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こちらは、愚痴外来シリーズの妄想文を展開するブログです。 行灯先生最愛、将軍独り勝ち傾向です。 どうぞお立ち寄り下さいませ。
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余談ですが、県庁所在地駅の傍に「コンサートホール」というパチンコ屋があります。
出来た当初から、どういうネーミングセンスだろうと首を傾げている建物の一つです。何つーか、誤解を招きかねないネーミングだと思う。
Mr.パーフェクトと行灯先生版のクラシック鑑賞話は今回でラスト。
実は将軍が同行するバージョンもあるので、今日そっちまで書ければいいなぁと思っております。予定は未定、あくまで希望。



ホール内には家族連れが多かった。
市民向けのコンサートプログラムは、田口にも聞き覚えのある有名なクラシック曲をピックアップする形になっていた。それ以外には、映画のテーマソングをオーケストラにアレンジし、更にメドレーするというのがあって、観客の食いつきも良かったようだ。
しかし田口は桐生の反応が気になった。
こういった、いわば「軽い」コンサートが桐生のお気に召すかどうか心配になったのだ。

「失礼」
「あ、お帰りなさい」

休憩時間に一服してきた桐生が、喫煙所から戻ってきて田口の前を通ろうとした。
狭い通路を譲るために田口はちょっと立ち上がる。
田口の言葉に桐生は小さく笑った。

「桐生先生?」
「いえ、こういう場所で『お帰りなさい』は不思議だと思いまして。自分の家でもないんですよ?」
「そうですね。でも、桐生先生のお席に戻ってらしたんですから」
「ええ」

そう言って笑う桐生は、田口が見る限り、退屈している様子には見えなかった。

「桐生先生、楽しいですか?」

思ったことを、深く考えずに口に出してしまうのは田口の癖の一つだった。油断しているときは特にそれが顕著だ。
あまりにも直截なセリフに田口自身が焦ってしまったが、桐生は鷹揚に笑ってみせた。

「ええ」
「どんなところが?」
「どんな? そうですね……耳慣れた曲ばかりというのは、ある意味緊張しなくていい。アレンジの醍醐味が楽しめる。何より、子供たちの楽しそうな反応が同じ空間にあると、それだけで楽しい気分になってくる。そんなところでしょうか?」

こう、整然と楽しい点を挙げるのも不思議なものだ。
だが桐生の言葉に嘘はないと田口は感じられた。
ようやっと田口の肩の力も抜ける。付き合わせる形になってしまった手前、どうしても桐生の反応が気がかりだったのだ。
ずるずると、怠惰な姿勢で椅子に座り直す。
そんな田口の油断しきった瞬間を狙って、桐生は囁いた。

「田口先生とご一緒なら、大概のものは楽しいですよ」
「え?」
「独り言です」

聴き洩らした台詞に田口は首を傾げたが、桐生が完璧な笑みを見せつけたのでそれ以上は追及しなかった。
コンサートの後半開始を前に、着席を促すアナウンスが場内に流れ出す。
プログラムを確認してお気に入りの一曲を見つけ、田口は微笑を浮かべたのだった。

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