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こちらは、愚痴外来シリーズの妄想文を展開するブログです。 行灯先生最愛、将軍独り勝ち傾向です。 どうぞお立ち寄り下さいませ。
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今度こそ終わって下さい。神様お願い!

ここの前振りコメントを本文書く前に書いてるから、前回みたいなことが起こるんですよ。
如何にも最終回用の前振りだったのに……おかげで今回、書くことがねえぞ、みたいな。


今更ですが、携帯電話にユーザーロックかけてたら、この話全然成立しないことに気付きました。
猟犬は寧ろがっちりロックかけてるタイプだと思うのですが、今回だけは敢えて無視で!

「…………どうして逃げ出した?」

居間で突っ立ったまま、先に口を開いたのは加納だった。
田口は加納の言葉に少し驚いた。
田口が逃げたのだと、加納が解っていた事が驚きだ。

「……貴方が信じられなくなったから」
「?? 何でだ?」

田口が告げると、加納は首を傾げた。
浮気をした訳でもないのに信じられないと言われるのは、釈然としないのだろう。
種明かしの必要に駆られた田口は、内心笑ってしまった。
こんな馬鹿馬鹿しい話もない気がした。
恋人を信じられなくなった理由を、一から理路整然と説明しなければならないなんて。

「携帯電話。私の着信消去してるでしょう?」
「何時……ああ、この間見たのか。でもそれは……」
「ええ、見られちゃ困るんですよね。どうして困るんですか?」
「そりゃ、あんたとの関係がバレるのはマズイだろ。俺にも、あんたにも」
「ええ、私にも歓迎できることじゃないです。でも、携帯の着信消すほど、地元じゃ逢えないほど、私との関係は貴方の邪魔ですか?」
「そんなことを言った覚えはない!」

加納の声が大きくなった。
確かに加納は言っていない。田口が勝手に思っただけだ。
思って、どうしようもなくなっただけ。

「俺だって解ってる、警察が煩いところだっていうのも、世間の目が俺よりずっと厳しいのも! 解ってるんだ! だからって、いないも同然なんて、それですんなり納得出来るほど、都合よくなんかない!」

田口のテンションが振り切れた。
一人称が対外的な礼儀正しさを捨てる。
加納の表情を窺うと、田口の勢いに驚いているようだった。
一人で激昂していることも出来ず、田口は息を吐いて自分を宥めた。
最も簡単に説明が出来るセリフを思って、田口は小さく笑った。

「私と出世と、どちらが大切ですか?」

突き詰めればそれだった。
そして、今までの加納の言動から導き出される答えが、田口を憂鬱にする。
馬鹿みたいだ。
加納に成功してほしい、せめて左遷なんていう憂目に遭ってほしくはない、まして自分のせいで加納が苦境に陥るのは願い下げだ。
そう思っているのは確かなのに。
だからといって、ここで出世を選ばれたら、多分終わり。

「何だ、そんなことか」
「てっ!」

論点がとても解り易くなったせいか、加納は酷くあっさり口にした。
長い指で田口の額を弾く。
唐突な痛みに、田口は小さく声を上げた。
田口が睨みつけると、存外に真剣な加納の瞳とぶつかった。

「あんたに決まってるだろ」

悩む必要など微塵も感じさせず、加納は言う。
田口が見つめる先で、一人勝手な口調で話し始めた。

「確かに吹聴して回る気はないが、バレて辞めろと言われたら辞めてやるさ。もっともぉ? そん時は大人しく辞めてやるつもりも無えが? 一騒動起こしてやる」
「一騒動、ですか」
「おうよ」

曰く、自由権の侵害、マイノリティに対する組織の横暴を甚だしく世間様に暴きたててやろうという。

「悲劇のヒーロー宜しく振る舞えば、世間の支持もついてくるってモンだ」
「そんなこと考えてたんですか…………」

ここは喜んでいいところだろうに、田口の中には呆れが先に来た。
加納のニヤニヤ笑いはどう見ても悪人面だ。
この無茶苦茶な警視正は、やると言えば本当にやるだろう。
そんな日は来ないで欲しいものである。

「解ったか? あんたは余計な事考えず、俺に惚れてりゃいいんだよ」

加納は自信たっぷりに言い切った。
根拠もなく偉そうなところが、子供のようだと田口は思う。
だがこの顔も、田口が好きな加納の一つだ。
田口の口元が綻んだ。

「…………偉そうに」
「返事が違うだろ。そこは素直にハイって言っとけ」
「そうですね」

故意に「ハイ」を避け、田口は加納のコートを掴んだ。
加納が冬物のコートを脱ぐ前から、問答を始めていたのだ。
二人揃って、話をすることしか頭になかったらしい。
田口の接近を許した加納が、田口を包むように腕を回した。

「……もう、消えるな。あんなに慌てたのは生まれて初めてだ」
「慌てたんですか?」
「慌てた。携帯は解約、住民票は無難な実家、休職扱いだから職場の異動履歴も無しときた。あんた、逃亡犯になれるぞ」
「それはそれは…………」

加納の言い様に、田口は思わず笑った。
欠片すら残さないように、との意図は半分は成功していたらしい。
速水を頼らなければ、完全に足取りを消せたかもしれなかった。
田口が残してしまった小さな欠片を追いかけて、加納は此処まで来てくれたのだ。

「…………加納さん」
「ん?」
「好きですよ」

少し、信じられなくなっただけ。嫌いにはなれなかった。
田口の言葉に加納は笑って、「当たり前だろ」と偉そうな返事を寄越した。
落とされるキスは記憶にある懐かしい感触で、田口は強く加納の背中にしがみついたのだった。
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有難う御座いました。
猟犬×行灯 リクエストを叶えてくださって有難う御座います。

小さな欠片を残したのは、追いかけて欲しいと言う田口先生の気持ちの表れですかね。
男心は微妙に揺れてるみたいでした。

ラストを読んで、追いかけなかったら猟犬じゃないぞと言う感じですw

キャリアのくせに口と態度が悪くて、1人だけに執拗なほど執着する警察官僚とその彼を振り回す事の出来る田口先生。
このCPに嵌りそうです。


錆兎 2010/01/21(Thu)00:54:31 編集
Re:有難う御座いました。
いらっしゃいませ、コメント有り難う御座います。
いろいろ……ええ、いろいろお待たせいたしましたですよ。申し訳ありませんでした。
猟犬は難しい! 横暴さ加減をどう表現してよいのやら、ですよ。このキャラなら、押せ押せ片想いの方がやりやすいかもしれないな。
将軍贔屓を自覚してしまったので、マジに猟犬行灯を書く日は遠そうですが、何かの折にはまたリクエストして下さいませ……あんなんで宜しければですけれども。
S.Kirishima 2010/01/21 11:34
かっこよすぎる!
とっても素敵なサイトさんですね。はじめましてですが、すっかりファンになってしまいました。田口先生のやわらかな笑顔や、その笑顔になんども恋に落ちてしまう将軍がもうなんていうか可愛すぎて(笑)、アップされているお話を一気に読んでしまいました!霧島さんが描き出す登場人物はみんな、魅力的ですね。今回の猟犬も、北の果てまで追ってきて、玄関先であの強気…(笑)。よすぎです。ああだけど、速水が切なすぎて(や、勿論そういう企画のお話なんですけどね。しかも素敵な…だけど~っ)、読了後にコメントせずにいられませんでした。速水~~っ!
坂城 2010/03/03(Wed)07:19:00 編集
Re:かっこよすぎる!
いらっしゃいませ、初めまして。そしてコメント有り難う御座います!
一気読み有り難う御座います……シンドくなかったですか? その苦労を軽減すべくサイトに再アップしてるのだが、それでも多い気がする。ホントにお手数おかけしました。

「メロゥドラマ」は結構難産でしたので、「よかったよ」ってコメント頂けるとホント嬉しいです。猟犬に苦戦し、出張りたがる将軍を押さえ付けたのもいい思い出さっ。
これ、リクエストじゃなかったら将軍が略奪してたでしょうねぇ。
ゴメンね、将軍。別の話で幸せになって下さい。
S.Kirishima 2010/03/03 11:10
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