12月企画、錆兎さまからのリクエストです。
錆兎さま、企画参加有り難う御座いました。
さてリク内容は「猟犬×行灯、昼メロ路線」です。
実はもう少し具体的なリクがあったのですが、ネタバレになりそうなのでちょっと伏せてみる。
……伏せておくとさぁ、どんなにリク外しでも気付かれないよね。
シーンの数を数えていくと、三回連載になりそうです。
その上いきなり、将軍のが登場率高かったりしそうな予感なんだ……。
そんなカンジですが、宜しくお付き合い下さいませ。
では。
錆兎さま、企画参加有り難う御座いました。
さてリク内容は「猟犬×行灯、昼メロ路線」です。
実はもう少し具体的なリクがあったのですが、ネタバレになりそうなのでちょっと伏せてみる。
……伏せておくとさぁ、どんなにリク外しでも気付かれないよね。
シーンの数を数えていくと、三回連載になりそうです。
その上いきなり、将軍のが登場率高かったりしそうな予感なんだ……。
そんなカンジですが、宜しくお付き合い下さいませ。
では。
加納が浴びているシャワーの音を、田口は落ち着かない気持ちで聞いていた。
逢うのは久し振りだ。
今更、初心な小娘でもあるまいし、この後にあることもちゃんと知っている。
逃げ出したいのと待ち遠しいのとが、田口の心の中で入れ替わり立ち替わりしているような状態だ。
気持ちを落ち着けるフリで、田口がテーブルの上にあるグラスに手を伸ばした時、加納の携帯電話が着信音を立てた。
加納はメロディよりも機械的な呼び出し音を好む。
田口は携帯電話を見つめて戸惑った。
「ど、うしよう…………?」
他人の携帯電話に、勝手に出る事は出来ない。
だが、加納は警察庁のキャリアだ、突発的な重大事案の報告も有り得る。
既に、田口の感覚からすれば長い間、携帯電話は加納を呼び続けている。
浴室の気配を窺うが、加納は電話に気付いていないのか、水音が止む様子も無い。
田口は思い切って携帯電話の通話ボタンを押した。
「あの、」
「加納警視正ですか?!」
「いえ、違います、友人で、加納さんはその……今ちょっと席を外しているんですが」
田口が携帯電話に出た途端、間髪入れずに問い質された。
先方の勢いに押されながらも、田口は何とか口を挟む。
風呂に入っている、と言いかけて、咄嗟に田口は思い止まった。
無難な言い方を思い出せた事に安堵する。
「あ、そうですか、すみません」
「いえ……」
先方も少しトーンダウンして、唐突な口上を詫びた。
田口も曖昧な返事でその場を濁した。
「えっと、加納警視正に至急の確認事案がありまして……警視正が戻りましたら、連絡頂けるように伝えて頂けますか?」
「解りました、わざわざすみません」
「いいえ、こちらこそ。あ、私、本庁の大島と言います」
「大島さんですね? 解りました、すぐ伝えます」
「有り難う御座います、すみません」
何だか、謝罪合戦のような遣り取りを繰り返した後、田口は通話を切った。
液晶画面に着信履歴が浮かぶ。
03で始まるのは東京都区内だったか。
多忙な警察官僚らしく、その一つ下の着信も03からだった。
「え…………?」
ああ忙しい人なんだな、と思って、田口はふと気付く。
田口が掛けた筈の履歴が残っていなかった。
前回の着信は四時間前になっていたが、そんな筈はない。
田口が一時間半ほど前に一度掛けているのだ。もうすぐ着きます、と。
それに対して、加納も返事をしてくれた。
加納が携帯電話を二つ持っているなら、田口の着信が残っていないのも有り得る話だが、そんな事は聞いたことが無い。
「……………………っ」
思わず田口は唇を噛み締めた。
思い浮かぶのはロクでもない事ばかりだ。
東京と桜宮、離れているのが悪い。
「どうした?」
何時の間に上がったのか、加納が髪を拭いながら怪訝な顔をした。
田口は慌てて手にしていた携帯電話を渡した。
「電話来てました、本庁の大島さんって方から。至急確認したいことがあるそうです。勝手に出てすみません」
「ああ、解った」
加納は、田口が電話に出たことを気にする様子も無かった。
携帯電話を手に、簡単な操作で電話を繋ぐ。
「よお、大島。どうした?」
喋りながら加納はソファに腰を下ろし、田口を手招いた。
加納の行動を怪訝に思いながら田口が近寄ると、加納は田口を無理やり自分の膝に座らせた。
ホテル仕様の、一人掛けの小さなソファだ。
何とか納まりどころを見つけた田口に、加納は電話をしながら触れる。
携帯電話を持たない加納の左手が田口の髪を梳くのを感じながら、田口はそっと息を吐いた。
久々の触れ合いは、ちっとも嬉しくならなかった。
田口の異変に気付いたのは、恋人の加納ではなく友人の速水だった。
愚痴外来で休憩と称してダベっていた速水は、ふと、田口の溜息に眉を上げた。
「何だよ、ユーウツそうな顔して。どした?」
「別に何も…………」
「嘘吐け」
断言すると、速水は長い脚を組みかえて田口を見た。
ソファにふんぞり返って速水は言う。
「コーヒーの礼だ、この速水さまが相談に乗ってやろう」
「偉そうに」
速水の物言いに反射的なツッコミを入れたが、意外に速水は柔らかい笑みを浮かべていた。
ワガママ将軍と呼ばれる速水が、実は包容力のある一面を見せることを知っているのは付き合いの長い連中くらいだろう。
速水が纏う不思議な穏やかさに促されて、田口はそろそろと口を開いた。
「お前、携帯の着信履歴って消すか?」
「あん? 消さねーよ、メンドーだもん」
「だよな」
田口の言葉に速水は怪訝そうな顔になったが、あっさり答えを口にした。
速水の言う通り、田口も携帯電話の着信履歴を気にしたことはない。
かかってくる相手など嵩が知れているし、見られて困るものでもない。
「ダイレクトメール関係は消すけどな」
「…………だよな」
それも田口と同じだった。
田口一人が別段ズボラという訳でもないようだ。
つまり、大概の人は着信履歴にさほど注意を払わない。
見られて困る相手がいるのでなければ。
そして加納は、田口からの着信履歴を消去している。
先日、出したくはなかった結論が、結局出てしまった。
田口の存在を、加納は余人に知られたくないのだ。
逢うのは久し振りだ。
今更、初心な小娘でもあるまいし、この後にあることもちゃんと知っている。
逃げ出したいのと待ち遠しいのとが、田口の心の中で入れ替わり立ち替わりしているような状態だ。
気持ちを落ち着けるフリで、田口がテーブルの上にあるグラスに手を伸ばした時、加納の携帯電話が着信音を立てた。
加納はメロディよりも機械的な呼び出し音を好む。
田口は携帯電話を見つめて戸惑った。
「ど、うしよう…………?」
他人の携帯電話に、勝手に出る事は出来ない。
だが、加納は警察庁のキャリアだ、突発的な重大事案の報告も有り得る。
既に、田口の感覚からすれば長い間、携帯電話は加納を呼び続けている。
浴室の気配を窺うが、加納は電話に気付いていないのか、水音が止む様子も無い。
田口は思い切って携帯電話の通話ボタンを押した。
「あの、」
「加納警視正ですか?!」
「いえ、違います、友人で、加納さんはその……今ちょっと席を外しているんですが」
田口が携帯電話に出た途端、間髪入れずに問い質された。
先方の勢いに押されながらも、田口は何とか口を挟む。
風呂に入っている、と言いかけて、咄嗟に田口は思い止まった。
無難な言い方を思い出せた事に安堵する。
「あ、そうですか、すみません」
「いえ……」
先方も少しトーンダウンして、唐突な口上を詫びた。
田口も曖昧な返事でその場を濁した。
「えっと、加納警視正に至急の確認事案がありまして……警視正が戻りましたら、連絡頂けるように伝えて頂けますか?」
「解りました、わざわざすみません」
「いいえ、こちらこそ。あ、私、本庁の大島と言います」
「大島さんですね? 解りました、すぐ伝えます」
「有り難う御座います、すみません」
何だか、謝罪合戦のような遣り取りを繰り返した後、田口は通話を切った。
液晶画面に着信履歴が浮かぶ。
03で始まるのは東京都区内だったか。
多忙な警察官僚らしく、その一つ下の着信も03からだった。
「え…………?」
ああ忙しい人なんだな、と思って、田口はふと気付く。
田口が掛けた筈の履歴が残っていなかった。
前回の着信は四時間前になっていたが、そんな筈はない。
田口が一時間半ほど前に一度掛けているのだ。もうすぐ着きます、と。
それに対して、加納も返事をしてくれた。
加納が携帯電話を二つ持っているなら、田口の着信が残っていないのも有り得る話だが、そんな事は聞いたことが無い。
「……………………っ」
思わず田口は唇を噛み締めた。
思い浮かぶのはロクでもない事ばかりだ。
東京と桜宮、離れているのが悪い。
「どうした?」
何時の間に上がったのか、加納が髪を拭いながら怪訝な顔をした。
田口は慌てて手にしていた携帯電話を渡した。
「電話来てました、本庁の大島さんって方から。至急確認したいことがあるそうです。勝手に出てすみません」
「ああ、解った」
加納は、田口が電話に出たことを気にする様子も無かった。
携帯電話を手に、簡単な操作で電話を繋ぐ。
「よお、大島。どうした?」
喋りながら加納はソファに腰を下ろし、田口を手招いた。
加納の行動を怪訝に思いながら田口が近寄ると、加納は田口を無理やり自分の膝に座らせた。
ホテル仕様の、一人掛けの小さなソファだ。
何とか納まりどころを見つけた田口に、加納は電話をしながら触れる。
携帯電話を持たない加納の左手が田口の髪を梳くのを感じながら、田口はそっと息を吐いた。
久々の触れ合いは、ちっとも嬉しくならなかった。
田口の異変に気付いたのは、恋人の加納ではなく友人の速水だった。
愚痴外来で休憩と称してダベっていた速水は、ふと、田口の溜息に眉を上げた。
「何だよ、ユーウツそうな顔して。どした?」
「別に何も…………」
「嘘吐け」
断言すると、速水は長い脚を組みかえて田口を見た。
ソファにふんぞり返って速水は言う。
「コーヒーの礼だ、この速水さまが相談に乗ってやろう」
「偉そうに」
速水の物言いに反射的なツッコミを入れたが、意外に速水は柔らかい笑みを浮かべていた。
ワガママ将軍と呼ばれる速水が、実は包容力のある一面を見せることを知っているのは付き合いの長い連中くらいだろう。
速水が纏う不思議な穏やかさに促されて、田口はそろそろと口を開いた。
「お前、携帯の着信履歴って消すか?」
「あん? 消さねーよ、メンドーだもん」
「だよな」
田口の言葉に速水は怪訝そうな顔になったが、あっさり答えを口にした。
速水の言う通り、田口も携帯電話の着信履歴を気にしたことはない。
かかってくる相手など嵩が知れているし、見られて困るものでもない。
「ダイレクトメール関係は消すけどな」
「…………だよな」
それも田口と同じだった。
田口一人が別段ズボラという訳でもないようだ。
つまり、大概の人は着信履歴にさほど注意を払わない。
見られて困る相手がいるのでなければ。
そして加納は、田口からの着信履歴を消去している。
先日、出したくはなかった結論が、結局出てしまった。
田口の存在を、加納は余人に知られたくないのだ。
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COMMENT
題名にしてもうクラクラです
リクエスト受けて頂き有難う御座いました。
錆兎です。お茶会はいろいろな事を知ったり、なるほどと感じたりと、楽しい時間でした。
今回のリクエストも毎度お馴染みw「昼メロ」と言う際物ですが、霧島様の手に掛かればなんて素敵になることか、題名を見てクラクラ、第1回を読んでモンモン、2回目を思ってワクワク状態です。
突き放されたと思い悩む田口先生は、中々可愛くて好きです。
錆兎です。お茶会はいろいろな事を知ったり、なるほどと感じたりと、楽しい時間でした。
今回のリクエストも毎度お馴染みw「昼メロ」と言う際物ですが、霧島様の手に掛かればなんて素敵になることか、題名を見てクラクラ、第1回を読んでモンモン、2回目を思ってワクワク状態です。
突き放されたと思い悩む田口先生は、中々可愛くて好きです。
Re:題名にしてもうクラクラです
いらっしゃいませ、コメント有り難う御座います。
根が不真面目なせいか、シリアス調になると途端に苦戦する霧島です。
タイトルも二転三転しましたねえ……未だに「欠片さえ残さない」とどっちがよかったかと悩んでいたりする。「さえ」の方が自然なカンジはするんだ……。
何とか盛り上がりを潰さないようにガンバっていきたいと思います。
お待たせした挙句ですが、もう暫くお付き合い下さいませ。
ところで、携帯の着信履歴ってフツー消去するモンですか? 着信自体皆無に近い霧島にはよく解らんですよ。
根が不真面目なせいか、シリアス調になると途端に苦戦する霧島です。
タイトルも二転三転しましたねえ……未だに「欠片さえ残さない」とどっちがよかったかと悩んでいたりする。「さえ」の方が自然なカンジはするんだ……。
何とか盛り上がりを潰さないようにガンバっていきたいと思います。
お待たせした挙句ですが、もう暫くお付き合い下さいませ。
ところで、携帯の着信履歴ってフツー消去するモンですか? 着信自体皆無に近い霧島にはよく解らんですよ。