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こちらは、愚痴外来シリーズの妄想文を展開するブログです。 行灯先生最愛、将軍独り勝ち傾向です。 どうぞお立ち寄り下さいませ。
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さぁって、イチャイチャだっ!


コーディネートはユ●クロを参考にしています。買いもしないのに何度か店内ウロウロしました……不審人物の一歩手前。
このチョイスだと諭吉さん一枚でお釣りがくるかな、多分。

暫く待っていると、また呼び鈴が鳴らされた。
ぼんやりとコーヒーを啜っていた田口は立ち上がって玄関の鍵を開けた。予想通り速水だった。
ドアを開けた田口に、速水は渋い顔を見せる。

「お前、ちゃんと確認したのかよ? さっきから不用心だぜ」
「いーだろ、お前だったんだから」
「そういう問題じゃねーだろ。ほれ」

速水はドアチェーンをかけると、手にしていた大きめのビニール袋を田口に押しつけた。全国展開している大型衣料チェーンの袋だ。

「服?」
「そのカッコのままじゃどうにもなんねーだろ」
「悪いな」

速水の言うことはもっともだった。田口はシールを剥がして中身を引っ張り出した。
明るいパステルピンク、オレンジ、グリーンの長袖Tシャツと、黒いイージーパンツ。どれもMサイズだ。詳しいサイズが解らなくても買えるものを選んできたらしい。

「多分大丈夫だろ」
「そうだ、な…………っ」

次に引っ張り出したものを目にした途端、田口は息を飲んで硬直した。
恐る恐る速水を振り返ると、速水はニヤニヤと笑っている。
有り体に言うと、助平そうな笑みだった。

「要るだろ?」
「お前…………どんな顔して買ってきたんだ、こんなの…………」

こんなの、とは女性物の下着だった。カップ付きのキャミソール(という単語を田口は知らないが)とボクサータイプのショーツが三枚ずつ。こちらもMサイズで揃えてある。芸が細かいことに、淡いピンク、グリーン、イエローとカラーバリエーションが豊富で長袖Tシャツとのコーディネートもばっちりだ。
東城大救命救急センターのジェネラルが、女性物の下着を購入する……想像しただけで、田口は頭がクラクラしてきた。シュール過ぎる。
その気持ちは速水も同じだったようだが、速水の方はまた強気だった。

「俺がここまでやったんだ、まさか着ないとは言わないよなぁ?」

田口に反論など出来る筈がなかった。

「…………着替えてくる」

力の入らない声で告げて服を持って寝室に引っ込む。襖を閉める際に、速水が喉の奥で低く笑う声が聞こえた。



一通り身に付けると、さっきより少し落ち着いた。
先ほどまでは素裸の乳首がスウェットに触るし、トランクスが余って太股あたりがごわごわするしで、居心地が悪くて仕方なかったのだ。
やはり身体に合う服を着るべきなのだ……その身体が、意識と合っているかどうかは別として。
女物の衣類を身につけて速水の前に出たら、速水はしげしげとこちらを見た後、

「若く見えるなぁ」

とヘンに感心した口調で言った。

「同い年だろ」
「色が明るいからかな」

田口の反論は聞いていないようで、一人で納得して頷いている。
速水を放っておくことにして、田口はコタツの上に乗っていたマグカップを二人分回収して濯いだ。
田口の仕事が終わるタイミングで、速水は立ち上がった。

「んじゃ行くか」
「行く、ってどこに?」
「俺ん家」
「へ? 何で?」

田口が首を傾げたのも当然だ。
すると、速水は嫌に真剣な顔になった。

「家主のいない家で、家主ではない男と見たことない女が入り浸り……このシチュエーションって、どう見える?」
「どうって…………」

連れ込み宿、という時代劇のような単語が田口の脳裏に思い浮かんだ。ご近所の評判は下落するのが目に見えていた。
血の気の引いた田口の顔から察したのだろう、速水は大きく一つ頷いた。

「だろ? だったら、俺が女を連れ込んだって方がまだマシだ」
「まあ、そうだろうな……って、あれ?」

不意に田口は首を傾げた。話の前提条件に気付く。
速水の顔を凝視しながら考えをまとめ、口を開いた。

「お前、俺と一緒にいてくれんのか?」
「こんな状態でお前を一人放っとくワケにもいかねえだろうが。何があるか解らねえし」

速水はごく当り前のことのように言う。
心配されている。しかも何の気負いもなく。
こそばゆい気分になって、田口は俯いたのだった。



田口が鍵を閉めるのを待って、速水は先に立って歩き出した。
東城大のスピードスターは歩くのも早い。
田口の方はというと、転ばないように慎重に歩かなくてはならなかったので、どうしても歩みが遅れがちだった。ズルズルと酷く大きく靴が鳴る。
そんな田口に気付いて、速水が足を止めた。

「お前、足やったのか?」

捻挫したのかという意味だろう。
速水の問いに田口は首を横に振った。

「靴が大きいんだよ。多分、3センチは違うな。今朝も非常階段で躓きかけた」
「あぁ……そこは気付かなかったな」

田口が履いているのは普段使いのスニーカーだ。男物と女物では靴だってサイズが大分違う。大きすぎる靴を履くと歩くのが難儀で、どうしてもゆっくり歩くしか出来ないのだ。それだって靴を引き摺る音がする。
速水は納得した表情で頷くとそのまま立ち止まって田口を待っていた。
田口が横に並んだところで、速水は自分の肘を突き出した。

「掴まれ」
「へ? え?」
「ほら、早くしろよ」

意味が把握できず、田口は速水の顔を見上げてしまう。そんな田口に焦れたのか、速水は田口の手を捕えて自分の腕に絡めてしまった。

「これなら転ばないだろ」
「…………そんな簡単に転んだりしないぞ」
「いいや、転ぶね。お前はそーゆう、ベタなことをやるヤツだ」

転ばないように手を繋ごう、というのは子供にする発想ではなかろうか。
些か憮然として田口が呟けば、速水はきっぱりと断言した。
そこまで言われると、大人しく腕など組んでいるのも癪に障るというものだ。
田口は速水の腕に絡んでいる自分の手を引き抜こうとした。
勢い余って後ろに倒れそうになる。

「っぶねぇ…………」

気付けば、田口がいたのは速水の腕の中。均整のとれた胴に抱きつく形になってしまっている。
転びかかった田口を抱き寄せて助けた速水は、田口の頭上で安堵の息を吐いた。
近い。吐息で髪が揺れる距離。
速水とこんなに接近したことなど、今までなかった。
田口は距離を取ろうともがいた。

「は、速水。放せよ」
「ほーら見ろ。やっぱりお前転ぶじゃねえか」
「う…………っ」

実際転びかかった後では、どんな言い訳も通用しない。
勝ち誇る速水を前にぐうの音も出ず、再度差し出された肘に田口は遠慮しいしい掴まった。
田口の歩調に合わせて、速水はゆっくり歩く。
上目遣いに速水の表情を伺ったら、ちらっとこちらを見下ろした速水と眼が合った。慌てて眼を逸らして、そうしたら今度は足運びが疎かになる。
転びそうになって、田口は咄嗟に速水の腕に縋りついた。細身に見えた速水の腕は逞しく、田口が縋ったくらいではびくともしない。
頭上で低く速水が笑った。

「ばぁか」

速水の声が酷く柔らかく優しく聞こえたのは、気のせいだ。絶対。
速水の車までの短い距離が途方もないように感じて、田口はすっかり疲弊してしまった。
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これは・・
速水先生、えらくいいペースで事を運んでいますね。
家に連れ込むとは..( ̄ー ̄)
次が非常に楽しみです。

えっと、すみません。以前コメント送ったのってもしかしてちゃんと送られてなかったでしょうか?
2話目のときくらいだったと思うのですが(^^;
secretチェックしてると送れないとかありますか?
なゆた 2009/04/10(Fri)22:05:40 編集
Re:これは・・
いらっしゃいませ、こんにちはデス。

>速水先生、えらくいいペース
……管理人のペースは非っ常に鈍行なのですがっ。4回目書いてるけど、まだ初日の昼間だぞ。アレやってコレやって……4月丸々いっぱいかかりそう。
しかし独身中年男性の休日昼間って何してんでしょうね? もはや素振りって年でもないしな……行灯先生なら図書館とか読書とかあるかもしれないが、将軍は更に謎です。寝てるだけ?

>secretチェック
これチェック入れると、非公開モードでコメント送信されます。霧島のとこにはちゃんとコメント届いてますよ。リンクの件とかもお返事してます。が、もしかしてそちらでも読めてないですか?
多分そちらでコメント修正すれば公開にも出来ますし、ブログの管理人権限で公開に切り替えることもできますが、どうします? 他の人に読まれないけど自分で読むにも手間がかかる、とゆーところでしょうかね。
S.Kirishima 2009/04/11 10:59
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