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こちらは、愚痴外来シリーズの妄想文を展開するブログです。 行灯先生最愛、将軍独り勝ち傾向です。 どうぞお立ち寄り下さいませ。
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伸びたよ……。前後編になっちまいました。
あとはひたすら口説くだけ!

サイトを更新しました。
ラヴィアンローズに1本、その他の長めで1本、小ネタで1本。
もう一つフレーム増やしたいけど、忍者は広告入ってくるかな?
やれたらやってみます。

備忘録:
33000 水瀬さま 報告有り難う:風強!
32222 mana様 将軍の誕生日話:公式では何時でしょうね? イメージは冬か夏……。
32000 やみちゅ様 腹黒行灯先生(受):ウチの行灯は割と黒寄りです。
31111 ほたか様 リクエスト保留中:冬イベントお疲れ様でした! 通販お世話になりまーすっ。
30001 初さま リクエスト保留中:ごゆっくりどうぞー。

企画リク進行状況は こちら から。
た、溜め込んでますっ。スンマセンっ。

速水が「満天」を抜け出すと、廊下の端の方で田口がぼんやりと外を眺めていた。
桜宮市は地方都市だ。夜景というには少々物足りない景色が広がっている。
その田口の腕を掴むと、速水は大股で歩き出した。

「えっ、何っ?!」
「高階サンのお使いだ、付き合え」

慌てふためいて声を上げる田口に手短に告げると、エレベーターに二人で乗り込んだ。
逃げ場のない空間で初めて、速水は田口の腕を解放する。
田口は右手に握り潰した紙コップを持ったままだった。

「お使いって何だよ?」

田口が口を尖らせて尋ねる。
速水は苦笑と共に肩を竦めた。

「病院長室に菓子が余ってるから持ってこいだと」
「そんなの、お前一人で行けばいいだろ」
「いいじゃねえか、どうせお前もヒマしてたんだろ。付き合えよ」

速水が決めつけると、田口は不貞腐れた顔で黙り込んだ。
田口が、社交を目的とするような宴席を苦手としているのは昔からだ。
それでもちゃっかり食うものは食い飲むだけは飲んで、後は巧く抜け出すのだから大した物だと速水は思ったりする。
見てくれ通りのボンヤリした顔もあれば、時にそれとは裏腹に周到な立ち回りを見せる。
田口のそのギャップが飽きなくて、速水は田口を目で追うようになったのかもしれなかった。
途中で乗り込む者もないエレベーターは、緩やかに病院長室のある四階に停止する。
速水が先を譲ると、田口は気を遣って心持ち早足でエレベーターから下りた。
病院長室は速水も田口も、大いに不本意であるが、慣れた場所だ。
手間取ることもなく照明を点け、二人は中へ入った。

「どれだ?」
「紙袋に入ってるって言ってたぜ」
「ふぅん……給湯室かな……」

応接用のソファやローテーブルの上に、それらしい物は見当たらなかった。
勿論、病院長のデスクの上もきちんと整理整頓がされている。
奥に給湯室が続いているので、田口はそちらを覗き込んだ。
探索はすっかり田口任せで、速水は田口の背中をボンヤリと目で追った。
暫くごそごそと音がしていたが、やがて田口は紙袋をぶら提げて戻ってきた。

「お、あったか」
「多分これだと思う。ユーハイムだし」

今一つ自信の無さそうな顔で田口は言った。
間違っていたら高階に文句を言えばいいだろうと、速水は割り切ってしまう。

「戻るか…………っ」
「あ」

院長室を出る為に速水が踵を返した時、メロディが流れた。
何かのクラシック、だとは解るがそれ以上は解らない。
病院長室の時計は一時間ごとにメロディが流れるタイプだった。
そういえば、何かの折に聞いたことがあったようななかったような。
日付が変わり、年も変わったのだ。
一分にも満たなかっただろうメロディをただ聞き入ってしまう。
田口がふぅっと息を吐いた。

「…………明けましておめでとう。今年も宜しくな」
「あ、ああっ。こちらこそ」

年始の、一番最初の挨拶を交わした。
心の底に微かな喜びが沸き上がる。
田口が今年一番最初に口を利いた相手は自分で、自分の一番最初も田口で。
今年一年、いい年になりそうな気がした。
田口が目元を緩めた。

「年明け最初に話をしたのがお前って、何か可笑しいな」

田口は密かに自分を笑った。
可笑しい、というのは間違っている。
本当は嬉しいのだ、笑えるくらい。
思えば、年越しに当直をすることが多くなってから、年越しの第一声は病棟の看護婦と交わすことがほとんどだった。
ひょっとすると速水とは、15日頃になって初めて顔を合わせて、「あけましておめでとう」「今更だけどな」というような会話になることもあった。
それが今回は、誰よりも先に言葉を交わしている。
そんなささやかな事を密かに喜んで、田口は微笑を浮かべた。

「田口…………」

目の前で淡く微笑む田口に、速水の言葉は詰まってしまった。
同じことを考えていたのかと、嬉しくなる。
二人で年を越えたことが、何かの特別だと思ってくれるのだろうか。
高階の声が脳裏に再生されて、速水を唆した。
田口の手首を捕まえて、一歩距離を詰めた。

「? はや…………っ」

怪訝な顔をした田口が、次の瞬間目を見開く。
ボトっと音を立てて、田口が持っていた紙袋が落ちた。
倒れた箱が速水の爪先にぶつかったが、痛みは無い。
それよりももっと、初めて触れた唇の感触がリアルだった。
乾いて、少し荒れた唇。温かくて柔らかいもの。

「…………新年、だから?」

田口の手首を掴まえたまま田口の表情を窺うと、田口はひっそりと囁いた。
目線は速水に固定されていて、表情も動かなくて、まるで口だけで喋っているような尋ね方だった。

「近くにいたのが、たまたま俺だったから?」

田口も、藤原看護師の言ったことは覚えていた。
速水が単なる新年の挨拶のつもりだったら、怒って冗談にしてしまえばよかった。
速水の真意を伺った時点で、最初から笑い飛ばせなかった時点で、冗談にしたくない田口の心根が透けてしまっているけれど。

「違う」

速水は断言した。
虫のよい期待に鼓動が速まりつつある。
田口は笑いも怒りもしない、既に冗談にはならない。
口説けと高階は言ったが、速水が知っている口説き方は一つしかなかった。

「お前が好きだから、キスした」

ストレート真っ向勝負。
田口が目を見開いて速水を見るので、速水は一つ頷いた。
田口が困ったように笑う。

「……それならいいや」

告白の返事にしては微妙だと思う。
だが、田口が僅かに背伸びをして、速水の口の端をかすめるように小さなキスをくれたので、速水は肯定的に捕えることにした。
目が合うと、田口は照れたようにはにかんだ笑みを見せる。
確かめるようにもう一度、しっかりキスをしたら、田口の両腕が速水の背中を抱きしめ返した。
どちらかの足が、足元に落ちていた菓子箱を蹴飛ばしたようだ。
がさっと音を立てたが、キスの邪魔にはならなかった。



「おや、ちゃんと戻ってきましたね」

「満天」に戻って来た速水と田口の顔を見て、高階は面白そうに笑った。
戻ってこないと思っていたので意外だ、という表情だ。
速水は苦笑を浮かべると、片手にぶら提げていた紙袋を高階の方へ突き出した。

「戻って来いと仰ったのはそちらでしょう。お使いは果たしたので、抜けさせてもらいますよ」
「ええ、結構ですよ」

速水の言葉に高階は頷いて、もう一度笑った。

「新年、明けましておめでとう。今年一年よい年でありますように……速水くんにも、田口先生にも、ね」

そのセリフが意味ありげに聞こえるのは、速水の気のせいではない筈だ。
田口も居心地悪そうに視線を逸らす。耳が赤くなっていた。
此処に至った経緯を思うと、今後も高階と藤原には何かと玩具にされそうだと速水は思う。
だが、今はそれでも構わないと思えるあたり、速水の頭は恋の喜びに舞い上がっているようだ。
高階のからかいに、

「高階先生こそ。いい一年だといいですね」

そう、速水は笑って返したのだった。
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あらためまして
ありがとうございました!!

相変わらず直球でオレ様な将軍と、なにげに懐の深い行灯先生にうっとり……。

ご指摘のとおり「月下氷人」はお仲人さんのことですが、こちら様の狸と地雷原(同類項?)がとてもチャーミングなので、何とかメインのカプに絡ませていただけないかとリク差し上げた次第です

あ~、こんな絡ませ方があるんだ、と感心しきり。

狸の台詞ではありませんが、こちら様をお訪ねになる皆様と、だれよりもこんな「ろぉまんちっく」なお話を書いてくださった管理人様にとって、今年一年が穏やかな良い年でありますように。

本当にありがとうございました!!
relarela72 2010/01/09(Sat)10:50:46 編集
Re:あらためまして
いらっしゃいませ。
こちらこそ、改めて企画ご参加有り難う御座いました!

>ウチの狸と地雷原
とっても愉快犯ですね、ウチの二人。霧島に狸行灯は書けないっポイです。
学生時代にはゲリラがいますので、将軍と行灯は現在過去未来と、引っ掻き回してくれる人物に事欠きません。
……将軍が怒っている気がしますが、霧島には聞こえなーいっ。

今年も、こんな狸と地雷原(特に地雷原の方かな)がちょくちょく登場しそうな当サイトです。宜しくお付き合い下さいませ。
S.Kirishima 2010/01/09 11:15
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