一番の友達を自負していた。
「ほら、もう寝ちゃえ」
「お化粧落としてなぁい……」
「ああ、もう」
小夜が促すと、翔子はごにょごにょと異議を唱えた。
小夜は化粧ポーチの中からクレンジングシートを取り出して、翔子に手渡した。翔子は寝転がったままシートで顔を擦り、使用済みのシートを小夜に渡した。
「さぁよ」
小夜がシートをゴミ箱に捨てると、翔子から声がかかる。
小夜が振り返ると、ベッドに横向きで寝転がった翔子が小夜を見て笑っていた。
素顔の翔子は、化粧で隠されない若さが見えて、ちょっと幼い感じがする。小夜は瞬きを一つした。
「なあに?」
「歌ってよ。何でもいいわ、小夜の歌聴きたい」
「仕方ないなぁ……酔っ払いは我儘ね」
「へへへっ」
翔子がぺたぺたとベッドを叩くので、小夜は翔子が指示した場所に座った。組んだ自分の指先を見詰めながら小夜は静かに歌いだす。
「眠れ よい子よ」
「よい子だって」
子守唄の最初のフレーズに、翔子は小さく笑った。
確かによい子という年齢ではない。
小夜も小さく笑ったが、そのまま歌を続けた。
一曲終わって小夜が翔子の様子を窺うと、微笑を浮かべた翔子と眼が合った。
「…………やっぱり小夜の歌好きよ」
「ありがと」
「ね、もう一曲」
「いい加減寝なさいね」
言いながらも、小夜は次の歌を選んだ。今度の子守唄はブラームスだ。
「薔薇の花は 風に揺れて」
半分も歌わないうちに寝息が聞こえてきたが、小夜はそのまま一曲分歌い続けた。
歌い終えて横を見れば、予想通り翔子が眠りに落ちている。
翔子の身体の下敷きになっているブランケットを引っ張り出しても、翔子が目を覚ます様子はなかった。翔子の肩までブランケットを被せる。
そのまま、小夜は翔子の寝顔を見つめた。
「…………幾らでも歌ってあげる」
翔子が聴きたいと言うなら、何曲だって、一晩中だって、歌う。
他の誰かの為には歌わなくても、翔子の為になら、幾らだって歌う。
小夜は少し考えて次の歌を探すと、静かに歌い始めた。
眠ったままの翔子が少し笑った。
PR
COMMENT