パラレル警報発令中
速水様ご活躍のトコまで行かなかった! 見せ場はお坊ちゃんと新登場の二人です。あの二人は純然たる趣味だ。
何か予定より押せ押せになってる気がする。物事って予定通りに進まないモンだなぁ(←他人事)。
さて今回の大ウソ。
⑬前回の話ぜーんぶ!
というと身も蓋もないんだけど、あれは嘘ばっかりです。
印籠は想像の品だし、切腹の方法も殺され方も誤魔化しまくってるし。
最早何をどう嘘吐いているんだか、本人にも解らないカンジ。
まあ、江戸時代に生まれていても、行灯先生は運動苦手だろうとは思う。
速水様ご活躍のトコまで行かなかった! 見せ場はお坊ちゃんと新登場の二人です。あの二人は純然たる趣味だ。
何か予定より押せ押せになってる気がする。物事って予定通りに進まないモンだなぁ(←他人事)。
さて今回の大ウソ。
⑬前回の話ぜーんぶ!
というと身も蓋もないんだけど、あれは嘘ばっかりです。
印籠は想像の品だし、切腹の方法も殺され方も誤魔化しまくってるし。
最早何をどう嘘吐いているんだか、本人にも解らないカンジ。
まあ、江戸時代に生まれていても、行灯先生は運動苦手だろうとは思う。
東城で恐るべき事実を知った速水様で御座いましたが、きみ様をお助けしようにも何処へ行ったかが解りませんでした。曳地の屋敷は解っていますが、いくらなんでも本宅で裏取引などするとは思えなかったので御座います。
焦れる速水様と一太郎さんを、高階上総介様が押し留めます。
そして、待ちに待っていた知らせが届きました。
突然現れる気配に、速水と一太郎は同じ拍子で腰を浮かせた。揃って警戒の態勢に入る二人を面白そうに見遣りながら、高階は手を振って二人を落ち着かせる。
高階の前に現れて膝を着いたのは、黒ずくめの衣装を着た忍びの者だった。
ほっそりした体つきで女と知れるが、覆面の隙間から覗く涼しげで切れ長の眼元は芝居の女形のようであった。
「……"はやぶさ"ですか。思ったより早かったですね」
「"藤の方"より、江志久村に繋がりがある者を洗い出せとの指示が。田口きみは、三の郭赤町通りにある曳地の妾宅に」
「誰か傍に?」
「"ねこ"が」
「それなら一安心」
高階は一つ頷くと、書きかけの書状を畳んで島津に手渡した。
「島津はこれを新垣に渡し、采配を。速水は先に行くのでしょう? "はやぶさ"、道案内を」
「「「承知仕りました」」」
三人の声が揃う。
忙しく立ち上がった速水だったが、強い力で袴を引っ張られて踏鞴を踏んだ。
一太郎が速水の袴を掴んで、必死の形相で睨んでいる。
「私も参りますっ!」
「莫迦を申すな!」
速水に怒鳴られるより先に、一太郎は宣言した。
当然ながら速水は怒鳴り返した。藩主の御前であることは既に脳裏から抜け落ちている。
速水に怒鳴られても、一太郎は怯まなかった。小さな体で吼えた。
「母上をお守りすると誓った! 二言は無いっ!!」
その気迫に速水は一瞬黙り込む。どうやって納得させようかと、考える時間さえ惜しい。
そんな速水と一太郎を見て、高階は喉の奥で笑った。
「連れていってやりなさい、速水。但し、一太郎、そなたの身に何事が起ころうと、それはそなたが負うべき責ですよ」
「はいっ」
高階の言葉に一太郎は力強く頷く。
速水も腹を括って、その場を飛び出した。
振り翳される刃を気にも留めず、きみは曳地を見据え続けていた。
きみの視線から逃げて、曳地は侍たちの背後へ隠れていく。
きみが身動ぎしないので、侍たちも刀を振り下ろしかねていたようだったが、とうとう最初の一刀が振り下ろされた。
がしんっ、と金属の打ち鳴らされる音がする。
「え…………?」
きみの前には黒装束の女が低い姿勢で構えていて、振り下ろされた刀を匕首で押し留めていた。
呆気に取られて瞬きするきみに、女は小さな声で告げる。
「ご立派で御座いました。後はお任せあれ」
「貴女は…………?」
「殿直属に仕える看護衆(かんごしゅう)の者。庭へ」
きみを背中に庇いながら黒装束の女は油断なく身構える。
曳地は唇を戦慄かせた。
看護衆が出てきたということは、藩主・高階に全てが露見したということなのだ。
「ええいっ、高々女二人! 斬れっ、斬り捨ていっ!!」
曳地の怒号に庭に下りたきみは木立の陰で息を飲んだ。
黒装束の女は焦る様子も無く、ゆったりと匕首を構えた。
「母上――――っ!!」
緊張した空気を、子供の声が破った。
三の郭は下級藩士の屋敷と町人たちの家が並ぶ。
その屋根の上を、"はやぶさ"は足音を立てずに疾走していく。
横目で行き先を確かめながら、速水は馬を走らせた。速水の腹の前で一太郎が鞍の前輪にしがみ付いている。
町屋に相応しくない、二人の門番の立った家が前方に近付いてきている。
"はやぶさ"はその寸前で屋根瓦を蹴って飛び降りた。
門番の後頭部を狙って膝から飛び降り、着地と同時にもう一度地を蹴る。宙を撓った脚がもう一人の門番の米神を正確に叩いた。
たちまちのうちに二人の門番を昏倒させ、"はやぶさ"は木戸を蹴るような勢いで開ける。隙間から一太郎が真っ先に飛び込んだ。
「母上――――っ!!」
一太郎の声に、屋敷の気配がざわめく。速水はそれを肌で感じることが出来た。
人の気配が集まっている方に向って、速水は駆け出した。
焦れる速水様と一太郎さんを、高階上総介様が押し留めます。
そして、待ちに待っていた知らせが届きました。
突然現れる気配に、速水と一太郎は同じ拍子で腰を浮かせた。揃って警戒の態勢に入る二人を面白そうに見遣りながら、高階は手を振って二人を落ち着かせる。
高階の前に現れて膝を着いたのは、黒ずくめの衣装を着た忍びの者だった。
ほっそりした体つきで女と知れるが、覆面の隙間から覗く涼しげで切れ長の眼元は芝居の女形のようであった。
「……"はやぶさ"ですか。思ったより早かったですね」
「"藤の方"より、江志久村に繋がりがある者を洗い出せとの指示が。田口きみは、三の郭赤町通りにある曳地の妾宅に」
「誰か傍に?」
「"ねこ"が」
「それなら一安心」
高階は一つ頷くと、書きかけの書状を畳んで島津に手渡した。
「島津はこれを新垣に渡し、采配を。速水は先に行くのでしょう? "はやぶさ"、道案内を」
「「「承知仕りました」」」
三人の声が揃う。
忙しく立ち上がった速水だったが、強い力で袴を引っ張られて踏鞴を踏んだ。
一太郎が速水の袴を掴んで、必死の形相で睨んでいる。
「私も参りますっ!」
「莫迦を申すな!」
速水に怒鳴られるより先に、一太郎は宣言した。
当然ながら速水は怒鳴り返した。藩主の御前であることは既に脳裏から抜け落ちている。
速水に怒鳴られても、一太郎は怯まなかった。小さな体で吼えた。
「母上をお守りすると誓った! 二言は無いっ!!」
その気迫に速水は一瞬黙り込む。どうやって納得させようかと、考える時間さえ惜しい。
そんな速水と一太郎を見て、高階は喉の奥で笑った。
「連れていってやりなさい、速水。但し、一太郎、そなたの身に何事が起ころうと、それはそなたが負うべき責ですよ」
「はいっ」
高階の言葉に一太郎は力強く頷く。
速水も腹を括って、その場を飛び出した。
振り翳される刃を気にも留めず、きみは曳地を見据え続けていた。
きみの視線から逃げて、曳地は侍たちの背後へ隠れていく。
きみが身動ぎしないので、侍たちも刀を振り下ろしかねていたようだったが、とうとう最初の一刀が振り下ろされた。
がしんっ、と金属の打ち鳴らされる音がする。
「え…………?」
きみの前には黒装束の女が低い姿勢で構えていて、振り下ろされた刀を匕首で押し留めていた。
呆気に取られて瞬きするきみに、女は小さな声で告げる。
「ご立派で御座いました。後はお任せあれ」
「貴女は…………?」
「殿直属に仕える看護衆(かんごしゅう)の者。庭へ」
きみを背中に庇いながら黒装束の女は油断なく身構える。
曳地は唇を戦慄かせた。
看護衆が出てきたということは、藩主・高階に全てが露見したということなのだ。
「ええいっ、高々女二人! 斬れっ、斬り捨ていっ!!」
曳地の怒号に庭に下りたきみは木立の陰で息を飲んだ。
黒装束の女は焦る様子も無く、ゆったりと匕首を構えた。
「母上――――っ!!」
緊張した空気を、子供の声が破った。
三の郭は下級藩士の屋敷と町人たちの家が並ぶ。
その屋根の上を、"はやぶさ"は足音を立てずに疾走していく。
横目で行き先を確かめながら、速水は馬を走らせた。速水の腹の前で一太郎が鞍の前輪にしがみ付いている。
町屋に相応しくない、二人の門番の立った家が前方に近付いてきている。
"はやぶさ"はその寸前で屋根瓦を蹴って飛び降りた。
門番の後頭部を狙って膝から飛び降り、着地と同時にもう一度地を蹴る。宙を撓った脚がもう一人の門番の米神を正確に叩いた。
たちまちのうちに二人の門番を昏倒させ、"はやぶさ"は木戸を蹴るような勢いで開ける。隙間から一太郎が真っ先に飛び込んだ。
「母上――――っ!!」
一太郎の声に、屋敷の気配がざわめく。速水はそれを肌で感じることが出来た。
人の気配が集まっている方に向って、速水は駆け出した。
PR
COMMENT