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こちらは、愚痴外来シリーズの妄想文を展開するブログです。 行灯先生最愛、将軍独り勝ち傾向です。 どうぞお立ち寄り下さいませ。
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年が明けても12月企画が続きます。
ま、もともと「めりくりあけおめ」という予防線は張ってたし。relarela72様からのリクエストです。ご参加有り難う御座いました!

リク内容は「将軍/行灯+狸/地雷原で、狸と地雷原が月下氷人な話」ということです。月下氷人ってお仲人さんって意味だよね。
珍しくくっついてない設定になったのは、そんな理由かも。
別に狸と地雷原を入れなくても何とかなりそうな話ですが、リクエストに絡めて暗躍させてみました。
……ホントはさぁ、こういうのを31日に上げるべきなんだと思うの。
でも、思いついたのが1日の午前中じゃ無理でしょ。
ブログの日付指定機能ってのもあるけど、正直あんまりやりたくないし……。
というわけで、年越した瞬間の話です。
何だか余りに長くなって何時まで経ってもアップ出来そうにないので、一度切って前半部だけアップします。
一年の最初からこうだなんて、今後が思いやられるぜ……。

「カウントダウンパーティー? そんなのやるんですか?」

藤原の話に田口は首を傾げた。
休憩と称して不定愁訴外来にやってきた速水も、同じように首を傾げている。
藤原は悪戯な笑みを浮かべた。

「田口先生は絶対参加ですよ。そもそも、クリスマスパーティーに参加できなかった看護師たちが言い出したことなので、クリスマスパーティーの不参加者は強制参加なんです」
「じゃあ俺もか」

藤原の言葉に速水は少し驚いた顔になる。
救命救急センターを預かって以来、そういうものとは殊更に縁が遠くなっていたのだ。
田口もそんな速水を知っていたので、不思議そうな顔をした。

「お前、時間あるのか?」
「いや、当直なんだけどよ。休みとか当直明けとかより、かえって時間の融通が利くんじゃねえか?」
「まあ。速水先生が顔を見せるとなれば、喜ぶ看護師も多いでしょうね」

そう言った藤原看護師は、ますます性質の悪い笑みを浮かべた。
そして困った発言をして下さる。

「外国では、年が変わった瞬間に近くの人と抱き合ったりキスしたりするそうですよ。初対面同士でもね。速水先生、気を付けた方がいいかもしれませんよ」
「それは…………っ」

速水の頬が引き攣る。
そして、田口の瞳がほんの僅かに曇った。



さて、カウントダウンパーティー当日。
話題を提供した張本人の藤原看護師は、家族と過ごすからという理由で不参加だった。
病院内のカウントダウンパーティーに参加する面々など、たまたま当直か一緒に過ごす相手がいない者ばかりである。
会場になった「満天」では、何処か自棄っぱちな盛り上がりを見せていた。
隅っこでチビチビとウーロン茶を舐めていた田口は、女性看護師達に囲まれている速水を遠目で見遣って溜息を吐いた。
藤原が意味深なことを言い出してみれば、案の定だった。
当直の隙間に現れた速水の姿に女性看護師達は歓声を上げ、社交辞令も放り出して速水の接待にこぞって走った。

「ユーウツ…………」

ずっと、速水に対して言えない恋心を抱いてきた田口には、目にしたくない景色だ。
速水が女性にモテるのは前々から知っている。
十余年の片想いで耐性はついているつもりなのに、未だに悲鳴を上げる心臓をどうにかしてほしい。
田口はもう一度溜息を吐くと、ウーロン茶の入った紙コップを手にしたままそっと「満天」を抜け出した。

「勘弁しろよ…………」

一方の速水である。
女性看護師達に囲まれて、表情は繕っているものの内心はぐったりと草臥れた心境だった。
当直の息抜きに、藤原看護師から聞いたカウントダウンパーティーを覗きにきたつもりだったのだ。
ところがそこで愛想笑いを振り撒くことになり、逆に気疲れを背負い込む羽目になっている。
だからと言って、速水より小さい女性達を突き飛ばして囲みを突破するワケにもいかず、速水は根気よく隙を狙う作戦を選ばざるを得なかった。
そんな速水の視界の端(少し下向き)で、ちょいちょいと誰かが手招きした。
速水がそちらへ目をやると、高階病院長と視線が合った。
速水は自分の鼻を自分で指差した。

「私ですか?」
「そう。ちょっといらっしゃい、速水君」
「はあ」

茫洋と気の進まないふうに頷きながら、その実これ幸いと速水は高階の元へ向かった。
強気な女性看護師達も、流石に病院長の御指名に割り込む勇気はないようだ。

「何でしょう?」
「いや、当直の合間に御苦労様。まあ飲みなさい」
「はあ」

高階が差し出した紙コップを受け取り、注がれるウーロン茶を速水は目で追った。
一口含むと思いの外に喉が渇いていて、半分を一気に飲み干した。
二度も病院長に酌をさせるのはどうかと思い、ウーロン茶のペットボトルを自分で持って追加する。
そんな速水を見ていた高階が、ニヤリと笑って口を開いた。
田口が、病院長の笑みは悪い出来事の前触れ、と言っていたことを速水は思い出した。

「速水君、一つお使いしてくれませんか?」
「お使い?」
「そう、お使い。病院長室にですね、貰い物のバウムクーヘンがあるんですよ。来客用の茶菓子にしようかと思ってましたが、折角ですので今提供しましょう」
「えっと、それを持ってこいと?」
「ええ。紙袋に入ったまま病院長室のどこかにある筈ですので、頼みますよ。ついでに」

そこでふと高階は声を潜めた。
高階の笑みはますますひねこびたものになる。
速水の中で警報が鳴った。

「ついでに、抜け出した昼行灯を口説いていらっしゃい」
「…………え?」

速水は高階の表情を凝視する。
幾ら瞬きしても、高階は変わらず根性の悪そうな笑みを浮かべていた。
昼行灯は、つまり田口のことか。口説けとは、つまり……つまり?

「藤原さんが言いませんでしたか? 年が明けた瞬間、近くにいる人とキスをするものですよ」

つまり、そっち方面で口説けという意味らしい。
速水の片想いをどうして高階が知っているのかは大いに謎だったが、本当にそのGOサインに乗ってもいいものか。
真意を窺う速水に高階は一つ頷いて、

「でもちゃんと、バウムクーヘンは持って戻ってらっしゃいよ」

と笑えそうな一言を付け加えた。
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ありがとうございます!!
後で自分でリク内容を読み返して、「めりくり」にも「あけおめ」にも絡んでないことに気がついてボー然。そんな箸にも棒にもかからないリクを、こんな素敵なお話に仕上げていただいて、しかも前・後編だなんて、ウレシすぎます(感涙)。後編を拝読してからとも思いましたが、ともかくもお礼にはせ参じました。本当にありがとうございます!! 後編もたのしみにしております。
relarela72 2010/01/06(Wed)19:47:37 編集
Re:ありがとうございます!!
いらっしゃいませ! 今年最初だから、一応「あけおめ」?

>「めりくり」にも「あけおめ」にも絡んでないリク
……逆です。
正月ネタに霧島が無理やりリクエストを絡めた、とゆーのが正しい認識デス。
そこは霧島の技量不足だよなぁ……申し訳ないです。そーやって楽しようとするのが悪いんだ……。
前後編になったのも、話がなかなか進まないことに焦れたせいだったりする。
なるべく頑張りますので、気長にお待ち頂けると有難いです。
こんな始末に負えない管理人ですが、2010年もどうぞ宜しくお願い致します!
S.Kirishima 2010/01/07 11:19
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